夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「ジル・ド・レの住んだ町6」ユノ シウォン チャンミン キュヒョン


教会へと向かった。



チャンミンは信仰があつい方ではない。



訪れるのは、特別な儀式の時くらいなものだ。

けれど、今日は行きたいと思った。


博愛という名が、全てを受け入れる愛であるなら、その大きな懐ではおのずと正体の分からない気持ちも顔を出すのかもしれないと思ったからだ。


それほど、
チャンミンは自分が何を考えているのか分からなかった。


会話をしたのは名前を名乗った時くらいなものだ。
あとは、目を奪われた自分を当然であるかのように、微笑を浮かべられていただけ。

昨日のシウォンとの会話ももうはるか昔のようだった。


一人の人間のことを考えている。

例えば、たった一人の親友と出会った頃、チャンミンはまた明日も彼に会うことが出来て、話が出来るのかと、待ち遠しかった。

彼は普段は節制してあまり酒を飲まないけれど、本当はワインがとても好きだから、美味しいワインと、チーズやハムを、用意して待ちわびた。

その気持ちは今も変わってはいない。

けれど、それとは違った。


この頭を、思考を、占拠されてしまうような感覚を、チャンミンは持ったことがないと思った。



実際は、あるのかもしれない。



それを忘れているのかもしれない、もしくはどうしても結びつかない理由があるのかもしれない。


その理由を本当に知らないのだろうか、それとも本当は知っているから、自分は今、こうして教会へと向かっているのではないだろうか。


晴天に似つかわしくない渦の様な思惟が馬車の外を、景色を、チャンミンに見る事も忘れさせている。


町中へ入ると、いつもより雑然とした日曜日の風景がそこにあった。

まだ一昨日の夜会の余韻を引きずっているようだった。

酒瓶が石畳に転がり、恐らく一晩中飲んでいるのだろう町人が、閉まった店先で半分寝ぼけた顔で、話し込んでいる。


教会が近づくと、日曜日の今日、丁度ミサの終わるころで、数人が出口から出てきている。まだ中には、神父と話をしている人間もいるようだった。

少し思案して、チャンミンは、この町を囲うように生い茂る森と、町との出入り口のようになっている、橋の近くにある教会の方にする、と馭者に言いつけた。


馭者は目をぱちくりとさせて、「はあ」と言って馬車を向かわせた。


神父のいない教会だった。火が出てから、補修に手間取ってしまっている。年取った神父は、完成前につい最近亡くなってしまった。


それでも町の人の善意で、掃除をされ、少しずつではあるけれど補修も進められ、新しい神父を待っているのだ。



ミサのできないこの教会でも、誰かが朝早くに来たのだろう、水の入った貝殻が入口に置かれている。

チャンミンは、この古い教会は好きだった。しかし、今日は神父の説法を聞こうと思っていたのだ。それでもこうしてなるべく人のいない場所を選んでしまったのは、自分の中にある渦が人の力ではどうにもできないと、思ったからかもしれない。


沢山の鳥の巣を携えたようなヤドリギのついた落葉樹に包囲された、

長い棘のような尖塔を持つ教会へ入る。

祭壇から火のついたここは前方が黒ずんだまま、そこに新しい石をはめ込む作業がゆっくりと進められている。けれど日曜日で恐らく誰もいないはずだった。

建物自体は小さくはないものの、十字のくり抜かれた椅子も祭壇前を避けるように中央に置かれた数脚だけだ。


晴天の日差しが、ステンドグラスのとても多い上部の壁のせいで、石の床をまるで原色の絵画のように彩っている。

それを目にしながら入っていくと、チャンミンは少し胸の靄がかげをひそめたのを感じた。

その色とりどりの光景と、誰もいない静寂に心を休めながら、久しぶりに訪れた場所を、まっすぐ中央に向かわずに、迂回した。

元々椅子の並べてある中央の身廊には、両端に壁と柱で仕切られた側廊がある。

左の側廊に向かった。絵画のように映る床を踏みしめながら、チャンミンは壁やアーチ状の柱のレリーフを見ていく。彫刻の美しい柱を通り過ぎる。聞こえるのはチャンミンの靴音だけだ。壁を、また柱を、と、そこで小さく息を吸い込んだ。

