夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Kiss me,baby.3」ユノ×チャンミン


もしかして俺はこの先、ユノに、本当にキスをされてしまうことがあるのではなかろうか。



俺に不安をよぎらせた。


いやいや、絶対にない。そんなことはあってはならない!


「言っときますが、ヒョン。俺は絶対に遅刻しませんからね」


「この世に絶対なんてないんだからね?チャンミン」


恋の力で瞳孔開きっぱなしのユノは、もう人がいなくなると俺の顔を見つめて、


ため息交じりだ。


そんなユノに念を押した。


「……いえ、遅刻だけは絶対にしませんから」


「……」



でも、遅刻した。



「いやー。この道は混むからなー。ま、五分くらい、どうってことない」



俺のマネージャーが運転席で腕時計を見ながら、呑気に言う。


「ヘリを!!ヘリを呼んでください!!!」


「チャンミン無茶言うな、あと200メートルだぞ。大丈夫だよ」


「だめだ!五分なんて遅刻絶対だめだ!!!」


「はは。チャンミンの仕事に対する熱意には頭が下がるな」


遅刻するなんて!!


なんてことだ!


そんなこと!そんなことあるわけないのに!!!


俺は頭をかきむしる。


「……いや」


ユノのことだ。俺が真剣に許しを請えば、何とかなるかもしれない。


だって、俺は、年下だし、ずっと一緒にやってきた大事な仕事相手だぞ。


それになんてったって、こんな馬鹿らしいこと。



控室に入ると、キラキラさせた目のユノが俺を待ち受けていた。


俺は既に、諦めが入った。

でも頑張る。


「あの、ヒョン。やっぱりこんなことは」


「……チャンミン」


ユノが俯く。


あれ、やっぱり不憫に思ってくれたかな?


「ですよね!ヒョン」


頬を染めたユノが顔をあげる。



「遅刻、しちゃったね!チャンミン」



にこっと笑った。



「……」










つづく








「ジル・ド・レの住んだ町4」ユノ シウォン チャンミン キュヒョン

キュヒョンは手に持っていたグラスを落としそうになって握りしめる



「みなさん、楽しんで頂いておられるでしょうか……」



注目を引くための合図も必要ない。
この三人が入ってきた瞬間、全員が彼らに向いた。
城主が話し出した台詞はキュヒョンの耳には遠く聞こえた。



なんてきらびやかな三人なのだろう。



この時代、フロックコートと言った色の地味な上着に、白いシャツ、ぴったりとしたズボンが男性の普段着だった。
その普段着もチャンミンは、キュヒョンのそれとは大分質の違うものを着ていた。
キュヒョンは仕事の邪魔になるのと、汚したくはないので上着もほぼ着ない。


けれど今、キュヒョンの正面にいる、夜会用に身なりを整えたチャンミンは、
いつもと格違いに、誰の目から見ても、完全な「貴族」だった。
そして、王座で立つ男と、少し離れた場所で、ひっそりと立つチャンミンの隣にいる男は、その友人に輪をかけて高価な見た目の服を着ているのだ。
外見も麗しい。
チャンミンには及ばないが背が高く、とても顔立ちが整った二人の男。


でも、その見た目だけではない。
何か人を引き付ける、
足元をすくわれるような、
ともすれば、引きずり込まれるような、空気をまとっているのだ。



方々から、うっとりするような溜息が聞こえた。
キュヒョンは信じられない気持ちでその光景を見つめる。
その奇怪な魅力のある男たち二人だけでも十分、キュヒョンはただ事でない何かを感じたに違いない。
けれど、それに加えて、自分の友人までも彼らに交じっているのだ。
離れて立つ本人にはそんな意識はないのかもしれない。
そう、もう一つキュヒョンを信じられない気持ちにした理由は、
恐らくチャンミンには、周りが見えていないくらい、
あの城主の話を本当に聞いているのか分からない、興味なさげに薄笑みを浮かべている、隣の男を気にしていることだ。
隣の男。
キュヒョンは、目をそらした。
なぜだか見てはいけないような感じがした。
そんな中、城主の挨拶が終わった。
もう閉会の時だ。



