「台風一家 4」SHINeeの短編
*1から続きものです。
「あなた。今年はハワイが良いかしら?」
「そうだなあ、最近寒いところばかりだったしなあ」
ミノはばさりと新聞を拡げ、妻の入れてくれたモーニングコーヒーを一口飲んで、ぎょろりとした目を丸くさせた。
「ん?豆変えたね?」
「そうなの。ブルーマウンテンがなかったから、あそこのブレンドにしたわ。どう?」
「これはこれで美味いね」
「あら良かったわ」
大きなダイアモンドの光る指輪をつけた指を伏せて口元に手をやり、おほっと笑った妻のキーにミノはうんうんと頷いて、また新聞に目をやった。
妻はいつものようにファッショナブルなドレスを着て、膝の猫を撫でている。
「あなた。そう言えばうちの子、あの家の子と最近遊んでるみたいよ」
「ん?どの家の子だ?」
ミノは町一番の歯医者だ。学校には殆ど出張しないが、町の子供たちは大体自分が見ている。
「子供が沢山いるお宅よ」
「ああ。じゃあ、キュヒョン君か」
「そう、その子!うちのテミンが!」
「なんだ。嫌なのか?」
「嫌よ。あの子うちの猫あんまり好きじゃなさそうだったの」
気に入らないとばかりに妻はそっぽを向いた。
「そんな理由か」
ははっとミノは大きな口をぱかりと開けて笑ってから、また紙面に向いた。
「あの子は確か、暴風出してたな」
「うちの子は高い降水確率が出せますよ」
「まあまあ。動物が苦手な子もいるさ」
二人が話していると、おはようお母さん、お父さんと一番上の子が部屋に入って来た。キーは猫を下ろし、立ち上がって自分の子供の髪を手で梳いた。目鼻立ちがくっきりとした子は、されるがままになっている。一人いるメイドがオレンジジュースとトーストなどの朝食を運んできた。
「ありがとうございます」
そう言って、子供は食べ始めた。
「そうだ。お母さん、お父さん。昨日、僕、逆巻きにしたんだよ」
「ほお。逆巻きか」
ミノは新聞を置いた。
「どうだったの?」
妻も側に立ったまま尋ねた。
「未知の感覚って感じ!」
大きな眼を開いて、顔を輝かせた我が子に、「まあ、この子ったら」と母親は笑い、ミノも「そうかそうか」と笑った。
「テミンまだ寝てるのかな?」
「そろそろ起こさないとね。今日は朝からあの子、強風を作るのよ」
キーが、部屋を出ると後を追うように猫もついていった。
「本当に可愛いわ、オニュ」
足元にすり寄って来る猫を抱き上げた母親の後ろ姿を眺めながら、子供がミノに向かって言った。
「お母さんて、子供よりオニュが好きなのかな」
「お前達は分からんが、父さんよりも猫が好きだろうな」
あははと笑う一家を夏の日差しが窓から照らし始めている。
つづく
*終わりの登場人物紹介
台風・ミノ―町一番の歯科「シャイニー」を経営する。白く輝く歯がモットーであり、町の人々の歯は彼のお蔭でいつも輝いている。妻のキーとは再婚。出会いは海外の学会中に、スイスのある歯科助手だったのがキー。嫌いなものはステイン。
台風・キー—大学の専攻は歯学部。留学後も、ワーキングホリデーでスイスで働いていた。ミノとは結婚後、専業主婦に。子供たちと愛猫「オニュ」に夢中。歯医者の腕はミノよりあると言う噂も。
台風・ジョンヒョン―都合上、名前が本編で出されなかったミノ・キー夫妻の第一子。目鼻立ちがはっきりしている。
台風・テミン―ミノ・キー夫妻の第二子。近所の子供「台風・キュヒョン」と遊ぶようになった。
台風・オニュ―キー夫人の可愛がっている猫。好きなものは「カナガン・キャットフード」とマグロの刺身。