夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「チャンミンくんの恋人49」ユノ×チャンミン


拡大した奥二重の目は丸い瞳がはっきり見えて、その黒は足を滑らせて落ちそうなほど大きく見えた。



心臓が口から飛び出そうだった。



まさかここに来て、ずっと目を瞑っていた問題を突き付けられるなんて。
小さかった相方なら考えなくても良かったそれを。


口約束だろう?
でもしたのは俺だ。
それでもいいと思ったから。
だけどこうなったら話が違う。
話が違うのに、ユノはそれでも変わらなかったのか。



そうだ。


ユノは変わらなかったんだ。



今日一日の二人が、ぼやけたピントが合うように思い出された。
俺が起きるのを見ながら、腹が空いていたのに一緒に食べるために待っていた。
玄関で俺に向けた見覚えのある目は、あれはユノが俺と離れて病院に行ったときの不安な目だった。
仕事中も気にして話しかけてきたのは、ユノの方だ。
もしかしたら風呂だって一緒に入るつもりだったんだろうか。


でも、もうそんなの必要ないだろう。
だって俺達は大きな大人の、男で……


だけど、ユノを勝手に小さい小さいと違う生き物みたい考えていたのは、こっちだけだ。
ユノが何も変わっていなければ、俺なんかユノからすれば反対に小さくなっているくらいで。


だからこれは保留にはできなかったんだ。
かと言って考えてどうなった?
負の結論なんか出せなかっただろう。



相方を凝視する。



「ヒョン、俺のこと……好きなんですか?」



息がかかりそうなほど近い、
目の前の切ない顔が見つめて、その口が「うん」と言った。
酸欠になったように意識が瞬間、遠くなった。


「お前が戸惑うのは分かるよ。でも俺はあの約束をした時から、多分徐々に。あんな姿で相手が男も女も関係ないし、チャンミンしかいなかったから」


自嘲気味に笑うけど、ユノの目は小さかった頃のように俺に縋りついている。
大きな手に頬を掴まれたまま、その手にも俺の鼓動が伝わってしまいそうなほど身体に響く。


「もう俺だけじゃないでしょ?これからは沢山女の人と会うでしょ?今日だって会ったでしょ」


相方から目をそらせない。だって視界にはそれしかない。



「でも俺は同じだよ。しかも昔から知ってるチャンミンだし、簡単にこの気持ちがなくなると思えない」



黒い瞳が訴えて来る。俺だけだと言っている。


「俺は、やっぱり戻りたかったよ。大きい自分に戻ってチャンミンとこうしたかった。でも言えなかった。あの時チャンミンに嫌がられたら、それこそ俺は本当に誰もいなくなるだろ」


切実な目と見つめ合って、俺はユノを見捨てたりなんかしない、と思いながらも、でもそうとも言えない、とも思った。
だって今もそうとも言えない。
ユノだってまだ戻ったばっかりで、これからまた大勢の人間に囲まれて、女に目を向けるようになるんじゃないか。
けれどそれも推測でしかない。


今を、この現在を、考えないといけない。


顔しか見られないユノを視界に入れたまま全く動けない。


硬直している俺を見つめて、ユノが「でも、」とぽつりと口に出した。



「……戻りたかったけど、今はこれで本当に良かったのか分からない。チャンミンと一緒にいられないなら、分からない。言わなかったのは、あれでもきっと俺は何か喜びを見つけてたんだ」



ユノは――、



本当に変わっていない。



正確には、変わった時から変わっていない。



こんなことをその口から聞く日が来るなんて、それを俺はこの一か月で、何回思っただろう。



俺が呆然と見ていたユノの目が細められたせいで、
まるで最後の別れのようにその黒い瞳が揺れた。
そう思ったら焦点が合わなくなって、
また一度唇を当てられた。



昨日は自分も香っていた甘い入浴剤の匂いがしてから、


すぐに当てられた感触が唇から離れていくのと同時に、


頬から手も離される。その体も離れた。



空想の世界の登場人物でも見たように、消えてしまわないよう顔で追いそうになる。



でも大人の俺は目だけで追った。



ユノがベッドからおりる。



「これ、もらいに来た」



上手く事態が収拾できず、曖昧な意識でその顔が向いた方を見る。


捨てるところだったそれとユノの後ろ姿を交互に見ながら、


「……そんなの……どうするんですか」と言うと、「とっとく」と笑われた。


それから、



「また、俺が使う日が来るかもしれないだろ?」



と、振り向いた笑顔が歪んで、俺は、はっとその顔に目を凝らす。



泣きそうに見えたけれど、ユノは泣かなかった。


もう一度前に向いて、呟いた。



「その時には、今度こそずっと一緒にいて」



まるで小さなユノの声みたいだった。


俺はその台詞とユノの後ろ姿を、唖然と受け止める。


言葉を失くした俺の反応は見ず、デスクに近寄って、崩れたブロックをまとめるように掌で寄せ集めようとする。



「待って……!直すから。直して、渡します」



焦って声を出した俺に、



「うん、ありがと」と、手元に拡がる自分の部屋を見下ろして、



「じゃあ、お休み」と俺の顔は見ないまま、ここから出て行った。



手の届かない場所で、個々の生活を送るために。



それを使う日は、もうきっと来ない。



来ないって知ってるから、ユノは俺の顔を見られなかったんだ。



俺の前では、あんなに良く泣くようになってしまったから。



耐えられないかもしれなかったから。








つづく

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