夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「ちょこっと2」ミノ テミン バレンタイン短編


「これ、受け取って下さい!」



と、言われて、俺は言葉を失っていた。


いや、確かに、あんまり見ないような可愛いらしい外見だったけど。


どう見ても男で。


モテる自覚があったけど、男からは初めてで、しかも同じ高校で、勇気あるのが男らしいとか、なんかこんがらがりながら、



「ありがとう」



と、受け取った。



すると、必死に俯いてこちらに差し出していたのが顔を上げて、ふわりと笑った。色白な顔に、薄ピンクな唇が丸く開いて、



「やった!付き合ってくれて嬉しい!」



と言われて、また言葉を失った。


初めて見る顔で、学年は下そうなのにタメ口聞かれたからじゃなくて、俺はチョコレートを受け取っただけなのに、なんか今の返事可笑しくなかったかなと、微笑んだまま、頭にはてなマークを浮かべていた。



「テミンって呼んで下さい!ミノ先輩!」



明るい色の髪をさらっとなびかせて俺に輝く笑顔で言う。



「えーっと……」



口の端を上げたまま、俺は良くぎょろっとしてるとかでかいとか、白目がはっきりしてるとか、そんな言われ方をされる目をぱちぱち瞬きしていた。



どうしてこうなったのか。



俺に、彼氏が出来た。



「お弁当作ってきました!」



テミンはそれからずっと残りの高校生活、様々な場面で一緒にいた。



「まっず」



初めての男からの弁当は、滅茶苦茶まずくて、トラウマになりかけた。テミンは悲しそうな顔をしたけど、頑張り屋なのか、それから毎日必死に作って来て、俺はそのおかげで、まずいものも食べられるようになっていた。



「ミノ先輩は本当に格好良いです。スタイルいいし、背が高いし」



テミンは良く俺にそう言った。自分ももっと背が高くならないかなと、ご飯を食べながら良く言っていた。牛乳好きなのはそのせいだろうか。



俺達の間には、異性間に起こるような接触がなかった。キスもしないし、もちろんそれ以上も。だから付き合えていたのかもしれない。


はたから見れば、仲が良い友人にしか見えないだろう。



「ミノ。本当にテミン君と付き合ってるの?」



テミンが告白してくる前に、付き合いかけていた女友達が聞いてきた。まだ彼女が俺のことを好きなのも知っている。
でも良く分からないうちにとは言え、テミンと付き合いが始まってしまった以上、そういうことに興味を失っていた。
別に恋愛以上に楽しいことは今沢山ある。



「付き合ってるよ」



答えながら、ベランダから校庭を眺めた。次はテミンのクラスが体育だから、そろそろ出てくるはずだ。


やっぱり出て来て、こちらに向かって手を振った。俺も振り返す。



「テミン君可愛いね」



俺の隣に来て、彼女が見下ろす。テミンはこっちをちょっと見つめて、クラスの仲間に混じって行った。



テミンは俺が女子といてもそのことについて何も言わなかった。好きで告白されたりしているわけじゃないこと、男友達だっているし、テミンのことは大切に思っていること、それが分かっていたのかもしれない。



「ミノ。お前、女でもいんの?」



俺は大学に入った。
漫画、酒、映画、ゲーム好きサークルと言うごちゃまぜなところに入って見たりなんかして、そこの先輩達に聞かれた。



「あ、いえ」



言葉を濁して、これはそろそろどうにかしないといけないと思った。
仲良くなった先輩たちが、合コンに誘って来る。彼らは芸能人みたいに綺麗な顔で、一人は俺より背が高いし、女子からの誘いがひっきりなしだった。
俺の方も、高校生活よりも、大学生活の方が、更に女子の攻めは強くなって来る。


そろそろ、テミンとの関係に決着をつけないと、と思って来た時だった。



「ミノ先輩、別れませんか?」



と言われた。


土日のどちらかは、テミンの受験勉強の傍ら大体会っていた。テミンは出会った時と同じようなふわりとした笑顔で俺に言った。


もう俺は大学一年も終わりかけで、テミンは受験真っ最中だった。


言われて、戸惑った。


テミンの受験が終わるまで待とうと思っていたし、決着って言うのはそもそもそう言うことだったのだろうかと、考えた。



「あ……なんで?」



俺の方が聞いた。
私服姿のテミンは、制服姿よりも男っぽく見える。頑張ってそんな服を着ているみたいにも見えた。



「俺、分かってました。あの、チョコ渡した時、そう言う意味で受け取ったんじゃないって。ミノ先輩優しいから俺から言い出さないと、ずっとこのままになっちゃいそうだから」



勉強がてら良く一緒に入るカフェに、いつもの解散時間より大分早く出ようと言われて、出たところで切り出された。



そして、分かった。



「俺は、テミンの方がそう思ってた」



入口に突っ立っていた俺達は、怪訝な目で中に入ろうとする客に見られて、脇に避ける。



「俺のこと好きなのは、本当は、憧れからだって、いつ気付くんじゃないかと」



……俺は、冷や冷やしていたんだ。



と、呟いて、自分で納得した。



だから俺は、テミンに絶対手を出さないように、していたんだ。



「俺は、本当は、キスとかしたかったよ」



今すぐにでもしたいと思った。


俺が見据えた白い肌が薄ピンクに変わっていって、唇の色と見分けがつかなくなった。



「あ、やっぱりもう一回喫茶店入って良いですか?まだ時間あったら」



その前にしたかったけど、これも受験終わるまで待とうか。



なんか優しいって思われるのも嫌になって来たな。



「ミノ先輩。本当は合コンとか行きましたか?」



テミンが恐る恐る聞いてきた。



「行ってない」



全部断るのがどれだけ大変だったかは言わないけど。



「本当は行ったんじゃないですか?」



俺は口元を弛める。やっとそう言うことを言ってくれるようになったか。



「行かないよ。誘って来る先輩が二人いたけど、この頃言ってこないしね」



一人はこの一年で、大企業の内定貰ったからだろうか。彼らのそう言う話も、あれだけモテてたのに一度も聞かなかったな。



「今日チョコ用意出来なかったから、ここで一緒にココア飲みませんか?」



俺達は、お馴染みの席についた。すごく可愛いけど、やっぱり女には見えない、俺の彼氏。



「あ、ここのココアまずいんだった」



と言って、ふわりと笑う。俺も笑った。


でもすごく好きだよ。



「一緒に飲もうよ、テミン」



俺は、まずいの大丈夫だから。









『ちょこっと2』おしまい

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