夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Rabbit's Adventures in Wonderland 4」ユノ×キュヒョン


Tシャツにスウェットパンツで髪が濡れている。
ちらっとこちらを見て、呼び出した人間と来た。
「行くぞ」
ドンへに手を引かれて、一歩踏み出した足がもつれた体を、慌てたもう一人に支えられた。そのまま肩を組まれる。
「ドンへ、開けといて」
強く言われた通り、エレベーターの中で先にドンへがボタンを押して待った。
シャンプーの香りのする濡れた栗色の髪が俺の頬にあたる。
そう言えば声も良かったんだったなと思い出した。
途中から一人で歩けると思ったけれど、言うのが面倒でそのままにした。
何となくもうどうでも良かった。
二人に支えられて、最悪も最悪な俺が、肩を組まれたまま、ドンへの部屋ではない、もう一人の部屋に連れていかれる。
ベッドにもたれかかった俺の前に座って、心配げに見られた。
「ごめん。気にせず、寝て」
「俺、明日遅いんで」
だからこいつの部屋だった。本当はもう少しドンへと飲みたい気持ちがあったんだと思う。でも、なぜかまたこの男が一緒にいる。
「水飲んで下さい」
ガラスコップに入れられた水を口元に持って来られた。
ここまで酔った姿を他人に見られるなんて。苦笑してコップを持った。
「大丈夫。自分で飲める」
俺が言うと、視線を泳がせた。
一口飲んで、襟元が苦しいのに気付く。
ネクタイしたままだった。
コップを置いて、うんざりと弛めた。
それから、目元を片手で抑えて溜息をつく。
迷惑かけ過ぎなのは分かっている。最悪だとも。でも、どうしようもなかった。
まだ苦しいのは襟のボタンで、本当にそこを絞められてるみたいだった。
小さく笑うと、首元を触られ、目を抑えていた手を下ろす。
楽になったのと同時に、キュヒョンが何も言わず次のボタンに手をかけていた。
けれど、俺と目が合って、その手を止めた。
酔いが醒めた気分になった。
気まずそうなのに体を引かないから、更に気まずい。
鼓動が早いのは酔いのせいだと思っているけれど、久しぶりにプライベートでチャンミン以外の人間に至近距離で来られて、身じろぎも忘れた。
「ありがと」
とだけ言う事ができた。
「いえ」
視線を泳がせて、赤い顔でまたボタンを開けられた。何か変な気分になるな。
やっぱり俺の対象はこっちなんだろうか。横髪に手をあてた。
「もう、いいよ」
三番目のボタンに手をかけていたキュヒョンの手を取った。
動きが止まって、「あ、ごめん」と離した。そう言えば唯一、俺の性癖を知っている奴だった。
この飲み過ぎの理由も考慮されているんだろう。
困ったような顏が俺を見つめて、「いえ」と言って、前のめりになっていた体を戻してそこに座った。それでも自分達は向き合った十分近い距離だった。
「キュヒョン。俺ちょっとシャワー借りて良い?寝てていいから」
酔いは一連の流れで醒めてきたけど、もっと醒ましたくなった。ノーマルな失恋相手のノーマルな親友に変な気を起こしそうだ。そして、大分汗をかいて気持ち悪い。
訝し気に見られた。
「浴びれます?」
「大丈夫」
俺が立ち上がると、一緒に立ち上がられた。風呂場まで案内される。
「あ、新しい歯ブラシあったらもらえない?歯磨きたい」
洗面所の鏡の前に立つと、どうぞと渡された。
「さんきゅ。歯磨き粉はこれ?」
「はい」
脱ごうかと思ったけれど、鏡越しに目が合ったから先に歯を磨いた。
「キュヒョン。寝てていいよ」
「いえ、眠くないんで」
そう言って動かない。仕方なく磨き終わってシャツを脱いでいく。上着は部屋に置いて来た。中のタンクトップを脱ごうとして、突っ立っているキュヒョンに目を向けた。
そんなに酔って見えるのか。
「そこにいられると恥ずかしいけど」
「でも酔ってて危ないから」
それから「見ないです」と言って、顔を背けられた。
「別に見ててもいいけど」
思わず口元がゆるんだ。キュヒョンがこちらを見て、じっと見つめられる。
さっきの距離を思い出した。やっぱり俺は酔っているな。自分の性癖を知られているやつで、男で。
酔いのせいで鼓動が激しい。
タンクトップから手を離して、振り返った。
「そこにいられると変な気分になるけど」
何となく抑えが効かなくて、一歩寄って、白い顔を覗き込むと、目を丸くされた。
「冗談だよ」
鼻で笑いながら、栗色の髪に手を置いた。もう乾いている。
半分は冗談ではなかった。
そこまで抑えがきかないわけじゃないけど、触りたいとどこかで思ったからだった。
キュヒョンは視線を泳がせては、俺を見た。
丸く黒い瞳も、変わっていない。
「一人でも大丈夫だよ」
見つめながら、呟いた。
だけど、心配そうに俺を見て、こちらの性癖も忘れている。
「なに?一緒に入る?」
視線が泳ぐだけだ。
「冗談だって」
苦笑しながら、まだ動かないから、また変な気分になってくる。更に覗き込む。
「眼鏡してるんだな」
黒いフレームを触った。
「はい」
ゆっくりと瞬きされた。俺の方が少しだけ背が高い。
「とっていい?」
両手で柄を持ってみた。これも半分冗談で、実際、とってみたい気もあった。
「はい……」
許可され、キュヒョンを見つめながら、何で拒否しないのか分からず、言った手前持ち上げて、外した。
もっと大きな瞳があらわれた。
引き寄せられるように近づく。
なのに不安げにこちらを見るだけで何も言わない。
「キュヒョン。何でそこいるの?」
キュヒョンは二回瞬きして「心配だから」と言った。
「このままだとキスしちゃうけど?」
早く動けよ、と思いながら顔を寄せる。
目蓋を開いて、黒い瞳がより見えたのに逃げないから、唇に距離がなくなる。
俺は酔いのせいにして、そっと口づけた。
顔を離した。
「悪い。忘れて」
でも目の前で、ゆっくり瞬きするだけで動かない。
それを見つめて、もう一度、近づけてみた。
そのあと少しの位置で相手の顔を眺める。
「何で?キュヒョン」
声に出さずに「分からないです」と答えられた。見つめ合う。
鼓動が激しい。もう一度、唇を重ねた。






つづく

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