夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「兎になった日 4」CNBLUE(ジョンヒョン)東方神起(ユノ) EXO(スホ) SHINee(テミン)SUPERJUNIOR(キュヒョン)


顔を綻ばせた。
大きく開く口元に笑みを浮かべて、自分から外したイヤホンを、隣の座席に座る一つ年下のメンバーに、「聞いて」とその白い耳の穴にそっとひっかけ、ポータブルの小さな音楽プレイヤーも握らせた。
少したってから自分の方を向いて、顎まで下げた黒いマスクをしたまま、にこっと笑った顔を見て、ミノは頷いた。
次の日本での新曲だった。いち早く聞いた自分達は、家へ帰される移動車の中だった。
他のメンバーは何時間も前に一足先に帰っている。曲も合わせてもっと早く聞いていた。
二人だけ仕事が事務所内でそれぞれあった。終わりが変わらなかったから、まとめられた。
先に送られるのは事務所に近いミノだ。
「ミノ兄さん。かなり良いね」
隣のテミンとはグループの中で弟組だ。一つ年の差はあるものの、敬語ももうなくなっていた。
「もう冬じゃなくて今出したいくらいだよね。って、疲れるからちょっといいか」
「作曲日本人にしなかったんだね」
「みたいだね」
ミノは口の端を上げて、隣で聞いている白い横顔をそのまま見る。さらりとした黒い前髪を垂らして、頭を揺らしている弟は、目を瞑り、トレーナーの長い袖から出た手の先でもリズムを取っている。
そのメロディーを一緒に聞いているように、思い出しながら、元からマスクをしていないミノは手で満足そうに自分の口元をさする。顔は裸だったが、つばのあるキャップで、人より小さな顔は見えにくくなっていた。けれど、それは微々たるもので、車内の中で、つばは上げられ、明るく微笑む顔は二人の距離なら問題なく分かる。
自分より身長も低く、体も小さいが、見ている方まで聞こえて来るようにリズムを取る姿を、頼もしいなと、ミノは眺めた。
彼のようにはいかない。自分達は五人のアイドルグループだけれど、ダンス担当はこの末っ子だった。それでもいつも彼は、他グループのダンスに長けたメンバーを褒め、羨むような顔をした。自分がほのかに彼に抱くように彼の気持ちは分かる。上を見ればきりがない。天才と言うよりは、努力でそれを手に入れた弟は、良く自身を分かり、その性格までもメンバーは愛していたし、そして、十分素晴らしいこの末っ子の能力を誇らしく思っていた。
「なあ、テミン」
そんな横顔を眺めて、ミノは声をかけた。
彼は没頭はするが、聞こえないほどではなく、すぐにイヤホンを片方外した。
「なに?」
「一杯飲まない?」
え?と言って淡い色の唇が微笑む。メンバーの中で一番女性的な顔立ちをしているのも愛されている理由かもしれない。
「酒?」
丸い目が細まる。
「いや、ご飯でも良いけど。もうお母さん用意してるか」
ミノは、実家暮らしの彼の母親の顔が浮かんだ。
「良いよ、別に。どうせ一人で食べるんだし。ミノ兄さんと飲むの久しぶりじゃん」
「うん」
彼の母親には悪いと思ったが、ミノは口元を弛ませた。何となくこのまま離れがたかった。
「美味しいとこが良いな、兄さん食べたいものある?」
「しゃぶしゃぶ」
冗談ぽく笑う。テミンももっと目を細めた。
「日本行かなきゃ」
この前、日本で行った店の一つがとても美味しいところだった。最近考えてはまた食いたいとミノは思う。
「あるよ、この近くに出来たらしいよ」
運転席から、マネージャーが声をかけてきた。
「いや、日本行った時食べますよ。それよりも美味しいところないですか?」
ツアー中ですぐに向こうに戻るし、味は違うだろう。せっかくテミンと行くなら、確実に美味い店が良かった。
「鶏の甘辛煮の新しい店が美味かったな」
「この前も言ってましたね」
ジャケットを羽織った、モデルもこなす長身を乗り出して、ミノは良いかもなと思い浮かべた。
「美味しそう」
隣から聞こえるテミンの声も、肯定くさい。