呆然としているキュヒョンに、背の高いチャンミンが気づいた。
安堵した様な笑顔を見せながら、
すぐさま「失礼」と会釈しつつ、人込みをかき分けて向かって来る。
一斉に広間中の目がキュヒョンに向く。今この状況で自分を見られるのか、と思わず視線を下げた彼に、ほつれた長い糸が目に入る。
せっかく友人が向かって来るのにと思いながら、キュヒョンはいたたまれない、逃げ出したい気持ちに駆られた。
けれど、こちらに気付き、急いで来る友人に、
彼は待つことしか出来ない。


「遅かったな」


いつものように少し不機嫌そうに言いながらもチャンミンは嬉しさを隠せない笑みを見せている。


「悪い……」


周りの目を気にして、キュヒョンは視線を泳がせた。


「今日はこの後うちに来るか?」


チャンミンはあまり飲んでいないのかもしれない。
見ると、全く酔っていないように見える。けれど、頬が上気している。
キュヒョンは思いながら、


「あ……今日はやめとこう。記事を書かないと」


と、事実そうだったので、首を振ると、チャンミンは少し落胆の色を見せた。
それに罪悪感を感じながらも、キュヒョンはまだ目の前の友人を信じられないような顔で見て聞く。


「明日行かせてもらうよ。それより、チャンミン……彼らと仲良くなったのか?」


隣にいた男、あれは、恐らくもう一人の城主だ。
キュヒョンは分かっていた。


チャンミンが目を瞬いてから、一瞬頬を染めたのをキュヒョンは見ている。


「いや、少し話しはしたけれど……、そのあとどこかの貴婦人が彼らに話しかけてきて、それを皮切りにひっきりなしに、婦人方が彼らに……」


チャンミンもそうだったに違いない。
なんとなく、キュヒョンは安心を覚えながら「そうか……」と答えた。
しかし、チャンミンはそんなキュヒョンの気持ちを他所に染めた頬のままで、
言いにくそうに続ける。



「でも……彼らに晩餐会に招待されたよ。お前も来るだろう?」



キュヒョンは、そう言って微笑んだ友人を凝視しながら、
自然と唾を飲み込んだ。




―――結婚を、幸せを。




キュヒョンはたった一人の親友に思っている。


それが今日、彼が唯一縁を持ったのは、女性ではなかった。
あんなに沢山の女性がいて、彼女達に注目を浴びていて。
あれは同性だ。
チャンミンは新しい交友関係の予感を感じているだけなのだろうか。
それでもキュヒョンは、「ならいい」と素直に思うことができなかった。


ひづめの音を聞きながら、闇を見つめる。


あの城主達に挨拶をしてから帰ると言うチャンミンより先に、帰路についたキュヒョンは、
ずっとその漆黒の闇に目をやっている。


頬を上気させながら話をしていた友人に、
単純な交友関係の期待以上の何かを感じたから、だけではない。
確かに、彼らには女も男も関係なく何か、人を引き付けるものがある。
特に、あの男。


友人を気にさせていたあの男。


キュヒョンは思い出す。
キュヒョンに一抹の不安を覚えさせるのは、
彼が同性だからというだけではない。


あの時、


向かって来たチャンミンの後ろで、
こちらに向いた黒い瞳が、
その色を変えたように見えたからだった。


赤く……


光った……


でもそれは気のせいだと、
キュヒョンは夜の闇に言い聞かせていたのだ。






「まあ待て。寒い」



キュヒョンは帰るなり、自分に鳴いてきたのに答えながら、暖炉の薪をくべた。
そして服を脱いだ。
上は裸のまま、緩やかな綿のズボンをはいて、身震いしながら檻を開ける。


