「チャンミンくんの恋人29」ユノ×チャンミン
迷彩服のユノとハイタッチをした。
と言っても、手をあてられた時に音さえ出なかったけれど。
「おい、そろそろ水泳しないか」
後ろから来たマネージャーがテレビ画面を見ながら、珈琲の入ったマグコップを持って隣に座る。
ソファーの上で薄いパーカーとハーフパンツの俺が、「次のセーブポイントまで待って下さい!」と、コントローラーを両手に握りしめたまま言うと、「頑張れ!チャンミン!」とローテーブルの上で相方が叫んだ。
画面の中では敵地に潜入した戦闘員が姿を隠しながら移動している。
さっきは上手くいったけど、いきなり難しくなった。
「あ、やべ」
警報の効果音が鳴り始める。
敵に見つかって走った。
「マンホール!マンホール!」
相方が言うけれど、そこはだめだ。
「これ敵倒せないのか?」
「そう言うゲームじゃないんですよ!」
マネージャーに言いながら、俺は何とか敵を避けて行く。
「ダメだって!チャンミン!」
「うるさいな!」
「左下になんかあるぞ」
「それは後で取ります!」
ヒットポイントぎりぎりでセーブポイントに到着した。
「やった!」
ユノがガッツポーズをとった。
「セーブできたのか?」
「できました」
ほう、とみんな息を漏らす。
ユノの水泳を眺めながら、今日の夕食は何がいいか三人で言い合った。
「じゃあ頼むよ、チャンミン」
「はい」
マネージャーが事務所に報告に行きがてら夕食を調達して来てくれる。
「ユノ、ちょっと休憩したら?」
ずっと泳ぎ続けるユノに、俺は椅子に座って言う。
「まだいいー」
昼下がりの時間が過ぎる。
映画をテレビで流して、たまにそっちに集中して、やばいとユノを見ると笑ってこっちを見ていたりする。
「チャンミン。なんか浮かぶの入れてよ」
「はいはい」
おもちゃをたまに放り込んだして、あっという間に夕方になって夕飯と共にマネージャーが帰宅した。
「綺麗ですね」
早めに風呂に入ってから、外のものに触れたいだろうからとマネージャーが買って来た一輪の葉つきのピンクのチューリップを、花瓶は倒れたら危ないからガラスコップに入れて、ダイニングの床の上で見る。
パジャマ姿のユノが花に手を伸ばすけど届かないから、俺がコップから出して向けた。
「花粉吸わないで下さいよ」
「うん」
頭がそのまま食われそうな花の中を覗いたり、花弁に頬をすり寄せた後、胡坐をかいて片手でそれを持っている俺を見上げる。
「新感覚」
「良かったですね」
部屋から戻ったマネージャーに「そろそろご飯にするか」と声をかけられると、
花弁に口づけて、
「じゃあ水に入れよう」
と言ってユノが微笑んだ。
風呂から上がって、俺のベッド側のデスクの上に花を置いた。
ついでに窓を開けて換気すると風が入って来て気持ち良さそうにユノがベッドの上で目を閉じている。
「風邪引くから閉めますよ」
「もう?」
「また明日」
そう言って閉める。
ユノが手を伸ばしてくるから、ああいう風にされてるんだろうな、と横目でチューリップを見ながら俺の唇にキスしてくるユノのビジュアルを俯瞰で想像した。
キスした後のユノは少し俺を見つめて「おやすみ、チャンミン」と、横になってタオルをかけた。
「おやすみなさい」と言って自分もベッドに入った。
つづく