「Let’s go to the 遊園地!5」ドンへ×ウニョク
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楽しさのあまり立ち上がって俺たちは外を眺める。
「遊園地たのしー!ヒョクチェ大好きー!」
「ははっ。ドンへなんだよいきなり!」
おい!
俺今勢い余って告白しちゃった!
俺の馬鹿!俺の馬鹿!楽しくなっちゃって!
「あ、あはっ!なんかつい!」
何考えてんだよ!今まであんなに我慢して我慢して、ヒョクチェに嫌われないようにしてきたのに!
「俺もだよ!一番の友達だろ!」
一言余計でしょ!
一瞬期待したから!
「そう……だよね」
ダウンコートを着てたのに、すごく冷んやりして、なんとなく目の前が真っ暗になる。
俺は友達で、メンバーで……それだけなんだよね。
「不安な面持ちに変わりましたね」
「気が動転してるんだろう。アナウンスで着席は促していたが、あの状態だし。呼びかけるぞ」
双眼鏡を持った係員の隣で、園長がスピーカーに電源を入れた。
『お客様ー。お客様ー。観覧車の故障により大変ご迷惑をおかけしております。現在復旧活動を行っておりますので、座席に座ってもう少々お待ちください』
ーー観覧車の中。
「ドンへ!あれ多分俺たちに話しかけてるぞ!全然何言ってるか分かんないけど!」
「うん」
「ドンへ。どしたんだよ?手振ろうぜ!」
「う……うん」
元気良く手を振るヒョクチェの隣で俺も手のひらを動かす。
こうして遊園地を眺めると、地方だからか古いからか全然お客さんがいないのが分かる。さっき乗ったメリーゴーランドも誰も乗ってない。あのスピーカーを持ったスーツ姿の人は責任者なのかな。
でも、それよりも、それよりも!
俺たちはこのままずっとメンバーで、友達……
この気持ちを内緒にしたまま、本当にそれで良いのかな。
俺は本当にそれで。
「あっあのさ!ヒョクチェ!」
きょとんとした目が俺を見る。
「あの!俺!」
ーー観覧車の下。
「……飛び降りたりしませんよね」
「ドアが開かないから大丈夫だろう」
「なんか決死の覚悟みたいな顔つきしてますけど」
「ちょっとかしてくれ、田中君」
ーー観覧車の上。
「お、ドンへ、まさかお前言うのか」
「あらあら、おじいさん。ダメですよ面白がっちゃって」
透明な老夫婦が、ドンへ達の乗るゴンドラの屋根に座り込んでいた。夫の方は背を折り曲げて中を除き込んでいる。
「ひ孫見るのが一番楽しいからなあ」
彼はドンへの曽祖父にあたる。死因は老衰である。
「まあ、上手くいけば良いですけど」
妻は遊園地を眺めながら、ほがらかに笑った。若い頃は評判の美人だったが、今は人の良さそうな霊だった。
「この子はシャイじゃから」
「まさか男の子好きになっちゃうなんてねえ。自由になったもんですねえ」
ーー観覧車の中。
「お、俺さ!」
つぶらな目で不思議そうにヒョクチェが俺を見る。もう戻れないけど、仕方ないじゃん!
前に進みたいよ!俺!
「ヒョ、ヒョクチェが好きなんだ。恋愛対象として!」
つぶらな目が思いっきり開かれる。驚かせてごめん!でも許して!
「え、嘘でしょ」
「嘘じゃないよ!」
「冗談じゃなく?」
「冗談じゃなく!」
一瞬間が空いた後、思い切り疑わしそうに眉をひそめられる。
「これドッキリとか?」
ヒョクチェは天井を不振げに見上げた。
「ドッキリでもないよ!誰も俺たちのこと見てないから!」
ーー観覧車の上。
おばあさんもおじいさんの隣で背を折り曲げて覗き込んでいた。
「ドンへは昔から変わらないわねえ」
「うむ。ポジティブな子じゃ」
ーー観覧車の下。
「確かに、深刻な顔をしているな」
「園長、すみません。もう一回自分にも見せてもらえますか?」
「見てみろ」
園長から双眼鏡が渡され、係員はごくりと唾を飲み込み覗き込む。
「二人とも不安げですねえ」
「復旧作業はどうなってる。おーい!そっちはどうだ」
園長が、走ってきたヘルメット姿の作業員に声をかけると、「そろそろですー」と言いながら正面に来た。
「ほぼほぼ行けてます。お客さんはどんな感じです?」
そう言って作業員は見上げる。
「不安そうだよ」
答えながら園長が双眼鏡を渡すと作業員が受け取って覗いた。
「ほんとだ。相談してるのかなあ。向かいあって話してますねえ」
つづく