ゆっくりと、白地に茶色の斑点の獣がキュヒョンの足元に出た。


キュヒョンは気にせずに、掛けた服の中から、ハンカチに包んだ即席サンドイッチを取り出すと、
床の匂いを嗅いでいるその前まで来て、かがんだ。
挟んでおいた茹で鶏を数枚出して、その鼻先に置く。
大分長い間放浪生活を送っていたのだろう、瘠せ気味の獣が夢中で食べているのを、かがんだ膝の上に腕を組んで、見つめる。


「お前は自分の運の良さに感謝しろ。大体のやつは一晩は飯抜きなんだぞ」


キュヒョンがかけた声も聞こえていないくらい一心不乱に食べている。
それを見下ろして、手の中にあるハムが挟まれたのをかじると、また声をかけた。


「それを食べたら、今日はお前が新聞を書け。俺は疲れた」


大きい塊に苦戦している姿を見ながら、
キュヒョンは今日の夜会を、あの前にいた三人を思い出した。
本当に優雅だったと、思い出していた。
それから、それを眺めていた自分を。
キュヒョンはぼんやりと目の奥にその光景を見ながら、足元の猫を見つめている。


記者である自分と、チャンミンの親友である自分が、
晩餐会には出席する、という返事をした。


でもあの中で食事をすることを思うと、
キュヒョンは晴れやかな気持ちにはならなかった。
それでも気分を変えるように元から上がっている口角を上げた。



「今日はチャンミンがすごかったんだぞ」



そう呟きながら、すっかり食べてしまって、床を舐めているのを見て、
キュヒョンは、もう一つのサンドイッチに挟んだ茹で鶏も取り出した。



「大体、俺はそんなに動物は好きじゃないんだからな。覚えておけよ」



「ニャア……」



「よし」



キュヒョンは頷きながら、自分に向かって顔を上げたそれに、かじっていたパンの中のハムと、
鶏肉を小さくちぎって与えた。









つづく




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一話にするつもりでしたが、あまりにも長くなったので二話に。

「ジル・ド・レの住んだ町3」ユノ シウォン チャンミン キュヒョン


「ニャア……」



「我慢しろよ。まあ俺なら無理だけど」



キュヒョンは檻を足元に置いて、ぶつぶつ言いながら、壁に打ち付けてある鏡を見た。
酷いな。
栗色の髪を揺らして、体中の土埃を払うと、鏡がすすけた。
それも気にせずに、ひっかき傷までついた服を脱いでいく。
それから木のテーブルの上に置いた懐中時計を覗き込んだ。
思わず目を瞑った。


「洒落にならないぞ」


大分すりきれてはいるが、昨日洋服掛けに掛けておいた白い綿のシャツを着て、
一緒に掛けておいた黒の燕尾服を手に取ってじっと眺めた。


「ごみみたいだな」


そこらじゅうがほつれて、虫が食っているところもあった。
それでも何年も大切に着ている。


夜会なんて久しぶりだ。
一番気になったほつれた長い糸を生地と生地の隙間にしまってみた。


「だめだ」


諦めよう。
キュヒョンは、もう一度鏡を見てみる。
瞳の大きな二重の目で確認しながら、念入りに顔の汚れも手で拭いていく。
すると、肌の白い、鼻筋の通った滑らかな唇の男が現れた。
元から上がっている口角を更に上げて、少し調子が良くなったのか頷きながら、
木のテーブルの上の招待状を手に取った。
それから、その横の懐中時計と、何よりも大事なペンと手帳を手に取った。


