夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「獣」?の短編

まあ、そうかもなと思った。
黒い目を空中に彷徨わせる。夜空に消える前に煙はそこに入って、顔をしかめた。
そうしながら、沢山の人間の顔を思い浮かべ、彼は舌打ちした。
可愛いもののように。
自分を見るあのまなざし。
そんな目で見るなと思っていても仕方ないこともある。
肺に思い切り吸い込んで、気持ちを安定させる。
でも、本当に安定しているか怪しいもんだと、笑った。
鼻笑いした風が煙を揺らした。
短くなった煙草をもみ消し、新しいものを取り出した。
火をつけた。
じっと音を立てて先は明るくなり、そのままになった。
何が嫌か、と彼は思う。
笑っていた目が何もない夜空を睨んだ。
イメージだ。
勝手なイメージを押し付ける者達が許せないと、ぎりと短く歯ぎしりした。
しかし、それを売りにしているところは、自分がと言うより、上から滲んでくるように、感覚は生まれ、そうしなければと思ったところは……あった。
うんざりした息を吐いた。また煙が出た。
共犯だな、と皮肉に口角の片側を上げた。
だが、本当に嫌なところはそれよりも先にあると、再び前方を見つめる。
要は、「東方神起だから」。
そのまなざしは。
分かっている。自分がもしそのレッテルを貼られていなかったらこんな扱いは受けていない。自分のことは自分が良く分かっているつもりだと、黒い目は少し悲痛の色を出した。
もし俺がそうじゃなければ。
きっと。
きっと、思われたりしないはずだ。
小さな目に、不細工な口元……と、彼は自分が、怒っているのか、悲しんでいるのか、良く分からなかった。
生まれてから少し経つと、感情は難しくなっていくもんだ、と自虐的に笑った。
そして。
昨日の女は悪くなかったなと、べランダの、窓のサッシに載せていた尻の位置を直した。
もうあまり冷たさをそこから感じない、彼は一瞬、春を思った。
思ってから、また思い出した。
騒がしいクラブで、出会った女の尻が大きかったこと。
声も。
と、思い浮かべ、下半身に熱を覚えて、にやりとした。
また隙を見つけ行くかと、上向いて、ふうと吹きだした。
夜空に昇って行くそれはすぐに消える。
俺のイメージ。か。
顔を上げたまま、しばしそこを眺めた。
仕方ないわな。
これが、……仕事なんだ。
何万もの人間が相手だ。沢山の俺がいる。
全員が、俺のことを愛してくれてるのかは分からないしな。
だけど、愛なんて……
彼はまた顔を下げて、とんとんと口紅のついた吸い殻が盛られた灰皿に灰を落とした。
昨日の雨が少し入り込んでいた。
愛なんて。
――幻想だ。
そんなもの俺には必要ない。
自分の趣味なんて、全然理解していない女の選んだ服を着た身体を思いながら、溜息を吐いた。
彼の耳に、部屋の外から階段を上がる音が聞こえて来た。
舌打ちする。
自由になりたい。
そんな言葉がよぎってから、ふと、笑った。
まあ、いい。
これが俺の、生き方だ。
彼は手の中のものを灰皿に押し付け、立ち上がった。
そうして、赤い熊のぬいぐるみは、部屋に入り、ベッドに上がると、また動かなくなった。





『獣』おしまい


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