「チャンミンくんの恋人21」ユノ×チャンミン
仕事中、時間があればユノの様子を向こうの宿舎にいるマネージャーに聞いた。
帰国したのは久々じゃない。でも、前回の帰国時とは違って、日本に輪をかけてどこもかしこも
「人体縮小化」
で持ちきりだった。
ユノが、その渦中にいる。
独りで、どこもかしこもその話題の場所にいると、今更ながらに自分達は危機に瀕していると実感した。
『ユノはどうですか?』
『ユノは何してますか?』
メッセージを送る度に向こうのマネージャーのちょっと面倒そうな、でも可笑しがっているような返事がきた。
だって仕方がないだろう。その「話題の人」に、何かを間違えればすぐに危険が及ぶ身体にユノがなってしまっているんだから。
でもそれだけじゃなかった。
今朝の様子。
起きると、何も言わずじっと見下ろしている悪魔がいた。
俺が、「バイキンマンみたいですね」と言っても、なぜかふてくされた顔で頷くだけで、
俺に迎えが来るまで、言葉少なに恨めしそうに見られていた。
朝の忙しなさと玄関まで運ぶのも恐いだろうからと、ダイニングのテーブルの上で突っ立っていた姿に、
「行って来ます」
と、だけ告げた時の、置き去りにされたような、
傷ついたような顔が、頭から離れなかった。
昨日のユノだって頭をよぎった。
《一緒に行きたい》
仕事は打ち込んではするものの、友人だってみんな事務所仲間で忙しい身だし、休憩中は大幅に他に気を取られることもなくユノのことを考えて、マネージャーとの連絡に終始した。
大丈夫なのか、楽しくしているか。
そんなことを考えて、時間が過ぎた。
そして、全て終わって搭乗前に、また、何度目か分からないメッセージを送った。
『こっちを出ます』
自分の送った文面を見て、少し疑問を感じながら帰国した。
空港に着いて、すぐにメッセージを確認する。
問題なさそうな返事にユノは一日無事に過ごしたんだと、ほっと息をついても、思った。
この感覚。
ユノが何かあればすぐに危険が及ぶようになってしまったからじゃない、いや、なってしまったからなんだけど。
宿舎に到着する。朝にも開けた玄関のドアを開けて中に入る。
ちょっと緊張感があった。
こんなにもユノが気になっているのは、逐一連絡を取っていたのは、その体を心配してるだけじゃない。
一緒に行きたい、と言い出したユノについても、そうだ。
自分の部屋に向かう前にダイニングに顔を出した。
キッチンから「お帰り」と出て来たマネージャーを背に、
今朝と同じ姿で、悪魔の尻尾を垂らしてテーブルの上に突っ立っているユノを見て、
やっぱりなと思った。
仕事が出来なくて悲しいような、でも俺を見て嬉しそうに小さく笑う変な顔だった。
俺の場合は、その姿が元気で、安心を覚えていた。
自分たちの中に生まれている新たな感覚について。
これは「依存」だ。
ユノは多分気付いていないし、元からそういうものを顧みないだろうから改めて思うことはないだろう。
それはそこにあったけれど、もっと俗っぽく、目に見えて分かるようになった。
見え出しているそれを、その何も言わず嬉しそうにしている顔を眺めがら考える。
どうしようもないことだし、元から少なからずあったことと思いながら、
自分が何となく照れくささを覚えるのは、
やっぱりこれがこの数日で、
この「人体縮小化」で改められたからだろう。
つづく