「〆のおこげがやばいから。個室もあるぞ」
笑ったマネージャーの最後の一言で決まり、店に移動した。
夜の真っ暗な外を見ている弟の、既に化粧でもしているような白い頬をミノは、眉からそのまま下りたような特徴的な目蓋の被さる目で、少しうっとりと眺めた。
変な気にはなったりはしないが、一つしか変わらないのに、身長の差もあるからか、自分より幼く見えるし、時々、女の子みたいにも見えた。中身は十分男だし、その外見を分かっていて、格好良くありたいと努力をしている本人に言えば嫌がるし、誤解されたくないから口にはしないが。
最近、久しぶりに恋人がいないから特にそう思うのかもしれないと苦笑して、
「食べないの?」
と、箸で挟んだ骨付きの甘辛い鶏肉をかじった。
「あ、食べる。久しぶりだから、こっちで外で食べるの」
はにかんで言いながら、皿に残っていた春雨を箸で掬ってテミンは口に入れた。
「うまいね、兄さん」
「おこげも頼もうよ」
「うん」
茶色く良く煮込まれた鶏肉を食べ終えて、しめに入る前に、二人で残りをつつきながら韓国焼酎を飲んでいると、テミンが思い出したみたいに笑った。
「なに?」
ミノは口を動かしながらそれを見る。
「今さ、兄さん人参食ってるよね?」
「うん」
輪切りに切られていた人参が今、口の中にあることを確認しながら、ミノは飲みこんだ。
「さっき俺が食べた人参おかしかったよ」
「腐ってた?」
ミノは、この弟が腹を壊さないかと眉間を寄せた。
だけど、弟は楽しそうに微笑んでいる。
「いや、小さかったけど一本丸ごとだった」
寄せた眉間を戻しながら、大きな口の端を上げて開いた。
「そう。生だった?」
「どうだったかな。味は変じゃなかったから良いけど」
「そう。まだ飲むだろ?」
彼のグラスが空なのを見て、ミノは笑顔のまま手元の緑の瓶を持ち上げた。
「うん。あのさ」
「ん?」
透明な酒を小さなグラスにこぼさないように入れながら、視線を彼に戻すと、丸い目を泳がせている。
「なに?」
グラスを指で摘まんでも飲まない姿に、ミノは少し笑みを消して頭を傾げた。
「何だよ?」
「こう言うの恥ずかしいんだけどさ」
と、頬を赤らめた相手を見て、なぜか胸の高鳴りを覚えた。けれど、何考えてんだと、彼より身長差はあるものの、同じ大きさくらいほどの頭をそっと振った。
「チャンミン兄さんやキュヒョン兄さん達と仲良いじゃん?」
いきなり、丁度明後日に会う、違うアイドルグループのメンバーの名前を出されて、ミノはほっとした半面、かすかに残念さを覚えて、また小さい頭を振る。
弟はまだ言いにくそうに視線を泳がせている。
「うん、なに?」
「俺、実家になっちゃったけど」
もっと言いにくそうに俯くから、さらりと揺れる黒髪を見つめた。
「俺とも時々はさ」
黙っていたミノは思わず表情を緩めた。
まだ途中だったが、彼の言おうとすることが分かって、それは自分にとっても嬉しいことだと、「勿論」と声に出そうとした時だった。
何が起きたのかと思った。
その間、黒髪を押しやるように、耳が伸び、白い頬に髭みたいなものが生えた気がした。
けれどそこには何もない。真っ暗な外が見える窓と、小さなグラスいっぱいの酒と料理の残った皿があるだけだ。
弟がどこにもいなくなっていた。
がたんと、椅子を倒しながらミノは立ち上がる。
「テミン」
さっきまで頬を赤らめていたのに。
はあっと息を吐いて、目を拡げる。
テミン。ともう一度呼び、テーブルの角で太腿を打ちながら、駆け寄った。
その顔を近づけるように、ミノは、ジーンズが床に落ちているのと、彼のいたそこを見た。
長袖のトレーナーだけが、椅子の上で小さく膨らんでいる。
更に顔を近づけると、そのトレーナーの首元から、毛の生えた長い耳が見えた。
それが隠れたかと思うと、同じ短い毛の生えた小さな鼻と口元が出て、また引っ込んだ。










つづく

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