「Kiss me,baby.4」ユノ×チャンミン
だめだ。逃げなければ。
「やっぱり可笑しいと思うんですよね。男同士だし、あ、あれですよ?そういうのに偏見があるっていうのでないんですけど、自分がその立場になるとちょっと違うっていうか、大分違うっていうか、本当に違うっていうか……それに、俺達もう長い付き合いじゃないですか?なんてゆーのかな、家族みたいなものっていうんですか?そういう」
「チャンミン」
呼ばれて思わず手に持っていたリュックをその場に落として、
こめかみに指をつけて、ぶつぶつ言う俺の前に、ユノが歩いて来る。
俺は視線を下げたままそれを目の端に入れて、後ずさりしながら言い訳を続ける。
「ほら、やっぱりこういうことを、遅刻するしないで決めるって言うのはどうかなって。こういう行為って神聖な」
頬を染めていたユノのはにかみが、苦笑に変わったのが分かる。
「チャンミン」
控室のドアに背中がぶつかった。
「ヒョン、なんかさっきのうるうるした感じとちょっと雰囲気違いますね、はは、こんな時に昔に戻るのやめて下さいよ、そういう男っぽい感じはちょっと怖いです」
ユノがいきなり距離を縮めた。
「お前も男だろ。諦めろよ」
目の前で、昔のユノが俺の顔に顔を重ねた。
触れてもないような空気みたいなキスが、
唇をかすった。
静止して、俺は瞬かせる。
少し、身長は俺より低いユノが、体を離す。
「やったー!チャンミンとキスした!」
ユノが後ろを向いて両手をあげて万歳した。
「あ……」
凍った体が溶けたように、声を出しながら俺は視線を泳がせる。
手を思わず自分の口元に持って行こうとして止めた。
本当に触れたのか、確かめたくなるような変なキスだった。
「嫌だった?チャンミン」
ユノが少し首を傾げて俺を伺い見た。
「はあ。嫌ですけど」
「あれで嫌だったの!!」
目を見開いて信じられない顔をした。
俺はユノとキスをしてしまったことと、その変わったキスに混乱していた。
「いや……まあ、あれくらいなら」
「いいんだ?」
ユノが顔を赤らめて上目づかいで見た。
「いいわけないでしょ」
俺は自分を落ちつかせるように息を吐いた。
ただ、あまりにも微かだったから。
あんまり実感がない。
でも、どうやら無事にことはすんだようだ。
握った手を縦にして、口につけたユノが可笑しげに言った。
「チャンミン、すごいほっとした顔してる」
「はい、死ぬかと思いました」
「酷いよ」
と、言って楽しそうに声を出して笑う。
それは、まるで今キスしたなんて思えないほど、また俺の知ってるユノだった。
つづく