夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Magic 2」キュヒョン×イトゥク


イトゥクはそう言った。昨日のことを考えながら、やはり俺は、男にと言うかあの人に惹かれてるし、彼にも同じような気持ちになって欲しいと実感していた。


でもイトゥクは男に興味がない。
それに男同士では結婚も出来ないのだから、つまりゲイは恋愛感情がなくなればそこで関係は終了ってことなのだろう。未来の展望は暗い。


突然やってきた俺の恋は前途多難もいいところだった。



「はあ……」



隣を見た。
いつの間にか、俺が座る校内のベンチには、親友が横に座って、浮かない顔で溜息をついている。
つきたいのはこっちなのだが、まあいいだろう。



「なに?話せよ?」



そろそろ。



「何でもない。大したことじゃない」



どいつもこいつも大したことじゃないことに振り回されて。


でも、こいつのはどうだか知らないけど、あっちはきっとそこまで大したことはないことはないのだろう。


あんな目に遭っても、心が軽くなるからとか……


酒飲んだくらいでそれは軽くならないのだろうか。



「なあ、チャンミン」



親友は俺を見ずに、「何だよ」と膝に腕をつけて前屈みになって思い悩んでいる。



「お前、女装したい?」



こちらに向いた。



「何?女装しろって言われたの?」



「そんな複雑な関係強要する人じゃないよ」



そうでもなかったかもしれないけど。



「……まあ経験として、俺はしてみてもいいかもね」



「え、マジで?」



こいつこういうところあるからあなどれないんだよな。



「期限付きなら面白そうだし。それに好きな人に言われたら、するかもな」



「……そう。それで、お前の好きな人って男なの?」



親友がそのまま、沈黙してしまったので、話は続けられなくなった。向こうの建物にミノが見えたけれど、廊下を無表情で歩いていて、良く話しかけている女子も遠目に見ている。何か黒いオーラが渦巻いているようだった。


ーー俺達大丈夫だろうか。


自分だけでも現状を打破したい。
だけど、忘れると言う選択肢は選べなかった。
始まってしまった恋心を止めるのは俺には難しいし、何より、同性でも自分を惹きつける人間が特別に思えて仕方がない。


それに親友との会話で分かったことがある。あいつは、まあ女装でも何でも勝手にやってくれればいいんだけど、俺には、簡単には出来ないと言うこと。しかも出歩く時、大体なんて。


そこまでして心が軽くなりたい理由が、きっとあるのだろう。なら俺が、イトゥクの魔法みたいだと言う「女装」と同じような存在になれれば、男と言う性別を超えてまで、一緒にいたいと思ってくれないだろうか。


そんな存在が恋人を願うなら、渋々でも付き合ってくれないだろうか。


俺に良く言うけれど、イトゥクもよっぽどイケメンだから、女装癖を許してでも付き合いたいと言う女は必ず出て来るだろう。
そんな異性が出てくれば、俺の出る幕なんかない。
だから、その前に、さっさとその位置におさまってしまいたい。後のことは、それから考えるとして。



「何でこんないきなり?」



ぎりぎりに一応了承を取って自宅に押し掛けると、女装をしていないイトゥクがドアを開けて、俺は少し安堵をした。自宅でもしていたら付け入る隙が無さ過ぎる。



「会いたくなりました」



苦笑していたイトゥクが、眉を寄せた。


とりあえず、女装しなくても俺といる時間が増えれば、それだけ俺のことを重要人物に思ってくれるかもと言う安易な考えだった。


何か言おうとする彼に、持って来たものを見せた。



「DVDで良さそうなの持って来ました。あとゲームしますよね?これ面白いんで酒飲みながらやりませんか?」



今度から酒も持ってこようと思いながら、夜も更けて、ベッドで何となく距離を置かれて目を瞑っているイトゥクを見る。



「キュヒョン」



寝てしまうと思っていたから、不意打ちにどきりとした。でも目蓋はおりている。



「お前、ゲイなの?」



持って来たDVDはイトゥクの好みのものにしたし、楽しんでいたし、ゲームもそうだったから、追及されずに今日は終えると思っていたけど、そうはならなかった。



「そこは……考えさせてください」



俺は今、この台詞を言った親友の気持ちが分かった。
……あいつはゲイだな。
でも、俺は多分違うけど。



「何だよそれ」



目を閉じたまま、イトゥクが笑う。
俺から匂わせたんだから、覚悟はしているけど、まだこの状態で良かった。全部言えば、やっぱり次はないだろう。



「……今度外でも、女装なしで遊んでみませんか?」



「何で?」



「……何でじゃなくないですか?」



肩を震わせて笑っている。抱き締めて寝たいけど、今日は無理だろうな。



「嫌だよ」



俺は予想はしていたものの、楽しい気分にはなれず、真顔で正面の人物を眺めた。



「だって、俺もそんな外に出る機会ないからさ。出る時はしたいよ」



「何でそこまで、しないといけないんですか?」



「しないといけないんだよ」



軽く伏せていて顔が見えないのに、笑いがなくなっているのが分かった。



「何で?」



でも俺は呟く。体が近づけないなら、彼の核心に迫りたかった。



「理由は言っただろ」



「根本はまだ教えてもらってないですけど」



「大したことじゃないよ」



「前回と同じこと返しますけど良いですか?」



こちらに上げた顔に、動きを止める。見つめ合ったことよりも、半円の目蓋の奥の瞳に責められているのが分かったからだった。


本当にそれは、魔法みたいなものなのだろうか。


面白そう、なんて言った親友とは大分違った調子に感じた。


言葉が出なくなった俺の前で、背中を向けられた。



「この話は終わり」



言い放たれて、白いTシャツの背を眺める。どちらが子供か分からなくなってきた。



「話せば……解決することもありますよ」



「この話は解決しないから」



声が何となく震えて聞こえて、俺はその後ろ姿から目を離せない。


でも別に、イトゥクは泣いているわけじゃなった。


俺が、そうなら良いと思っただけだ。



「泣かないで下さい」



と、でも背中に手を伸ばした。


一応確かめたかったのもあった。



「泣いてないだろ」



腕の中で身をよじられる。



「俺、目瞑ってるから見えないんです」



目開けろよ!と、笑いが漏れたイトゥクに、



「じゃあ、女装して来てくれて良いんで、遊んで下さい」



と、呟くと動きが止まった。



少し間が空いてから、「分かった」と囁かれた口調は、独り言のようだった。



俺はこのままでいたかったから、何も言わずに目も開けなかった。



望み通り、二人とも朝まで寝てしまった。













つづく



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