夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「続きでも笑って 4」(キュヒョンの場合)ヒチョル SUPERJUNIORの短編




溜息をついて、キュヒョンは眉をひそめた。しかし、肉付きの良い顏でそれほど分からない。良く開いた二重の目は変わらないが、そこも彼の気持ちは伝えなかった。ただ口角の上がる口の端だけが下がり、良く表していた。
ドア横にあるカーテンが開いた窓から、こちらを覗いている三匹の猫が見えているのが、キュヒョンをうんざりとさせている。
中にはもっといると伺わせた。
手首が震えて、キュヒョンは見る。
『キュヒョンさん、時間が』
と、時刻の下にメッセージが入っている。
「早いだろ」
呟いたと同時に古めかしい木製のドアが開いた。
きゃんきゃんと白い小型犬が出て来て、キュヒョンは訝しく見下ろす。
顔を上げると、
「入れ」
と黒縁の眼鏡をかけた相変わらず白くきめ細かい肌の男がいた。
自分と同じく、脂肪がついたなと思ったが、赤いセーターが厚いだけで、良く見れば、そこまででもなかった。
くんとキュヒョンは匂いを嗅いだ。
そして、少し安堵する。
獣臭はそんなにしないなと、廊下から一番近いドアを開き、前を歩く人間が振り返るのを見た。
「お前、スーツやめた方が良かったかもな」
にやりと厚い唇の片側が上がった。
「は?」
と言った途端、開いたドアから毛の長い大型犬が飛びついて来て、「無理無理無理」とキュヒョンは、ヒチョルの後ろに回り込んだ。
久しぶりの兄の背中と、綺麗に染められた黒髪の下の白いうなじを見た。
その体勢で、「お前そんなに?」と言われる。
「人間以外と仲良くならないようにしてるの知ってるでしょ?」
キュヒョンが答えると「年だけとって……」と呆れ声で呟かれた。
ここなら良いだろ、と言われて二階の広いベランダに出た。
張りでた屋根でちょうど陰になる白いテーブルセットの椅子に腰かけて、キュヒョンは久しぶりに青空を眺めたなと、思った。
「酒飲む?」
声をかけられ、「それは今度で」と遠くの青空を眺めて答える。
コーラのペットボトルを手渡され、キュヒョンは「コーラだ」とボトルを凝視した。
「好きじゃん」
言われて、顔を上げると同じボトルを持った兄が見下ろしている。
キュヒョンは一瞬黙った。
「あれお前の車?」
兄はそのまま下に停めてある車を見た。
「そうですよ」
「駐車場に停めろよ」
「時間あんまりないから」
あそうと、気にしていないように、蓋を開けてまだそちらを見ながら飲み始める。
「お前、親父さんどうなの?継ぐの?」
正面に座られた。
「一応、まだ」
「なんだそりゃ」
年齢のせいもあり、若干きつさが治まったそこが笑って、キュヒョンは眺めた。
「……だって、まだ歌いたいと思うよ」
厚い唇の端を上げたまま、何も言わず頷いたヒチョルに、キュヒョンは言葉を続けた。
「日本行かなかったんですね」
「行かないだろ」
「秋葉原に家買うと思ってたけど」
「お前もう帰れ」
鼻で笑いながらまた一口飲んでいる。
「結婚もしないし」
キュヒョンはつけ加えた。
視線を落とした兄の表情は穏やかだった。
「タイミングだよ。残念ながらみんな俺のタイミングに合わせられなかった」
でも、今でもしたいしお前が言うな、と歯茎を出した。
「兄さんがしてないのに弟ができないだろ?」
キュヒョンもそれを見て笑う。
「お前、今誰かいるの?」
幅広の二重のつり目が向いて、また一瞬黙ってから、キュヒョンは「作りますよ」と微笑んだ。
「じゃあ今度話せるな」
楽しそうに笑っている兄に、「いつでもね」と口角を上げたまま、震えている手首を顔に近づける。
視線をやって、「じゃあ行かないと」とキュヒョンは立ち上がった。
「おう」
玄関まで二人は歩いた。見える範囲全部に目を走らせて、そこにいる動物達を確認し、キュヒョンは苦笑する。
靴を履いて、じゃあ、と振り返った。
「キュヒョン」
穏やかな表情の兄に呼ばれ、なに?と返事をした。
「お前こいつらに慣れろよ」
眉をひそめ、「ベランダで飲みましょう」と答えると、その目が笑った。
満足そうにドアノブに手をかけた自分に、
「そうじゃないよ」
声をかけられ、また、ゆっくり振り返る。
数え切れないほどの恋の話をした綺麗な肌の兄が、昔と同じ幅広の二重の眼差しを向けている。
「お前だけだよ。俺を諦めなかったのは」
キュヒョンは、そう言った兄を、良く開くまぶたをめいっぱい拡げて見つめ、呆然とする。
「俺の話は人にするなよ」
にやりとした厚い唇に、スーツにも構わず飛びつきながら、口角が元から上がった唇を押し当てる。
「重っ」
自分を腕で支えたヒチョルが、笑いながら更に口づけて来る。キュヒョンは、やっぱり経験はこちらの方が豊富だと、まるまるとした顔を更にゆるめた。








『続きでも笑って 4』(キュヒョンの場合)おわり





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