夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「This is love comedy.2」ユノ×キュヒョン


次の日。



「ヒョン聞きました?」



移動車の中でチャンミンが耳打ちをしてくる。


「何を?」


「キュヒョンが」


ああ俺忘れてたよ!すっかり現実逃避してたよ。


家帰って飯食って風呂入って普通に寝てたよ!


ごくりと唾を飲み込む。


「キュヒョンが何?」


俺が聞きたくなかったのに聞いた話か、それとも俺の知らない話か。


「ユノヒョンを好きになった話です」


ああ、そっちね!やっぱりね!


頭を抱える。


「ヒョン、大丈夫ですか?」


「チャンミン、あいつどうしたんだ?」


俺の顔を見つめて、チャンミンが話し始める。


「あれは四日前の話です」


なにこの雰囲気。





「チャンミン、俺人気落ちたかも」


「キュヒョン、元気出せよ、そんなことないよ」


「お前のとこは二人だから人気だって二分割だけど、俺のところは十三人だぞ」


「確かに、多いよな」


「占い……行ってみようかな」


「占い?ならあそこがいいよ。すごい当たるらしいよ、俺もついてくからさ」


「ここか」


「予約取れて良かったな」


「……あなたは今、仕事で悩んでいますね?」


「はい」


「……あなたのお友達が鍵を握っています」


「チャンミンですか?」


「え、俺?」



「……そのお友達の身内と付き合いなさい。きっと成功が開けますよ」





はい、ちょっと待って。


まずどこから行こうかな。


微妙なのから行くけど、その付き合うってこの付き合うじゃないんじゃないの?
あとさあ。


「……それって、チャンミンの妹でいいよな?」


「キュヒョンは妹よりもユノヒョンの方がずっと俺と絆が深いと思ってますから」


チャンミンがはにかむ。
そんな事言われると、照れ……ないから。感動とかいらないから。今はそういうのいらないから!


「……それ好きじゃないだろ?」


「一応三日間ヒョンのことばかり考えてたらしいです」


「俺、一応先輩なんだけど?」


この扱いなくない?


「先輩面するヒョンは嫌いです」


チャンミンが機嫌を損ねたのか顔を背ける。


「ちょちょ、チャンミン」


絆の深い俺のことも考えてくれ!あとまだ、男同士ってのも突っ込んでないから言わせてくれ!


ああ、本当にもう、何なんだこの馬鹿みたいな話は。



そんなんで俺を巻き込むなよ。












つづく








「This is love comedy.1」ユノ×キュヒョン

*観覧注意 タイトル通りユノの相手はチャンミンではございません。
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雑誌の撮影で、チャンミンが早く上がって、俺は控室で一人待機していた。


そこに珍しい人間が入ってきた。
外は摂氏ゼロ度の真冬で、極寒の日に俺の心も心底冷えた日になった。



「ユノヒョン、ちょっといいですか?」



ん、何でキュヒョンが?



自分達はアイドルで、俺のパートナーであるチャンミンの親友のこいつが、自分に何の用だろうと思いながら、ソファーに腰掛けたまま「おお」と返事をする。


ちなみにヒョンとは「兄」の意味で年上に対して使うのだけれど、俺は本名でもあるユンホの短縮形、「ユノ」と言う芸名でもある名前に「ヒョン」が付けられて呼ばれたのに対して、キュヒョンは「キュヒョン」と言う全てが名前だったりする。



そんなキュヒョンは思いつめたように、向かい側に座らず、俺の隣に座る。



何でこいつは隣に座るんだと思いながら、



まあいいかと大して気にしなかった。



変に真剣な目で、まるで愛の告白でもするようだなと笑いながら、手に持った紙コップのジュースに口付けた。



「ユノヒョンが好きなんです」


あやうく噴き出しそうになって抑える。


「噴き出しませんでしたね」


真面目な顔で言うキュヒョンに戸惑いながら、「ああ、ありがと」と返した。


「え?」


「ん?」


はは、とキュヒョンが乾いた笑いをするのに、自分も「はは」と笑う。
ユノさんお願いします、というスタッフの声に「じゃあ、行くわ」と言うと、「どうぞ」とキュヒョンはドアに手のひらを向けた。


変な奴だなと思いながら、撮影を無事終えて控室に戻るとソファーから立ち上がったキュヒョンがいた。


んん?



