夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「ねえ、俺のこと愛してくれる?3」ヨンファ ジョンヒョン CNBLUEの長編

               



酷い話だ。俺が死ぬとか、本当にやめてくれ。
でも、言っていたよな、穴が開くほど俺を見てくるこの悪魔は。
「なに……?お前と、恋人?」
嬉しそうな笑顔で、また人間っぽくなる。
「そう、良い取引でしょ。大丈夫、ヨンファの心はいじらない。ヨンファは彼女がいるよね?一か月だけ我慢して、俺と恋人のふりをすれば良いよ」
俺は眉を寄せて、まじまじと目の前の悪魔の笑顔を見つめた。
「恋人の……ふり……ってどこまで?」
「キスとか、色々っ」
顎を引いて、上目遣いに白い顔がちょっと厭らしくはにかんだ。
何言ってんだ、こいつ。
でもこいつ、本当に俺に欲情してやがる。
まじ?
俺、悪魔と色々すんの?どう見たって、お前、男の身体してるんだけど。
「これ、夢じゃないんだよな」
「うん」
無邪気な返事しやがって。男がそんなのしても可愛くねえんだよ。
でも、俺には、選択肢がもう。
真夜中の自宅のリビングで、恐ろしく切れ長の目と見つめ合う。後ろの黒い羽より、この白さと、その眼が、現実感がなかった。
「……ことわったら俺死ぬの」
「うん」
微笑んだ顔には、俺が可哀想だとか、そんな憐みは一切感じられない。自分の恋心を満たせたら良いだけの、軽い気持ちでここにいるのが十分伝わった。確かに、こいつは悪魔だ。
これは現実で、自分はあと一か月で死ぬのだろう。
「一か月間、俺の生活はどうなるんだ?」
「何も変わらないよ。仕事すれば良いんじゃない?ヨンファ忙しくて大変だね」
他人事感半端ないな。
「お前はどうするの?」
「ここに住むよ。恋人だから」
そう言って、キッチンを背にして、伺うように、答えを待っている。
彼女とも同棲なんかしたことないのに。
男みたいな悪魔と、一か月、なんか色々付きの生活を送るなんて。
そんなの……ねえ、信じられる?
でも、死ぬより良い。答えは、簡単に頭に浮かんだ。
「分かった」
俺が言った瞬間、電気が消えた。暗闇の中、表情をなくした目の前の男を、その体を包みながら、青色の煙が、自分達の足元に流れて渦巻いていく。特殊撮影じゃないよな。ドライアイスを使ってもこんな。
部屋中に拡がって、もう腰まで大きな渦に巻かれて行く。気体の奥から稲妻に似た光が漏れている。息が出来なくなりそうで、怖くなって、男を見た。色素の薄い瞳は、暗闇の中で殆ど金色に輝いている。
「契約は、交わされた」
ヨンファ。と、鼓膜が振動するのが分かるほどの不思議な声が、耳元で囁かれた。
恐怖と混乱は、人の動きを止めることが分かった。身じろぎもできない圧迫感の中、青色の気体は元々存在なんてしなかったくらい綺麗さっぱり何もなくなった明るい部屋で、正面から何かに抱きつかれていた。
圧迫感はこれかよ。
「恐かった?」
また耳元で囁かれて、ぎゅうっと抱き締められる。
「苦しいよ、離れろよ」
自分よりたくましい腕に抱かれるなんて、信じられないと言うか信じたくない。
「だめだよ、恋人なんだから」
全く離してくれず、暑くて室温調節しようと思いながら、気付いた。
部屋から、自分を抱きしめている男の方に視線をやる。肩口と茶髪の白いうなじしか見えない。でも伝わって来る、熱さ。室内と混ざった匂い。何も生えていない背中にも、筋肉がついていることが分かった。
「ヨンファ」
力をゆるめて、顔を覗き込んで来る。変わらない恐ろしく切れ長な目。だけど、嬉し気に微笑むと、端正とは言えない顔になる。
躊躇いもせず唇を塞がれた。
「少しは遠慮しろよ」
速攻離しながら感じた、温かな唇。体温。これは、悪魔って言うより、人間の男だ。



ーーその時、俺の運命が変わったことが、どこかで分かった。






つづく

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