また歩く。
ドアの前まで来て、そこに置いた檻の前でしゃがみこんだ。
キュヒョンを埃まみれにした原因が、その顔を見て鳴いた。


「ニャア……」


「不満はあるかもしれないが、とりあえず元気でいてくれ」


そう言ってポケットの中の懐中時計を取り出す。


眩暈がしそうな時刻にまた目を瞑った。入口にかけた外套を羽織る。


そして、ドアに手をかけると、キュヒョンは夜の外に出た。
今日は町中があの夜会のためにざわめき立っている。
呼ばれなかった既婚者や年配者が町中の酒場で同じ話題を口にしていた。
どちらかというと閉会の時刻の方が近かったけれど、それでも招待客らしい男女を乗せている乗合馬車はまだ残っている。
その一つに乗り込むと、緊張と、期待でせわしなく目を動かしている婦人と、
時間が遅れたことを気にしているらしい、懐中時計を見ては、
冬の終わりでも、至る所で火のたかれている街並みに交互に目をやる男と一緒になった。
同じ市民とは言え、二人とも自分よりはいい身なりをしている。
キュヒョンは普段あまり気にしてはいないが、こういう時、少し居心地の悪さを覚えるのだ。
それもあって、彼も、お祭り騒ぎとは言いすぎかもしれない喧騒に顔を向けた。
考えるのは、自分の仕事にも影響してしまう大幅な遅刻と、
一緒に行こうと提案してきた、たった一人の親友だ。
恐らく自分を、心待ちにしている。


数年前に、まるで神様からの贈り物のようにできた友達。


出会った日のことをよく思い出す。
キュヒョンの暮らしは市民の中でもいい方とは言えない。そんな自分に、身分も何も関係なく、嬉しそうに話してきた人目を引くほど高貴な友人。
彼のことを思うとキュヒョンはいつも相反した二つの気持ちにたどり着く。
あの時出会って本当に感謝している気持ちと、もっと遅くに出会うことが出来たら良かったのにという気持ちに。


チャンミンは自分のせいで結婚をしない。


チャンミンが人目を引くのはその身なりと品の良さからだけではない。男のキュヒョンから見てもとても美男子なのだ。背も高い。
町を歩けば女たちは振り返る。
けれどチャンミンは大人しい性格も相まって、自分と出会うまでも色恋沙汰とは無縁だったそうだ。
それは自分達が、早くに親を亡くしている境遇もあったのかもしれない。
それに革命後とはいえ、気軽に話しかけられる人物でもない。


そして、自分と出会った。


キュヒョンはそっと息を吐いた。
キュヒョンは町の新聞屋である。
大きな新聞屋で務めているわけではない。個人で新聞を書いているのだ。
けれどこの町は驚くほど平和だった。
フランス全土を貧困に貶めた革命時でさえも、この資源豊かな辺境の町は裕福とは言えないが、
飢えて死ぬものは出なかった。
彼ら本人達は知らないかもしれないが、人の性質も良い。
そんな町に住んでいるキュヒョンの、大きな事件と言えば、火事くらいなもので、
それも記者になってからはたった一度だ。
ゴシップ記事を書こうにもゴシップもない。
キュヒョンの記事は市民の冠婚葬祭が殆どで、レストランの新作メニューなんかもたまに出たりする。


それでも彼が町にたった一人の新聞屋ではなかった。もっと大きな新聞屋もある。
それもあって、彼の新聞を取ってくれている町人は数人なのだ。
その中にはチャンミンもいる。
けれどその数人のためにキュヒョンは一生懸命に記事を書く。
この仕事がとても好きだった。
しかしそれだけでは、なかなか生計を立てるのは難しい。
だからキュヒョンは、行方不明になってしまった飼われている犬猫の捜索を、記事にも載せるためにする。


そんなわけで、彼は町人から「猫捕り記者」と呼ばれていた。


キュヒョンはそう呼ばれる今の生活に満足している。
もっと沢山の人間に読んでもらいたいという願望はあるが、今でも自分の新聞を読んでくれている人間がいて、そのために記事を書くことができるというだけでとても幸運な気持ちになるのだ。


でもこの生活では自分一人を養うだけで精一杯だった。
それに仕事に没頭していたいという気持ちもある。


それがキュヒョンの頭から配偶者を持つという概念を遠ざけている。


キュヒョンは外見が悪いわけではない。時々は町の女性に色目を使われることだってある。
けれど、あまりにも今の仕事が好きだから、そこから目を背けているのだ。
それが不運だなんて思ったことはない、しかし今キュヒョンは悩んでいた。


