「不思議な夜に9」キュヒョン×イトゥク
最近間があいてたし、人にされたのなんて久しぶりだったから、その気持ち良さは凄かった。
その体勢のまま酒をこぼした時に近くに置かれていたティッシュでキュヒョンが拭く。
弟にされた恥ずかしさと情けなさで片手で目元を隠しながら、脱力感で動けず、荒くなった息はなかなか整わなくて、
その間、
「ごめんなさい、ヒョン」
とまるで子供でもあやすように抱き締められながら頭を撫でられた。
息が整ってきて、いよいよこの状況がどうして良いものか分からなくなる。
「キュヒョン、もう離れろ」
と声を出す。
「そこで提案なんですけど」
「は?」
目元を隠していた手をおろした。両腕でしっかりと抱き締められていてキュヒョンの顔は見えない。
声は今まであんなことをしていたと思えないような涼しさだった。
「なんだ?」
「俺たちこんな事しちゃって気まずくなりますよね?これから」
淡々と言うキュヒョンの声につられて、今の抱き締められている体勢も忘れて自分も平常に戻る。
「まあな」
「だから」
キュヒョンが一呼吸置いて言う。
「明日も俺来ます」
「はあ?」
と声を上げると同時にキュヒョンの腕が解かれて俺も身体を離した。
久しぶりに見たキュヒョンの顔は汗がにじんで少し赤らんでいるものの、あっけらかんとしたものだった。
「何言ってんだ、お前」
「だって気まずくなったら嫌でしょ?」
「だからって、来てどうすんだよ」
「話ししたりします」
「はなし……いや、大丈夫だよ。元に戻るよ。もう戻ってるだろ?」
そう言った俺にキュヒョンが眉をピクリと動かした。
「えーそーかなー。あんなことしちゃったのにー?」
顔色一つ変えずに茶化すように抑揚なく言われる。
あんなことを思い出してすぐに俺は顔を赤くした。
その俺を見てキュヒョンが表情を柔らげる。
「じゃあ、そういう事なので、寝ましょう。ヒョン、遅くまですいませんでした。明日は早めに来ます」
「え、おい」
「お休みなさい。酒置いとくんで、皿は台所に持って行きます」
「おいおい待て待て」
キュヒョンはうろたえる俺に構わずさっさと出て行ってしまった。
つづく