夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「台風一家 2」EXOの短編

*1から続きものです。




「あなた!この口紅なによ!」


「いや、だからそれは」


シウミンは、両手を掌を見せるように突き出し、白いワイシャツのまま、下もスラックスで妻を見上げていた。
真夏日に、早く着替えてシャワーに直行したいのはやまやまだが、許されなかった。
かれこれ、一時間はこの状態だった。


「これ、あの人でしょ!」


妻のスホが、目ざといことは分かっていて、気を付けていたのに、やられたのだ。スナックのリョウクちゃんとは、三年ほど前に一度、体の関係を持ってしまった。酒のせいにしたが、妻に飽きが来ていたのは事実で、つい出来心で、ホテルに行ってしまった。
関係があったのは一度きりで、リョウクちゃんから何度か連絡があっても断っていた。そのメールで妻に気付かれ、洗いざらい白状し、数か月かけてやっと許してもらえていたのだ。
が、昨日は接待で、先方に指定されたのが偶然にもあのスナックだった。二年近く音沙汰なかった相手も驚いていた。
浮気と言われることはしていないが、チークダンスの時だな、とシウミンは苦い顔をする。まだ自分のことを想っていたか知らないが、気付かずに口紅のつけられたワイシャツを妻に渡してしまい、今日、会社から帰ると鬼の形相で迎えられた。


「スホ。落ち着いてくれよ」


「これが落ち着いてられますか!チェンは来年受験なのよ!そんな時にあなたって人は」


怒りながらも、妻は律儀に夕食を作り、ピンクのエプロンをしていた。


「違うんだ。本当に何もないんだよ」


「ばか!ばか!安月給!」


わあっと妻が泣き崩れる。シウミンは、濃い眉を下げ、身長もあってか年齢の割に幼く見える外見で、落胆した。


「信じてくれよ。お前のこと愛してるよ。もうチークダンスもしないから」


「信じられないわよ!」


「どうしたら、信じてくれるんだ」


「ママ!もうやめてよ!」


シウミンが顔を上げると、ダイニングのドアが開いていて、今年6歳になるチェンがいた。チェンより幼い他の子供たちも心配そうに後ろで身を寄せて見ている。


「パパを許してあげて。ぼく、今日はじめて暴風を出せたんだよ?パパの分、ぼくが頑張るから、ママ喧嘩しないで」


「チェン……」


いつの間にか頼もしい顔になっている自分の子供をシウミンは見つめた。妻のスホも、振り返って背後の我が子を見ていた。


「スホ」


シウミンが声をかけると、濃い目元を涙で濡らした妻が自分に向いた。


「俺にはお前と、この子供たちだけだよ。信じてくれ」


「あなた……」


泣き止んだ妻が、ふと笑って、「分かったわ。ご飯にしましょ」と立ち上がった。シウミンも続いた。


「やったあ!」


廊下の子供たちの歓声が上がった。チェンも口角の上がる口元に力を入れて両親を見上げる。


「ぼく、受験も頑張るよ!降水確率ももっと上げて見せるから」


涙を浮かべて頼もしく成長した我が子をシウミンとスホは、肩を寄せて見守っていた。







つづく





*終わりの登場人物紹介



台風・シウミン―法人営業職。妻のスホとはバレーボールの社会人サークルで、一目惚れし、交際に発展。結婚は押し切られたに近いが、財布にはいつも妻の写真を入れている。珈琲を飲むと、何かを思い出すような気がする。
台風・スホ―口癖は、「多数決を取ります」。ロースクールに行き、国家試験にも合格したが、気が変わり花屋になろうとバイトを始め一年目に結婚。妊娠と同時に専業主婦に。
台風・チェン―夫妻の第一子。アヒル口の真面目な保育園児。小学受験が控えている。
その他の子供―夫妻にはチェン含め七人の子供がいる。うち四人は四つ子。

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