夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「First dreams1」チャンミン×ユノ


……初めて見る夢を教えて。



目を開けると、ユノはゆっくり瞬きをする。目の汚れでかさついた目蓋が上手く動かなかった。
誰かの声を聞いた気がした。でもそれが本当か、確かめるのに少し怖い気がして、そのままにしている。怖いとは思いたくないので、もう一度眠りに落ちようかと思う。
けれど、動悸がした。
これは、夜が明けていない。
墨につけられた視界の中、思う。
寝なければいけない。
なのに、動悸がして寝られない。もしかすると、目を開けているのは真実を確かめたいからかもしれない。そんな、まどろっこしい客観視で逃げている。逃げていることを自覚している。頭は明確に起きている。
もう一度、誰かの声を思い出した。
その言葉と一緒に、さっき自分が見た夢は何だったろうと思う。
とても悲しい夢だった気がする。
足を掴まれて、引きずり落とされる。これは奈落の底なんじゃないかと思うほど、地に足がつかない。掴まれた足首は離されない
けれど、視界はとても綺麗だった。
桃色の綿あめのような中に包まれている。金銀の紙吹雪のような四角のものが沢山舞っている。
時々、自分を褒めてくる物が出て来る。でもそれが何かは分からない。そして、そのどれも掴んで、食い止めることができなかった。落ちることを。
とても綺麗なものから遠ざかっていく気がする。その視界は絶え間ないけれど、悲しくて仕方がなかった。
けれど、気丈に振るまなければと思う。
それが更に悲しさを増した。
そして、着地も覚えずに、夢のほとりでユノは目を開けた気がする。
しかし、この、夜の闇の方がよほど心細かった。
現実感の怖さは非じゃなかった。
ベッドの上でユノは息を飲み込んだ。
この部屋は自分の部屋じゃなかった。
夢よりも鮮やかな感情がフラッシュバックして束の間、目頭が熱くなる気がした。けれど、その波は引いた。
誇りが少しと、大きな諦めからだった。でも、諦めなくても良いことも知っている。諦めることから逃げていた。
なぜなら幸福をそこに覚えていた。
借りた部屋着を着ている自分と、その唇の感触。



「起きてますか?」



動く気配がしたから、分かっていたけれど、背中で言われてユノは返事をしなかった。
寝る前、「逃げている」と通告されてしまった。いつの間にか肩を並べられてしまっていて、これでは、いつか来ると分かっていた。でも逃げるしかないと思っていた。
気付いている自分が同じだと気付いたままにはしてくれなかった。
正直で、いつでも何かを捨てる覚悟が出来てしまっている。その成長と達観が、いつの間にか、自分の心を掴んで離さなかった。言うなと言っても、限界だと言われたら言葉を失くしてしまった。
兄弟のように、一緒に仕事をしてきた相手の男に。



「今年、初めて見る夢を教えて」



とうにあった真実が露呈した真夜中に、幸せそうにキスをされた。
これからは、逃げることから、逃げられないだろう。自分もこの幸福感に、目を瞑ってはいられない。だってこれしか方法がなかったと、ずっと言い訳をする。
もう方法はなかったから、


「夢見たよ」


目を開けている自分が返事をするのを、待ち続ける男にユノは振り向かず答えた。
それしかないと分かっている、笑うこともなく、怒ることもなく、哀しむことこともなく、ただ待っている男に。



「チャンミンは?」



振り向くと、やはり想像通りの、穏やかな表情で見ていた。



「覚えてないけど、これが夢だと嫌だな」



背の高い自分よりも大きな背の男に抱き締められながらユノは、さっきの夢をその耳元で語る。


桃色の綿あめが、拡がった視界の中で、金と銀の紙吹雪……


唇を動かしながら、この続きを忘れてしまっている。悲しい夢はなくなって、視界には、逃げられない幸せな現実が続いていた。











『First dreams1』チャンミン×ユノ







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