「チャンミンくんの恋人36」ユノ×チャンミン
「じゃあ、見ますよ」
「うん」
俺のTシャツの腹で座っている、ハンカチ姿のユノが答えた。
俺はベッドの頭に背凭れて、画面を開いた。
ユノの私用の携帯電話だった。
見たいと頼まれたから、部屋から持って来た。俺は気づかなかったけれど、ユノはずっと気になっていたはずだった。
開くと、100件以上のメッセージが入っていた。
ユノは全部を開いてとは言わなくて、「それ」と言われたものだけを見て行って、返事を俺が打った。
全て友人のようで、いつも返事が早いのか、指定された人たちは殆どが心配していた。
「ちょっと忙しかった」とか遊びの誘いには、「忙しくてその日はだめそう」と打って返していく。面白い内容には、ユノと笑いながら返した。
全部打ち終わって、大分時間も経って、
「もういい?」
と聞くと、「うん、ありがと」と言ってユノがこちらを見上げた。
俺の顔をじっと見つめて、
「チャンミン、俺をデスクの上に置いて」
と言った。
言われた通りに立ち上がって、携帯電話とユノを一緒に置くと、両手を伸ばされる。
俺は少し息を吐いてから顔を近づけた。
「チャンミン」
俺の頬に両手を広げてまとわりついてきた。
「はいはい」
返事をする。
頬に毛先のようにユノの髭があたる。
それから多分、頬に口づけられているなと思った。
でも俺は何も言わなかった。
ユノは自分は一人だと言った。だけどこんなにもユノを心配してくれる人達がいる。でももしかしたら、さっきのはユノにとって、何かの覚悟だったのかもしれない。
これからどんどんと世間に出て行く、何かの覚悟の中に含まれた、決別の用意。
こんなユノと対面する日が来るとは。
俺に縋って、甘えている。全身で寂しいと言っていた。
ユノが俺の顔の前に来て、唇に口づけた。
小さくて、近くて、顔は見えない。でも長く口づけていた。
ユノが顔を上げて、少し離れると俺を見つめる。
切なげに見つめて来る。
もし、本当に自分の恋人なら、何でそんなに小さいのか。
いや、ユノが小さいからこそ男同士でもこうしているし、こうしていられるし。
思考の暴走が始まる前に、
「寝るか、チャンミン」
と、にこっと笑ったユノに止められた。
そう。始めなくても大丈夫。
自分達は一緒にいる。
つづく