夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「PLAY25」ユノ×チャンミン

前日の睡眠不足と二日酔いのせいか、いつの間にか眠ってしまっていた俺は、目が覚めると、朝だった。
あんなに心配していたはずが、簡単に眠ってしまえるなんて、俺も薄情だな、


と思いながら目を開けて、また苛まれた違和感に息を止める。



もう自分達は別々に暮らしている。


一緒に暮らしていた宿舎時代は過去だ。


それをこの二か月ほどの、それも毎回じゃないイベントに、体が慣れてしまっている。
でもそれだけ、俺は見られていたということなんだろう。
二か月だって大概だしな。


でも多分俺が今まで気付かなかっただけで、それは二か月なんてもんじゃない。


なぜ、


どこで、


ずっとその疑問が駆け巡っている。



時計を見ると、昨日マネージャーと決めた朝食の時間だった。
気だるく起き上がって、とりあえずバスローブから着替えるかとスーツケースに目をやる。
日本では部屋で取ることが多い自分達だけれど、今回はホテルについたバイキングを利用する話になっていた。
長袖のTシャツとジーンズに着替えた自分が、朝食の提供するレストランに行くと、案の定チャンミンは来ていない。
体調が悪いのかもしれないと心配するマネージャーを横目に手早く食事を済ませる。
マネージャーが止めるのも聞かずに、果物を皿に入れて、チャンミンの部屋に向かおうとすると、慌てたホテルの従業員が、折詰のようにそれをプラスチックのパックに包んでくれた。


チャンミンの部屋をノックする。


「ヒョンですか?」


母国語でドアの向こうから声が聞こえた。


「そうだよ」


ドアが開く。
目が腫れたチャンミンはもうリハーサル用の動きやすい服装に着替えていた。


俺から目を背けて黙っている。


「これ」


果物の入ったパックを渡す。
中を見て、グレーのパーカー姿のチャンミンが苦笑した。


「マネージャーが体調悪いなら、食べないか、部屋で取れって連絡来たのに」


「部屋で頼めよ。これはマネージャーの代わりに見に来た理由。氷買って来るから冷やせよ」


「アイマスクありますから」


「それで冷やしたわけ?足りないだろ。あと一時間半だぞ」


腕時計を見た。


「じゃあ買って来るから、それも良かったら食えよ」


チャンミンの返事も聞かずそう言って、ドアを閉めた。
ホテルの売店で氷を買って、すぐに戻る。


「チャンミン!」


ノックすると、うざったそうにチャンミンがドアを開けた。
その目は腫れているのに加えて、今流された涙で潤んでいる。


「……お前」


「氷有難うございます。あと一時間半で、なんとかするんで」


こちらを一瞥して、俺の返事も聞かずに、ドアが目の前で閉められる。
同時にオートロックの音が聞こえた。


片手で目元をふせて、溜息を吐いた。



俺のタイミングが悪かったのか。


チャンミンは前に進んでたと言っていた。



それに気づかなかった俺が悪い?



それともその前にその気持ちに気付かなかった俺が悪い?




本当に俺達はもういい大人なのか。






つづく

「夢の続き73」ユノ×チャンミン


「蓑です!蓑に輝く男で蓑輝男です!」


そう言ってきょとんとしているユノを口だけ笑ったままじっと見た。


「あ、ユノ……です」


「ユノさん!ぴったりです!」


本を脇に挟んで両手でユノに握手を求めた。


「なにが?」


と言いながらユノは握手を返している。


「なんで……君ここに?」


「この駅に住んでいます!」


爽やかな笑顔で俺を見た。


「あの……その本なんだけど」


ユノが聞いた。


「ああ、これですか?」


脇に挟まれた分厚そうな本を手に取って俺たちに見せると、確かに小さな四冊の絵本がケースにひとつにまとめられていた。


「読んでて、良かったんで借りたんです」


「そうだよね!それ良いよね」


ユノがにこっと笑った。


「はい、良かったです!」


「この人もそれ探してたんだ」


ユノを見て俺も口を挟む。


「あ、そうなんですか!」


大きな目が見開いた。


「あ、うん、次に……」


「どうぞ!!」


自分達に突き出される。
俺とユノが目を瞬かせた。


「え!……あ、いや、返し終わったあとでいいよ!」


焦っているユノを見て、横に長い口がにかっと笑った。


「でもチャンミンさん達借りられないでしょう?どうぞ!一週間です!」


ユノが俺を見る。


俺は少し笑って頷いた。


「あ……ありがとう」


差し出された本を、ユノが顔を赤くして受け取った。


「じゃあ、俺行きます」


「あ、俺も」


ユノに見送られて、俺とカラフルな後輩が図書館を出た。


駐輪場で、二人とも自転車だったから、自分の自転車にまたがる。


「ありがと」


俺が声をかけた。


「はい!撮影は春休みになったので、チャンミンさん良かったですね!」



「うん、全然良くないけど!って出ないからな!おい聞けよ!一応先輩だぞ!」




俺が言い終わる前に、爽やかな笑顔で手を振って、



俺の前を走り去っていった。









只今11時52分(ユノの退役まで449日)

「PLAY24」ユノ×チャンミン


チャンミンがまた優しい顔で俺に顔を上げた。


胸の痛みが酷くて何も言えない俺は、その顔を凝視する。


自分達はしばらくそのまま見つめ合った。



チャンミンがふと笑う。



「まあそんなこと無理でしたけど、いい機会だったかもしれないです。


知ってましたか?ヒョン、俺達はもういい大人だって。俺を子供みたいに見てるのは、


ヒョンだけなんですよ。家族だって俺のこと最近はおっさんとか言うのに」



俺が思わず、口元をゆるませたのを見て、チャンミンが満足そうに笑う。



「俺はヒョンじゃないんだから、酷いですよ」



俺は小さく噴き出して笑った。
そして、俺達は、また少しだけ、大人になった相手の顔を眺めた。



「ヒョン、出て行ってもらってもいいですか?」



多分、俺が出て行けばこの可愛い弟はひっそり泣くんだろう。


俺は胸の痛みが治まらない。


チャンミンはこれを乗り越えるんだろうか。


俺のことが、好きなら、それは失恋だ。


でもその覚悟を決めたような顔を見ると、何も言葉に出来なかった。
今回だけは、その立場じゃない。


それにもう、いい大人なんだよな。


俺は頷いた。
チャンミンの目は笑っていない、でも口角を上げて俺を見た。


自分もそんな顔をしていたと思う。そして俺は、部屋をあとにした。







それからすぐにあった打ち合わせにも、問題なくチャンミンは現れて、夕食もいつも通りだった。
明日はリハーサルだったけれど、自分達は深酒をすることもなく、その日は早々に切り上げた。


チャンミンと似たような部屋で、俺は一人ベッドに横になっていた。



……明日はリハーサルだけだから、今多分、泣いている。



大昔、あれはまだ自分達が十代の頃、


失恋したチャンミンが大泣きしたことがあった。


はじめての彼女だったと思う。


この仕事特有の会えなさから来るすれ違いが原因だったような。


こんなかわいい弟を泣かせるなんて、酷い女だなと思った記憶がある。



まさか自分があの彼女と同じ立場になるなんて。



あおむけになって、組んだ手で顔を覆った。


そして今はその隣にいてやることもできない。



本当にできない?



それをずっと考えている。


何で?


どこで?


あのパートナーはその常識を超えたのだろう。







つづく