「This is love comedy.24」ユノ×キュヒョン
会わないで、全くお金をかけずにすむ方法。
つまりは、やるなってことと同じだけど、もしできたとしてもこれなら俺の心配は大分軽減されるはずだ。
何を考えているのか、あれから何の連絡もなく、
なのに自分が誕生日をこんなに意識するのも初めてなまま、
前日の今日、予定通りドラマ撮影は深夜まで続きそうで、明日も早朝から再開だった。
夜になると、ことさら寒くなって、そんな中、野外ロケだった。
裾の長いダウンジャケットでも到底寒さは防げるわけもなく、移動車の中で待機しながら、何気なく携帯電話を手に取る。画面を見てもキュヒョンからは何も連絡はなかった。
「まあ、良いんだけど」
呟いてから、ふと隣を見ると、一緒に画面を覗き込んでいる人間がいた。
携帯電話を落としそうになって拾われる。
「女子からのメッセージばかりですね!」
「お、お、お、お」
腰を抜かした。
「ユノヒョン驚いてますね!俺も死ぬほど寒くて驚きです!」
隣に座って嬉しそうに言われる。俺は座っていながら腰を抜かしている。
「お、お、おい!」
飲み物を買いに出て行ったマネージャーかと思った。
「あ、この可愛い子誰ですか!怪しいです!」
勝手に俺の携帯電話をいじって、口をへの字にしている。
「ユノヒョン!誰ですか!」
それは俺の妹だけど!そうじゃなくて!
「ユノヒョン!」
「ま、まて。落ち着け」
落ちつけ俺。俺の反応を見て口を尖らせてくる。
「……それは妹だ」
俺の言葉に、こちらに向けた画面を見直して「あ、本当だ!」とキュヒョンはまた笑顔になった。いや、でもそうじゃない!
「お、お前仕事は?」
「一時間休憩に入ったのでタクシーで来ました!」
笑顔のまま言われる。
確かに今日の現場は比較的近い場所だったけど。それでも!
「会わないって言っただろ?」
聞けよ。
人と話している時は携帯やめなさい。ってしかも俺のだしな!
中身を全部見るつもりなのか手慣れた様子で操作しながらキュヒョンが平然と言う。
「ユノヒョン、誕生日いつですか?」
なんだ?
「明日だけど?」
「じゃあ」
言いながら、見終わったようでこちらに渡して来て、受け取る。
「今日は誕生日じゃないので会ってもいいですね!」
と、満面の笑みでキュヒョンが続けた。受け取ったのを脇に置きながら、片手で目を覆った。
「嬉しいですか!ユノヒョン嬉しいですか!」
両手で顔を覆う。
「ユノヒョン!嬉しいんですね!」
溜息を吐きながら、覆っていた両手を下げて、そのまま顔の前で手を合わせながら隣を見た。
キュヒョンが目を輝かせてこっちを見ている。それを見ながら言った。
「嬉しいよ」
そう言うと、キュヒョンが瞬きした。どうやら思っていた答えと違ったらしい。
「嬉しいけど、」
と、続ける。
「休憩は取れよ。身体が休まらないだろ」
そう言って、やっぱり疲れがたまっていたのかぼんやりしたキュヒョンの背中を二度さする。まったく良く変わる表情だな。
まさか本当に来るとは。その徹底ぶりに感服する。
「今マネージャーが飲み物買って来ると思うから、飲んで」
多分、距離的にそれで時間が来るだろう。
「ユノヒョン」
「ん?」
ぼんやりした顔に不安そうな陰が混じる。
「もう、ユノヒョンが見に来てくれる日まで本当に会えなくなりますよ?」
なんだ良く知ってるな。俺のスケジュールを。
「そうだな」
来週から俺は海外だしな。さすがにこいつも休憩時間に来るのは無理だろう。
「だから」
と、言って黒い瞳が見つめる。
つづく