「我が友人、シム・チャンミンが余裕そうで俺は嬉しいよ」
学食に向かう途中の校舎と校舎の間の通路で、無視をしている俺にグレーのコート姿のキュヒョンが同じことを二回笑って言った直後。
「チャンミンさん、キュヒョンさん!」
後ろから呼び止められた。
振り返ると爽やかな笑顔で片手を上げて、俺達の前に青いシャツに黄色いベスト姿のカラフルな好青年が駆けて来た。
「あ、えーと、君は」
なんか見たことはあるんだけど。
「蓑です。蓑に輝く男で蓑輝男です!」
そう言って口角の上がった横に長い口をにかっと笑わせた。
「ああ、蓑君。君は確か去年の文化祭で、うちの学科が全学年合同でする展示会で一緒に係員になった間柄だよね」
殆ど面識がない。
「お前は頭がどうにかしたのか」
隣でキュヒョンが呟く。
「なんて説明的なセリフ言うんですか!いきなりびっくりしましたよ!」
「ごめん。ちょっと言ってみた」
「まあいいですけど。先輩たちこの前の土曜日スーパーにいたでしょ?」
「いた。あの日大変だった」
キュヒョンが答える。
「すごい目立つ三人がいたから、みんな見てましたよ。なんか卵の前で叫んでたでしょう?」
俺とキュヒョンが思い出すように視線を上にした。
「お前だろ」
キュヒョンが俺を見る。
「お前じゃない?」
「いや、それはいいんです。それで、もう一人俺と同じくらいの背の人いましたよね?」
俺がまた視線を上にして、キュヒョンを見る。
「いたっけ?」
「いただろ」
キュヒョンが正面を見ながら呟く。
え、ああ、ユノ?確かに同じくらいか。
「あの人、うちの学校の人ですか?」
「違うよ。老けてるでしょう?」
「散々だ」
キュヒョンがまた呟いた。
「老けてないですよ!それで、俺、映画の連中と一緒にいたんですけど、
知り合いならあの人の連絡先聞いてほしいって言われて。作品に出演させたいみたいで」
「ほお」
隣で声が上がる。
ユノをか……。それはどうかなあ。
只今12時2分(ユノの退役まで457日)