夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「その目で笑って 1」(ジョンヒョンの場合)ヨンファ CNBLUEの短編


濡れたような黒く丸い瞳とそんな白目が前髪の間から見えている。
仕事のストイックさは変わらず、何の躊躇いもなく人を恫喝する。年齢の近い自分は衝突もする。リーダーで年上と言うだけではなく、彼がそうする理由はある。
人と違うと自覚があれば周りの人間が愚鈍に見えるはずだ。
だけど、その目に見上げられると、いつも許してしまう。
自分が悪いことが多くても、「許してしまう」。それくらい求められるものが大きいからで。でも相変わらず自分達は良くやっていると思う。
「兄さん、また髪上げたね?」
「良いじゃん」
そう答えて、その目は普段メンバーの中では一番それを見ない手元の携帯電話に向いている。俯いていても分かるほど、最近鋭さを増した。
「良ければ良いよ」
バンド内で年下のメンバーが、挟んだもう一方で話しているのをジョンヒョンは楽屋の鏡越しに見た。
ヘアメイクされたばかりで全員が鏡の前に並んで座っている。
背の高い年下の弟はそれだけ返して、もう構わずその手にもあった携帯電話を己に向けてかざした。
自分も撮ってファンに公開するか、迷った。けれど、ジョンヒョンはやめて、あいつだけで良いかと思った。
一枚撮って確認し、もう一枚撮ろうとして、さっきまで話していた隣の人間に席を立たれている。立った人間は中央のソファーに座って手元のそれをいじり出した。
髪型、言われて気にしたかなと思った。
でも、そうではなくて、恋人に送るメッセージがその画像に入り込むかもしれないと思っただけだなと、ジョンヒョンは鏡の後ろ姿を眺めた。
「ジョンヒョン兄さん」
「なんだよ?」
隣に詰めてきた弟を鏡越しに見る。自分の目は反対に穏やかになった気がすると思った。まつ毛の多い切れ長のそこが少し、女っぽくなったかもしれない。
この中にいると肌の白さが違うからかもしれない。
ジョンヒョンは、体を鍛え直すかと思った。
「一緒に映ろう」
昔は若干似ていたのに、違って見えるのは、向こうがあまりにもきつさを増したからだ。
目蓋の多いベースを演奏する弟の目をジョンヒョンは眺めた。
「いい。お前ひとりにしろよ」
「何で?いいでしょ」
返事も聞かずかざして撮って、満足したように確認している。一瞬だったけど、表情は作れてたと一緒に覗き込んだ。
「あれ、事業かな」
落とした声で言われて、「違うよ」と自分達の映る画面を見下ろしたまま返した。
二人同時に少し顔を上げた。
「それなら電話でする」
「そうかあ?」
背後のソファーまで届かないほぼ出していない声だったが、だって表情がまだ穏やかだったし、あれは彼女とのやり取りだ、とはジョンヒョンは説明を足さなかった。
弟はあまり気にしていないように、メンバー1手足の長い体を前屈みにして、画面を触り出した。
「まあ俺たちにも教えてよ」
「俺に言うなよ」
公開した画像に満足そうな、ほぼ向かい合っている顔に言った。
最近、新しい情報を全く教えられなくなったからだ。
しかし、年上同士であっても、自分とも共有していない。
きっと単純に動きがないのだろうとジョンヒョンは思った。
でも、この距離が何かのちの自分達に関わってはいけないと、鏡の前に備え付けのテーブルに置かれた、次回自分が演奏するギターのコード表を見つめた。
「じゃあ聞いてやる」
少し目蓋を開いた相手の前で立ち上がって、隣に腰をおろした。
こちらも少し目蓋を上げて、ジョンヒョンを見た。
「なに?」
ローテーブルを挟んだ向かい側にもソファーはあると眉を寄せている。
昔の、前髪をおろした姿をジョンヒョンは思い出してみた。
やはり、鋭くなったと思った。
しかし、濡れた大きな丸と白目は変わらなかった。
かすかに、眩し気に見た。
「事業どうなの?」
濡れたようなそこが驚いてから。
「ああ、今停滞中。土地がなくて」
と、言った。
やっぱりなとジョンヒョンは微笑む。
変な顔をしながら、携帯電話に向き直して、いじっている。
「彼女来るの?」
また、ジョンヒョンを不可解そうに一瞥し、「来るよ」と言った。
「そう、良かったね」
「今日お前変な事聞くな」
似たような黒い衣装に着替えた、昔より鍛えられた姿を見ながら、口の端を上げる。
「そうか?」
「だろ」
熱心に画面に打ち込んで、続けて言われる。
「なに?ジェラシー?」
「そうだよ」
見開いて、再び向いた。
そのまま、楽しそうに笑った。
笑ってくれて、良かったとジョンヒョンは思った。
そして、許した。







『その目で笑って(ジョンヒョンの場合)』おわり






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