夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「誕生」ヒチョル×イトゥク(誕生日記念)


増幅するのが煩わしい何かについて。
このお話は一種の妄想観念だと、ヒチョルは、星にのめり込んでいる下半身に、重量を増した膨らんだ一部のせいだと分かっていて、信じられないと分厚い唇を指の二・三本で押し、すぐ後に、てっぺんから少しこめかみの方にずれた上部を、その長い指で押した。
頭皮の質感にわずかに皮脂を感じた。
風呂にも入らず、感情の渦に飲みこまれる。
つりあがった大きな眼で、布団が重さを感じていると、驚愕する。
実際感じているのは自分だけだ。
朝を迎えても無駄だった。
生理現象の時は過ぎた。
試しに、ぴったりとした下着の上に手を置いた。
慣れた快感が静かに出たが、とてもではないが、そんな気分にはなれない。
真ん中から分けた長く茶色い前髪を片側だけ耳にかけながら、口を半開きにさせ意識が遠のいたように整った顔を動かし、同時に視線を彷徨わせた。
昨日は怒鳴り合いをした。
自分が所属する団体のリーダーと。
歌って、踊る、その中に自分と同じ年の男がいる。久しぶりに真っ向から、対立した。
他の年下なんか構わずに、宿泊しているホテルの相手の部屋で。
止めに来た仲間達も、お手上げだとばかりに引き返した。
本当に、こいつ頭可笑しいのか。
何で俺の言うことをすんなり理解しないんだよ。凝り固まった常識とやらを捨てれば、そんなたるい返事にならないだろう。いつも中庸を保ちやがって。分かってるふりして分かってないだろう。なあ、一回脳味噌入れ替えて来いよ。
口にまで出て、怒鳴り合いから、自分より背の低い男と立ち上がって、互いに手も出た。
最後は、大きいと自覚がある自分の拳を、丁度相手の体の、中心らへんに入れて、床に倒れ込んだ襟首をつかみ、もっとと、馬乗りになった。
体内は、筋肉やら骨やらを感じるほど、手の甲に最初にあたったから、イトゥクは吐くような感じになって、呻いて顔を歪めていた。
金髪に近い髪を毛穴のない艶々した顔にぶつけながら、怒りと痛みをあらわにしている。切れ長でも自分と違い、優しい上がり方をする目尻の双眸と、綺麗に弧を描く唇が、憎々しげに、表れている。
ヒチョルは仕事柄、そこを攻撃できず掴んだ襟首を持ち上げ床にその後頭部を打ち付けようとして、見据えた。
つりあがった目で、凝視した。
相手の睨む目と見つめ合いながら、息が止まりかけた。
下半身に感じた、自分の重さで動けなくなった。
サディスティックなものなんかでない、女として来て分かっている。
暴力と屈服なんかには一度も興味を抱いたことはない。
ヒチョルは見開いた目で、見据えていた。
イトゥクは憎悪をむき出しにしている。
これは、美。
自分は今、美的感覚を、抱いている。
この男に、そんなもので、刺激されている。
こちらを不快に見上げている人間から、視線をそらせ、唖然と顔を上げながら、ヒチョルは相手から下りた。
夢かと思った。
物理的な興奮ではない、確かに、美と言う感情が自分の中に生まれているのは分かった。
自分の感覚を疑ったことはなかった。特に優れているなんて思っていないが、芸能界と言う業界に携わっていて、そんなものを目にする機会も多いし、こだわりもある。
しかし、今狂った。反応するまでの感覚は底辺だと思った。わけがわかっていないイトゥクを見ることも出来ず「おつかれさま」と言って部屋を出た。
うわの空で、部屋に戻って、長袖シャツにジーンズを手早く脱いで、布団をかぶった。
絶対にそれでするなよ、と切れ長の目を瞑った。
でも美と言う感情と、自分の下で呻いた男が離れてくれない。
ふざけんな、勝手に気違いじみた進化遂げてんじゃねーよ。
あんなのやりたくねーんだよ。
しかし、歯を食いしばりそうなほどの欲求を覚えた。
少しでも触れば終わるまでするだろうと、耐えて、無理矢理寝た。
男なんかやりたくない。
抱きたいなんか思わない。
それなのに、ヒチョルは目が覚めて即、男を思い出した。
考えただけでこうなった。
意識が遠のくような心持ちだった。それほど、男が、自分の下で呻いている。
昨日の自分にはきっと返らないだろう。
重かった。
ヒチョルはシャワーを浴びた。もうどうしようもなかった。
まだ時間はあると、今日もノックすると、怪訝に半円の目蓋を歪め、艶々した唇を少し開いた、美しい男が出て来た。
ヒチョルは体を押し込めながら、有無を言わさずその唇に重ねた。
目を丸くした相手が本気で抵抗する。
昨日と同じく、ヒチョルはその体に、拳をめりこませた。
呻きながら、床に倒れ込む。
見開いた瞳に、瞳孔の開いた自分の切れ上がった目を映した。
「やめ……」
だけど、ヒチョルはやめられなかった。
むせながら本気でイトゥクが抵抗しても、無理だった。
馬乗りになり、唇を押し付けながら、体を撫でまわしていく。
つりあがった目は男を離さない。
恐怖の眼差しを向けるイトゥクに湧く感情に飲みこまれる。
地球に下半身がのめりこんでいくのを感じる。
言葉の氾濫が決壊する。感情が形になってもう戻らない。
苦しい涙と唾液で汚れた顔に、ヒチョルは一生懸命に口づける。
本当に美しいと思った。
心底、惚れたと思った。







『誕生』おわり

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