「聖夜」ユノ×チャンミンの短編
登場人物が違うクリスマス企画三部作の一組目です。
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「ヒョン!!」
俺はパートナーの呼び声に起こされた。
今日は、仕事で、ホテルにいる。
実はクリスマスイブなんだけど、そんなこと関係ない。
明日は早朝から仕事だし、今日も早朝から仕事だった。
もう22時を過ぎたあたりから、眠くて眠くて、仕事上のパートナーのチャンミンも、確か同じくらいの時間に寝たはずなんだけど。
「んー……?」
と言って目を開ける。
「ヒョン!起きて下さい!」
「なんだよ?」
起き上がって、目をこすった。
「おばけがいたんです」
チャンミンの言葉に目が覚める。
俺はそういうの苦手なんだ。
「やめてよ、チャンミン」
チャンミンを見上げると、必死の形相をしている。
どうやら本気らしい。
「どこにいたの?」
「向こう」
と言って、カーテンを指さした。
今日は二人で同じホテルで良かった。
一人なら卒倒してた。
「ふわふわしたような感じ」
なんだそれ。
チャンミンも焦ってパニックになってるらしい。
「本当にいたの?」
チャンミンが何度も頷く。
「部屋変える?」
と自分で言って気づいた。
だめだ、今日は満室なんだ。
時計を見ると、もう日付が変わる。
睡眠時間もあまりない。
「分かった。チャンミン、電気つけて一緒に寝よう」
こくこくと頷くチャンミンの腕をさすると、心なしか震えている。
その腕を引っ張ると、もう何年ぶりか分からない、チャンミンが俺にぎゅっとひっついて来た。
俺を抱きしめて、首に頭をくっつけた。
その背中をよしよしとさする。
「寝よう、チャンミン。大丈夫だよ」
怖がっているチャンミンを抱きしめて、いつもは俺より目線が高いその頭を胸に抱いた。
少し顔を上げて俺を見る。
俺はその顔を覗き込んで微笑んだ。
その時、確かにゴトっと音がして、二人して体をびくっと震わせた瞬間に、自分達の唇が追突して目を見開く、でもそれよりも音がした方が怖くてそっちに目をやった。
なのに、なぜか首を延ばしてみても、部屋の中には誰もいない。
チャンミンはもう見ることもできずに俺の肩に顔をうずめている。
……確かに、これは怖い。
俺は布団を引っ張り上げて、チャンミンごと体を中に入れた。
暗い布団の中で息を潜める。
少し、空気口のような穴を作ると、光が入って、俺の顔を不安そうにじっと見つめている正面の顔が見えた。強張るけど笑顔を作る。
俺も少し震えている。
それに気づいたチャンミンが俺の体を引き寄せた。
またゴトっと音がして、二人でびくっと体を強張らせた。
今度も少し唇が触れたけど、そんなこと気にならなくて、それよりももっとお互いに触れていたくて、
強く強く抱きしめ合う。
そうしてるうちに相手の体にも慣れてきて、体を密着させながら、交代で眠っていた。
一緒で良かった。
どんな人間より安心できると思った。
音はもうそれ以上しなくなったけど、そうやって俺達は抱き合ったまま、朝まで布団の外には出られなかった。
多分、それがきっかけなんだけど、こんなこと誰にも恥ずかしくて言えない。
同性なのに恋人にまでなってしまったこの人間以外には。
「あの時は怖かったね」
と今でも言う恋人に、この日が来るたびに言うことがあるんだけど、いつも相手にしてくれない。
―――あの聖なる夜に、
首をのばして部屋を見廻した俺の耳に、
かすかに鈴の音が聞こえたような気がしたのを、
言うたびに、チャンミンは笑いながら、
また俺を抱きしめて来る。
~Merry christmas