見開いた瞳の中、アーチの間から見える、中央の身廊で、すぐそこで、彼が立っていた。


「おはよう。チャンミン」


アーチの下に見える微笑は、驚いているチャンミンの表情に相対するように余裕のあるものだった。

紺色のフロックコートがサテンのような光沢を放っている。下の美しい絹のシャツも、古ぼけた教会にはその姿は浮いているように見えた。



「あ……おはようございます。ユノさん」



あの冷たく感じた奥二重の目で、チャンミンを見据えて、更にふと微笑んだ。黒の瞳だけになる。チャンミンは胸が騒いだ。


「ユノでいい」


そう言ってアーチを通り抜け、チャンミンの隣に立った。


「なんでこの教会に?」


そこにいるのが事実だと自分に言い聞かせるようにチャンミンはゆっくりと声を出した。


ユノが微笑んだまま、チャンミンが歩いていたように足を進め出したので、

並んで歩く。

ユノはじっと前を見つめて他人事のように言った。


「なんでだろうね。チャンミンは?」


ここに来た原因が、自分の隣にいる。チャンミンはどう答えて良いのか分からず言葉をつまらせた。

ユノは彼の心情が分かっているように口の端を上げて前を見ているだけだ。チャンミンはその顔を見つめて、答えられず歩いていく。

側廊は終わった。


二人で立ち止まって、自分達の足元に映る絵画を見るように、壁の上部を見上げた。

ここだけ、他のステンドグラスとはデザインが異なっている。この教会にもあるのだ。

ユノは何も言わずそれを見つめている。チャンミンが言った。



「町じゅうにあるでしょう?」



「そうだね」



ユノが答えた。その顔には微笑みはなかった。

この町にはそれが至る所にあった。レリーフ、絵画、版画、ステンドグラス。穏やかな町の様子とは、対照的な、


どくろが踊り狂っている図だった。



「『死の舞踏(ダンス・マカブル)』はこの町のシンボルでもあるんです」



チャンミンは眩し気に見上げて、話し始める。色硝子を通した光は眩しくはないのだけれど、昔から知っている懐かしさが彼をそうさせている。



「黒死病が、今から500年前、この町にも訪れたそうです。そんな時代に流行ったものが残っているんです」



静かに聞いているユノに、チャンミンは呟くように続けた。



「ここは辺境にあって、森に囲まれ、今はそれが資源になり、独自の流通の発達で、のどかにもしていますが、当時はそれが、死の要塞になりました。町人は半数以上が死に絶えたと聞きます。だから、ついたあだ名は」




