夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「極楽鳥」D.O スホ EXOの短編


白い背に小さな丘陵が直線に伸びている。指をあてて、感触をぽこぽこと滑り台からおりるように確かめた。
スホが可笑し気にこちらに振り向いた。
何も言わず整った顔で微笑まれると愛しさでどうにかなりそうになる。動けずに見つめ、指は、裸の尻に辿り着いて置いた。
きめが細かく、引き締まっていて、馴染みがある。
「何だよ?早くしろよ」
白目のはっきりした眼は少し開いていたカーテンの隙間位では月光が届かずに光を失い、目の前の人間だけには届いていた。
足元に拡がっている柔らかい綿の灰色のベッドカバーも、指先の触感も、優しかった。
こんなに優しい人間と自分がいるのが、ギョンスは不思議だった。過去の彼女達は、全員とても愛していた。残酷なまでに翻弄され、そして、捨てられて行った。
自分には、何か足りないものがあるらしい。
巧みにその部分を嗅ぎつけて、上手く誰も悪者にしないよう誘導し、捨てるのだ。
絶対嫌だと、縋りついた時もある。しかし、一度見切りをつけられたものは、決して覆されることはない。俺はそういう女を好んでいたのだと、そこでいつも気付かされる。
恋人を失うと、メンバーの眠った深夜に映画を観る。アイドルグループの職を後悔したことはないが、同居生活に苦痛を感じたことはある。朝から浴びるほど酒を飲んで、誰とも会わず、映像の世界に入り込んでしまいたい時がある。
やっと個室が与えられ、人の気配がなくなった夜に、明日のスケジュールのために酒は抑え、暗闇で眩しい虚構を観ると、賢くて、人が善い男達が綺麗な女とシナリオがあるとは思えないほど上手い演技で美しい恋愛をしていて、自分を痛めつける。
ヘッドフォンから台詞を聞きながら、もし本当の男があんなのだったら、自分なんかクソつまらない人間だと、捨てられて当然だと、表情もなくし眺めてしまう。
そして、自身の良いところをもう一度思いつく前にギョンスは眠ってしまう。
恋愛は、どうやらそれの繰り返しだと思い込みそうだった。
いつの自分も見捨てず、自暴自棄なからかいにも、覚悟したように「分かった。キスだな」と、この部屋で、床に座りベッドに背を持たれ太い眉の凛々しい目元で瞳だけ上にして言われた時、それが良く分からなくなった。
「本気にしたんですか?」と噴き出して笑えなくなった。そんな冗談を俺が言うはずがないと思ったのか、そんな冗談を言うほど自分が打ちのめされていたと知らなかったのか。繰り返さずに済むことも出来たんじゃないかと、ギョンスは良く分からなくなった。
リーダーのスホは、真っ白な頬を桃色にして、一回だけだから、男同士でも照れるな、とぶつぶつ言いながらも、合わさるだけのキスを受け入れて、その口元を拭いもせずに「あー、俺たち何やってんだ」と後ろのベッドに体を伏せて笑った。その優しさに、自分がどれだけ泣きそうになったか知らず。
メンバーということ、俺が年下ということで、こちらの熱烈な思いを放棄出来なかったのは確実だが、それだけではないとギョンスは思うから、こんなにも動くことが出来ない。
抱く時以外も、ふとした瞬間に。疲れから酷い顏で眠るメンバーを、同じく疲れた顔で見て微笑んだ時、自分が用意したプレゼントを、散らかった部屋でそこだけ避けて「ありがとう」と飾った時、二人きりになった瞬間目くばせして来た時、いつも自分がどこにいるのか確認するように、ギョンスは動作を止めた。
人が善く、賢く、そんな人間が目の前にいる。
キスをされた。
「何考えてんだ。しないなら、俺がするから」
正面で胡坐を掻いて、横に転がっていたビニールの小さく平たい袋に手を伸ばし、ギザギザとした淵を鼻歌でも歌いそうな調子で破いてから、また白い顔を上げる。中身を取り出しながら、月光に照らされた濃い眉の凛々しい目元が、薄いゴムを摘まみ上げたまま、じっと見つめて、「冗談だよ。何か言えよ」と微笑んだ。
ああ、今、自分はとても美しい世界にいると確認すると、ギョンスは、いつものようにこみ上げるものを耐え、もう泣く必要なんてないだろと自嘲しながら、笑うのだ。







『極楽鳥』おわり





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