夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「ぼくらが恋した貴方へ 4(恥ずかしがりやの君へ)」(ミノの場合)テミン


ミノが、広いベッドの上で胡坐をかいて、呆けている姿を、真正面でテミンは向かいのベッドから見ていた。
長い手足に、短い茶髪が更に彼の頭を小さく見せていて、造りは大ざっぱだけれど整っている顔も、女性を引き寄せる要因にもなっているとテミンは眺める。しかし、それも全然関係ない位、今、どこか上を見、横に長い口をだらしなくあけている彼のさまは、お世辞にも格好良いと言えなかった。
見ていられなくなって、同じく部屋着であるTシャツを着た、彼より背の低い体をベッドからテミンは立たせた。
「兄さん」
彼より年下の自分はそう呼んだ。しかし二人共グループの年下組であるため、殆ど言葉遣いに敬語は入らない
しかし、兄さんはまだ呆けている。
テミンは仕方なく、そのベッドまで歩いて、前に腰かけた。
「ミノ兄さん」
我に返ったように、テミンを目蓋の下がった奥二重の双眸がぎょろっと見た。黒い瞳と白目が綺麗に半々になったそれには、力がある。
その顔がにかっと笑った。
「テミン、どした?」
「兄さん。もう上海だよ」
色の白さもあって、女性的な造りをした顔を心配げに彼に向けた。
テミンの言い分を全く分かっていない、にっと口角を上げた表情で見ている。
その彼に、言い聞かせるように、テミンはゆっくり喋った。
「もう日本じゃないんだよ」
それでも、彼には分からないだろうと思い、更にゆっくり声を出した。事実、表情は変わらない。
「もうナゴヤじゃないんだよ」
その顔色がさっと変わった。
ようやくテミンはいつものミノを見た気がした。
「え、なに、え」
焦りながら、今初めてテミンの存在に気付いたように唖然と見直す。
「なんで……」
その場にいたのだ。
日本の都市「ナゴヤ」の公演で、ライブ中にあろうことか、観客の一人を気にかけだしたミノの隣に、テミンはいた。
あの人だ。
大きな声援を送る集団がいた。全員他人だったのかもしれない。ただある場所に、こちらに呼び掛けて来るファンが集中していた。
自然と自分達は目が行くわけで、その中に一人だけ、声を出さない女性がいた。恥ずかしさからだろう、明るい表情から楽しんでいることは十分に伝わったから。
最初は気づかなかった。
全員何度もそちらに目を向けてはいたけれど、近くにいたこのミノは、場内すべてを見渡す心がけを自分達はする中、目を向けるというよりは、見つめ出したのだ。
そんなことあるのか、と半信半疑だったテミンは、数日で確信した。
ミノは、この状態になった。
部屋が同じになったメンバーは全員気付いただろう。というか、もう全員気付いている。
唖然としながら、ぱくぱくと動かしている大きな口を眺めて、テミンは、久しぶりに彼女がいない状態が続いていることと、忙しさがこの人に不幸を招いたのだなとそっと溜息をついた。
でも、ミノは時々、良く分からない女性の好みを発揮する。いまいちテミンには理解できないが、かなり前にも、なぜその女性を選んだのかと思ったことがあった。
今回の女性は正直テミンは顔さえ覚えていないが、あの彼女より良さそうに思うのはその気恥ずかしさを覚えている姿に可愛らしさを感じたからで、恐らくミノもそこだろうと踏んでいる。
正統派の美女と付き合うことが多い中、ミノはどこか広いストライクゾーンを持っているのかもしれない。今回は、自分にも少し分かるけれど、だからと言ってと、また溜息をつきたい気持ちに、テミンはなった。
「なんで……」
繰り返すしかしない兄を憐れに見ながら、
「早く彼女作った方が良いよ。この前共演した女優さんに遊びに誘われたんだろ?」
「タイプじゃないよ」
力のある視線をそらせた目の前の男にテミンは呆然として、今をときめく、恋人になれば自分達の国の男なら泣いて喜ぶ可愛い女優にこの人間は何を言っているのだと見つめた。
「なあテミン、あの人俺のファンじゃなさそうだったよな?」
丸い目でテミンは呆然とまた自分に向いたメンバーを見つめ続けた。
しかし、恐らく彼女はミノのファンではないだろうとテミンも思った。
「お前かな?」
「違うと思うよ」
「ジョンヒョン兄さんかな」
「キー兄さんかもね」
「リーダーってこともあるよな」
皺の寄った眉間を眺めながら、でも、だから何だと言うのだとテミンは桃色の唇を半開きにさせた。自分達の誰のファンであったとしても、全く何にもならないだろうと、意識が遠のくような気がした。
「ジョンヒョン兄さん、良いなあ」
しかも、勝手に決めつけて、とそのまま思った。
「テミン、どう思う?」
「何を?」
遠のいた意識のまま答える。
「うまくいくと思う?」
「いくわけない」
普段なら気を使った言い方をする自分ももう限界に来ていた。
「兄さん。正気に戻れよ!」
目を覚まさせようと、深夜のホテルでその両手を掴んだ。もうそろそろ休まないと日付は変わっているはずだった。
「頑張ろうよ俺たち!」
テミンは掴んだ手を揺する。少し眠気で言いたいことが良く分からなくなって来たと思った。
彼の真剣な目を、力のある眼差しが見つめて、その真摯な気持ちが伝わったのか、ミノは何か理解した風に息をついた。
「テミン。悪かった」
安堵した顔をテミンは見せる。
「そうだな、俺、何考えてたんだ」
横長の口が自嘲気味に笑った。
テミンはふわりと微笑んだ。
「本当。頼むよ」
そう言って微笑んだまま大袈裟にうな垂れた。
「悪い。こういうこともあるんだな」
ミノもようやく醒めたように笑いながら、うな垂れている彼を見る。
「良かったよ。明日祝わないと。みんなで歌ってあげるよ」
「いらないし。それよりみんな知ってんのか。まあいいや、ありがとなテミン」
手の甲から掴まれていたのを握り返して、ミノは言う。
「はいはい」
「せっかくだから一緒に寝る?同じ部屋当分ないよ」
手も繋いでるしさ、と冗談ぽくミノは二人の顏の前まで、繋いだ手を持ち上げた。
テミンは、突然の提案と普段なら手を繋ぐことなど何とも思わないのに、わざわざ言われたことが気恥ずかして、白い顔を首元まで真っ赤にした。
「ううん!明日早いし!」
せっかくの交流だったと明日になれば後悔するかもと思いながらも、照れてしまって勢いよくテミンは立ち上がる。
「おやすみ!兄さん!」
ベッドに飛び込むけれど、なかなか恥ずかしさに染まった顔は戻らなかった。その自分を、力のある眼差しが一晩中見つめ続けてことを、テミンはまだ知らない。








『ぼくらが恋した貴方へ 4(恥ずかしがりやの君へ)』(ミノの場合)おわり








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実はあと一話あるのでございますが、書けるかどうか分かりませんゆえ、とりあえずここまでで、読者様のさんお誕生日記念でございました。alohaさん、お誕生日おめでとうございます!

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