「ジル・ド・レの住んだ町」




一緒に口に出した男をチャンミンは、見た。

ステンドグラスを見上げていた顔が、チャンミンに向いた。

数秒、二人は見つめ合った。



「ご存じだったんですか?」



そう聞いたチャンミンから、ユノは視線を外して正面に顔をやった。



「知ってるって、ほどでもない」



その目は何か遠くを見つめている。

チャンミンはその横顔を見ると、また胸が騒ぐのを感じた。

高く、しっかりとした鼻筋。自分よりは若干低い身長でも、十分に筋肉がついていることも思わせる体つき。

自分の頭を占拠する、この感情が何なのか、覚えているのに結びつかない理由が、

そこに見えるようだった。



「ユノさん……」



思わず口に出してしまう。



「ユノでいいよ」



遠くを見つめていた視線はチャンミンの声に呼び戻されるように、焦点を定めて、でも正面を見つめたまま答える。

その声はとても淡く緩やかだった。

まるで自分が優しく食べられるような気がチャンミンにはしてくる。



「ユノ」



自分の声もとても甘いとチャンミンは思った。

眩しくはないのに、目を細める。そんなチャンミンに、ユノは顔を向けた。

そしてすっと口の端を上げる。

とても魅惑的な微笑みだった。

ユノが近づく。

チャンミンは視線を泳がせた。けれど体が、彼に近づかれたいと望んでいて、動けなかった。

音もなくチャンミンの背後に回ったユノが、その肩に微笑んだままの顔を軽く乗せた瞬間、チャンミンは思わず目蓋を一度、閉じた。

ユノの手が、十分これも質の良い焦げ茶の上着の下、絹のシャツに、その体を包むように回されていく。

肌を撫でられる感触にチャンミンは呼吸を止めた。

手は胸の中心を添うように上がる。

そして襟の一番上のボタンを簡単に開いた。

喉元を、直に撫でられた。

チャンミンは、もっと触ってほしいと自然に、顎を上げ震えた。大きな目の一部を隠していた、少し波打った黒く長い前髪が更に分けられて、整った顔全体をあらわにする。

占拠をされる。

この感覚が、結びつかなかった理由は、彼が「男」だからというものだ。

明白に分かった。

でもその「男」に、チャンミンは震えを止められなかった。

自分の思考を乗っ取った相手が、肌に触れてきたのだ。

自分のうなじの下を、首にそって上に、その唇がつけられるのを感じる。

深いため息が漏れた。

死の舞踏を通過した光に染まりながら、チャンミンは興奮を抑えられなかった。


「あ」


首に舌先をあてられた。声が漏れた。

横からうすく舐め上げられていく。

白昼の教会の中で、チャンミンははじめて覚える快感に朦朧とした。

喉元に回された手は、また一つボタンを外す。



「だめだっ」



理性と、未知の体感から、チャンミンは拒否の言葉を出すことが出来た。

同時に、その手が止まる。




「分かった。じゃあ、だめじゃないところに行こう」




耳元で囁かれた言葉に、チャンミンは、眩暈を覚えた。









つづく

「Kiss me,baby.6」ユノ×チャンミン


幸せ……ねえ。



深酒する気にもならず、後輩達と飯食って、俺は自分のマネージャーに送ってもらっていた。



見慣れた夜の景色を見ながら、俺は今日のユノを思い出していた。



本当は。


本当は……ちょっと、期待した。彼女達たちが入って来たとき、


それから一緒に食事をすれば、



ユノの目が、覚めるんじゃないかって。


昔のユノに戻ってくれるんじゃないかって。


やっぱり、「女」がいいって、思い改めてくれるんじゃないかって。



だって、何年一緒にいると思ってんだ。


ユノだぞ。


男なのは勿論、一緒にも暮らしてたんだ、仕事だって。


家族よりも一緒にいた同性の相手が、突然自分を好きだと言ったんだ。


女が好きな俺が、戻ってほしいって、思わないわけがないだろ。


ユノにだってずっと彼女がいたし、俺に会わせたことだって一回や二回じゃない。



でも、今のユノにとっては、俺とあんなキスをしたことが幸せなのか。



溜息をつく。


曇った硝子に反射する自分がぼやけている。



イケメンだよな。


イケメンな……男だよな。


俺とキスしてユノはそんなに幸せだったか。


あんな変なキスで。


それなのに、好きにはなるな、か。


スキャンダルはご法度の商売だし、リーダーだし(二人しかいないけど)。


念をおされなくても全然そこは問題ないけど、



けど、


昔のユノ、
今のユノ、


そして、そのユノの矛盾は、
俺の疲れた脳も相まって、ますます俺を混乱させる。









つづく

「This is love comedy.7」ユノ×キュヒョン

俺の恋人だと言いながら、移動車の中ではずっとキュヒョンはチャンミンと楽し気に話している。どうせなら、お前らがくっつけば良かったよ。

って俺はまだくっついてないからな!危ない!危ないぞ俺!気をしっかり持て。俺はキュヒョンの恋人じゃない。もうこれ世界中にそう思われてるんじゃないかって思うけど、付き合ってないから!


「じゃあ、お疲れ様です」


「おー、また明日」


移動車が二人のマンションに到着する。俺はチャンミンに手を挙げる。


ん?チャンミン?何で外にいるのがチャンミンだけなんだ?


「ってうおおおい!」


何でお前も俺の隣で手挙げてんだよ!


「はい?」


「お前の宿舎だろ!」


「やだなユノヒョン!恋人との時間を俺が忘れるわけないじゃないですか!今日はスタッフにご飯ちゃんと買っといて貰いましたから!」


確かに、何か後ろから良い匂いするなあと思ってたよ!


「俺の好物ばかりです!」


知ってるよ!