そう、自分のせいで、友人が結婚をしない。


妻帯することで、独り者の自分が更に孤独になることをどこかで気にしているのだ。
自分が気軽に訪問し、明け方まで語り合って酒を飲んだりが出来なくなるだろうことも危惧している。
男だし、チャンミンなのだから、いつだって結婚はできるだろう。
けれどキュヒョンは今の生活は変えられない。
キュヒョンが変わらなければ、チャンミンも変わらない。


お互いが出会うまで、心を許すものが誰もいなかった彼らの、命題と言うのは過ぎる、懸念事項だった。



石畳を抜け、小高い丘の斜面を馬車は速度を緩めずに駆ける。
町の灯が離れる。
キュヒョンの隣は闇だ。
城が近い。


ここ最近、キュヒョンの新聞には珍しく大きな事件が載せられている。
町で有名な二つの城が売りに出されたこと、
続いて、その買い手がついたこと。
そしてそのうちの一つの城から、町中の若人が招待された、この夜会のことである。


掛け声とともに馬が脚を止めた。
キュヒョン達が外に出ると、宴もたけなわの城が見えた。
キュヒョンははじめて中に入る。
石の階段を上がるとき、キュヒョンは香しい花の香りを嗅いだ。
見廻してみると、なるほど、急いた心と夜に隠れて視界に入らなかった薔薇園がこの城を囲んでいる。


その香りを吸い込むように、深呼吸をして気を取り直す。
城内に入った。
町中を駆けまわっているので、顔を知っている者もいる。
外套を預け、自らも黒の燕尾服姿になる。
普段は考えないようにしているとはいえ、これだけの婦人達を目にすると、
キュヒョンは白い頬が染まるのを感じた。
しかし、目に入る女性陣は皆これでもかと着飾って、男たちは見る限り自分よりも綺麗な燕尾服を着ている。
それにまたなんとなく居心地の悪さを覚えて視線を下げると、
ほつれた糸の出た袖と虫食いが目に入った。
苦笑しながら、キュヒョンは足を進めていく。


随分な富豪らしい。
これだけの人数を招待できているのもだけれど、古かっただろう城がとても手入れが行き届いている。
キュヒョンにはその価値は計り知れないが、装飾品もとても洗練されているように見えた。


大広間では酒の力を借りて、慣れあっている男女が舞踏を繰り広げている。
しかし、いない。
あと二人、ここにはいるだろうはずの人間らしき人物も見当たらない。
軽食の置いてある別室にも。
キュヒョンはそこでは茹で鶏とハムを数枚、バゲットに挟んで二つ拝借した。
ハンカチに包んでポケットに入れ、自らも美味そうに見えた卵とほうれん草のタルトを頬張りながら、
捜索を続ける。


チャンミンのことだから、今日出会った婦人と意気投合して人気のない場所に行くというのは考えにくい。
でもそうなってもいい。
キュヒョンは思った。
寂しさがないとはいえない。
それに腹を括らなければいけないほど、彼が自分の生活の一部になっているのは事実だ。
それでもだ。
キュヒョンは考えながら、場内にあまりにもその姿が見えず、今度は不安になってきた。


彼のことだからとても目を引いているだろうに。


途中ですれ違った給仕が銀の盆にのせた赤ワインを手に取って、
口をつける。
予想以上の味の良さに眉を上げながら、辺りを見廻した。
先ほどから向こう側の廊下に婦人が出て行く。男も。
また一人。



自分も誘われるように、そちらに向かおうとした、その時。
キュヒョンは目を疑った。


人だかりと共に、そこから三人の男が広間に入って来た。


この城は王の城だ。


その昔、謁見の間だったろうここに、
王が座っていただろう場所に、
一人の男が立った。
けれどその人間でなく、その後ろから、
もう一人の男と肩を並べるように入ってきた、




自分の友人に息をのんだ。








つづく