夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「元カレと不倫したらどうなるの? 1」チャンミン×?

※二次BLです。何でも大丈夫という方のみご覧下さい。2話目以降はAmebaブログで上げるのでございます。ちなみに当管理人にはこういう願望は一切ございません。










風の凪いでない海。


水面は小さなとがりだけを無数に見せて、生物の気配さえない。


温和な海。


空に上る太陽は陽光を博愛的に浴びせる。偽善的とも言える。だが、それに甘んじている。


全てに調和がとれている。何の不安があろうかと。何を恐れることがあろうかと。それが日常だと思っている。


それが日常だと言い聞かせている。





自覚はないが、大きな手である。シム・チャンミンと言う男は大体が大きい。それは自覚があった。身長は頭一つ分飛び出ている。目は女のようだと時に言われる。睫毛が多く、良く開き、顔面に対して割合が高いそれば、光を良く反射する。唇は良く横に伸び、鼻は高すぎることはないが、主張はある。規格が同じことが功を奏しているのか、良い顔立ちだった。芸能界に身を置いて長い。韓国のアイドルをやっている。はじめは五人だったのが、今はわけあって二人になった。だが、それはどうでも良かった。今までの貯えを一部崩して購入した、これまでの彼の住居で一番洗練され、広大な部屋。集大成ともいえる高層マンションの窓からは、ソウルの街が遥か下に一望できる。そして、曇り一つないシステムキッチンには美しく若い妻が料理をしている。チャンミンは、三十四才だが、妻はまだ二十代だった。韓国では芸能人でも関係なく課される兵役も済ませ、年齢からアイドル業も落ち着きを見せ、知人の紹介で出会った美しい彼女と結婚し、そろそろ床暖房が効き始めた室内には、今年増えた家族がベビーベッドの上で、手足をばたつかせている。チャンミンの座るソファーからはそれらが全部見渡せた。
温和な海だ。
恵まれた自然には、不自然がない。
ただ、その全ての景色以外に、先程見たスマートフォンの画面が彼の目からなかなか消えない限りは。
普段は考えていない。きっかけがあったとしても考えないようにしている。だからすぐに自然に溶け込み、この海の一部となっているはずだ。紺碧の水面に明るい太陽が浮かぶ。のどかな風景は確かにそこにあるはずで、この残像もいつかそこに消えて行く。
チャンミンはそう穏やかな海を眺めたのち、とりあえず返事をしようと、手にしていたスマートフォンを再び見下ろした。はるか昔、練習生だったころの仲間が、チャンミンの住むソウルに遊びに来る。久しぶりの飲み会のようなものだ。
視線を走らせる。
艶やかな長い黒髪が、肌の色と対照的でその空間だけ不思議なコントラストを描いている。
女性の持つすべての可愛らしさを体現している。かげりが見えはじめた男の肌を潤してくれるかのように若く、陶器のようにきめ細かい肌。美しい顔。折れそうに細く、現実感のない体型。はじめて目にした時から、雄の本能が駆り立てられた。話してみると性格も面白くて、年の差を感じなかった。恋に落ちた。本当に愛はある。
だから目の奥には何も浮かんでいないはずだ。
この穏やかな日常だけが永遠に焼きつかれ、消えないはずだ。
スマートフォンのメッセージに羅列された名前みたいな些細な風景は記憶にも残らない。
そう言い聞かせながら、チャンミンはまた手の中のスマートフォンを見下ろした。飲み会に来るメンバー一覧がメッセージのグループになって表示されている。
その中に、自分からはできるだけ連絡を取らないと決めた人間が一人だけいる。
兵役期間がかぶり、所属する部隊も一緒だった。
そして、事務所も同じだった。
あれから何度も会っている。仕事も同じアイドルならば、自然と会う機会は多い方だ。
互いに避けてはいない。それは不自然だから。
穏やかな海に溶け込むことを願っている。
いつか自然に。
いつか自然に。
そう言い聞かせて、その名前を大きな瞳で凝視しているのだ。







つづく

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