折角買った二人分の惣菜だからとか、そんな理由で納得させられてってもう何を言っても俺の宿舎までついてくるから。



「はあ……」



「さあ!食べましょう!どうぞ」



「ああ?うん」



手渡された箸を受け取る。

救いは、思った通り今日のチョイスも見事に美味しそうなものばかりってことだな。俺は納得させられた様に見せて、本当はこれが食いたかったのだろうか。


「うまいな」


「良かったです!今日はお母さんの料理はないんで野菜も殆どないです!」


「うん」


「ビール飲んでもいいですか?」


もう何でもいいよ。ってだめ、負けちゃだめ。

でもビール位飲んでいいよ。


「俺んとこあったかな?」


「あります!飲んでなければ冷蔵庫の三段目に入ってます!」


「……どうぞ」


「美味しい!」


「……良かったね」


キュヒョンが箸を止める。なんだよ?


「ユノヒョンは俺に野菜食べろって言いませんね」


まあな!お前にお前の分まで食べさせられてるからな!


「今までの恋人には言われてたのに」


「うおおおお」


「どうしました?」


「あのな、キュヒョン!言っとくけど俺達は付き合って」


うん。やっぱり聞いてないよね、そういう時。


「どうぞ」


キュヒョンが冷蔵庫からもう一本ビールを取ってきた。


「キュヒョン。知ってると思うけど俺、強くないからいいよ。これチャンミンが入れてたやつの残りだから」


「残り俺が飲むんで、一口位飲みませんか?」


そうだな、それなら……見るとキュヒョンは片手に一本ずつビールを持っている。自分の飲んでいる缶と、俺用に持ってきたやつ。なるほど、俺が残しても、缶で飲むのか。

つまり間接……。



「グラス下さい!」


「ユノヒョンはグラス派でしたか!」



何か嫌な想像しちゃったよ。いやいや、全然普通だよ?チャンミンとだってそんなのするし。でも今は刺激は禁物だ!刺激は命取りだぞユノ!


キュヒョンが持ってきたグラスに一杯だけ注いで、残りを渡す。



「乾杯!」



キュヒョンが笑って言う。俺も何となく口元が弛む。


だからって好きにはならないけどな!俺が酔いつぶれて、それでいい感じになるパターンだと思ったら大間違いだからな!俺は制御できるんだ!



だから潰れたのはキュヒョンの方だった。



「ユノヒョン……今日は……泊まれ……ます」



テーブルに突っ伏して寝始める。潰れたというよりも、これはただの睡眠不足だな。こいつがこんな酒量で酔うはずないし。


「立てるか?チャンミンの部屋で寝ろよ」


仕方ないので、肩を貸して、チャンミンが使っていた部屋へ連れていく。ベッドに寝させると、すぐ寝息を立て始めた。

外に出ないのか異常に白い肌だな。この茶色いキノコみたいな髪型変えないんだろうか。

良く考えてみれば、こいつが変な事言い出してから初めてこんなに接近したな。むしろこんなこと言い出す前の方が、まだお互い肩を抱き合ったりしてた気がするよ。



「変な奴」



まあそっちの方が俺にはいいけどな!

さ、寝よ寝よ。

自分のベッドでな!




で、起きると。


どうやら早朝に帰ったらしい、キュヒョンは「練習があるので帰ります」と置手紙を残して消えていた。もう昼近いしな。俺も疲れていたかな。でも久しぶりの休日だし、有効に使おう。ってことで、友達とでも遊ぶか。誰か捕まるだろう、行ってみたい焼肉屋があったしな。いや、待てよ。こんな時こそ勉強するか。そろそろ日本の活動も増えてきたし、日本語の勉強最近ずっとしてないしな。

よし、友達と昼食って、ジム行って、録画しといた日本のバラエティでも見るか。皮膚科は最近肌の調子は良いし、今度でいいな。

ってことで夜になりました!理想の休日になったな。今のところはな!流石に今日は来ないだろう。飯どうするかな。久しぶりに出前取るか。

インターホンが鳴ったな!うん、早いな!


まだ注文してないしな!



「……お疲れ」



ドアを開けてそう言った俺にキュヒョンがきょとんとした。でもすぐいつもの調子に戻った。


「お疲れ様です!今日も沢山持ってきましたよ!」



言っとくが、恋心が芽生えたわけでも諦めたわけでもない。ただ腹が減っているだけだ。


そして、こいつの持って来る飯はとても美味しい。



「今日は全部お母さんが作ってくれました!」


「そうか。それでお前の好物ばかりなんだろ?」


「そうです!流石俺の恋人!良く分かりましたね!」



一言余計だけど、箸持ってきてくれてありがとな!











つづく