「夢の続き74」ユノ×チャンミン
「プリムローズはどんぐりコーヒーを飲んで……」
俺は天井を眺めている。
「そこにウィルフレッドがやってきました。……プリムローズとウィルフレッドはさっとマントをぬぎすてて、ぼうしをひらひらとふりながらかぶりました」
一時間後。
「プリムローズはどんぐりコーヒーを飲んで……。……そこにウィルフレッドがやってきました。プリムローズとウィルフレッドはさっとマントを」
二時間後。
「プリムローズはどんぐり」
「ユノさん」
「あ、なにチャンミン?」
俺は天井を見ながら、恐らくこちらに向いた隣のユノに話しかけた。
「もう寝る時間なんじゃないんですか?」
「え、まだ大丈夫だよ。眠くないよ」
「そうですか。でもユノさん」
「なに?チャンミン」
「それ、…………読み過ぎじゃないですかね?」
図書館で絵本をかしてもらった日から、ユノは四六時中それを読んでいた。
確かに挿絵も緻密で話も微笑ましい良い本だ。
でも俺は一日で読んでしまって、その時もユノが隣で読み聞かせるように声に出していた。
どうやら無意識に声に出して読んでしまうらしい。
「え、そんなに読んでるかな?」
「かなり……キてると思いますけど」
「そう?でもこの話すごくいいから!」
「良いのは分かるんですけど。もうプリムローズとウィルフレッド聞き過ぎて、その野ねずみが俺の生活のメインキャラみたいになっているんで、せめて声に出さずに読んでもらえませんか?」
「あ、そうか!ごめんごめん」
ユノが笑ってから、また多分顔を絵本に向けて、読み始めた。
「……この本かしてくれた人、良い人だね」
ユノが思い出したように、呟いた。
「そうでもないですよ」
返事をしながら目を閉じる。
俺は、この数日ユノより先に眠気がくる。
三十分後。
「……そして、プリムローズはどんぐりコーヒーを」
「あの、ユノさん」
只今22時35分(ユノの退役まで411日)