「お疲れ様です」


「え?ああ」


コートを着ている自分に、


「で?」


と言われる。


ん?なんか話していたか。
訳わからずその顔を見ると、


「だから返事です」


と言われる。


「何の?」


「あっ!」


キュヒョンが怪訝な顔をする。


「あー、何だこの人、聞き間違えてるよ」


一人でぶつぶつ何なんだ。


「だからあ、俺はあなたが好きなんですよ!」


ああ、その話か。何かと思った。


「ああ、うん。ありがと。俺も好きだよ」


しかし、本当に変な奴だな。俺はそんなに仲良いわけでもないぞ。


「ユノヒョン!聞いて下さい!」


目の前に立って、手を取られる。んん?


「俺の好きは」


183㎝の俺より少しだけ低いキュヒョンの顔が近づいて、不思議で首を傾げそうになる前に、



その唇が俺の唇に触れる。



「こういう好きなんですよ!」


固まる。


「まだ分かんないんですか?」


と、もう一度顔を近づける。


「ちょちょ!」


何?何が起こった?
いやいやいや、待て待て待て。こいつは一体どうしたよ!
振り解いた両掌をキュヒョンに向けて防ぎながら叫ぶ。


「待て!お前彼女いたよな!」


「ああ、それは三か月前に別れました」


いやいや、そうじゃない。


「女が好きなんだよな!」


「それはもういいです」


いやいやいや良くないよ!全然良くないよ!


「んん?」


「は?」


頭がついていかず、暫く立ち尽くす。


「ちょっと、俺、帰りますね」


あれ、何で俺キュヒョンに敬語使っちゃってるんだろう。


「あ、じゃあ今日のところは」


今日のところはじゃないから。明日からもいいから。



本当に一体なんなんだ?



こいつはどうしたんだ。




これは悪い夢なのか。










つづく

「グラウンドゼロレクイエム1」ユノ×チャンミン EXO

これはフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
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20XX年11月6日 
P.M.18:32 



曲が流れているのに、ステージ上のアイドルが、それが耳に入らなくなることはない。
そんなこと常識だろ?
カイは思った。
自分のダンスが卓越していることは分かっている。
だからメンバーの中で、誰よりも音楽に乗りたいと思っている。
それが使命だとも思っている。
でも、今、自分はどんなメロディーも耳に入らなかった。
自分の周りでもメンバーが立ち尽くしている。


音楽は確かに流れているのに。




「ねえ、あれ、噛まれてない?」




誰かが言った。
その瞬間、まるで矮小な噴水でも上がったみたいだ。


深紅の水柱が、スローモーションのように、



ドームの床に飛び散った。






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11月5日 
P.M.20:24




チエコは、硝子窓に向かって、唇を突き出した。
外は夜だ。
硝子窓は反射した蛍光灯の照明でチエコを映している。
片手に握られた深紅の口紅で、たった今その唇は塗られたばかりだった。


今日はホテルに泊まるだけだ。
でも自分の中では、とてもお洒落に着飾っていた。
二つ理由があった。



一つは、





――東京に来たこと。





もう一つは、




――その地に憧れのアイドルが来ていること。




チエコは座席の備え付けのテーブルに、サンドウィッチとペットボトルと一緒に置かれた携帯電話を手に取った。
ここには愛しの「彼」がオリジナルでプリントされていた。
チエコには、付き合っている彼氏がいた。
でもこの「彼」との付き合いはもっと長いのだ。
思わず、口元が弛む。
ここにプリントされた写真は、一番のお気に入りのもの。



チャンミン。



チエコはまるで呪い文句のようにその名前を唱える。
早く会えますように。


顔を上げると、車両入り口のLED文字広告にニュースが流れている。


どこかで小さな地震があったようだ。
でもその震度なら問題ない。
ただ、自分の住む岡山と違って、東京は地震が多い。
最近は大災害を脅かすようなテレビ番組は少なくなった。
でもいつ来るか分からない。
それを考えると、今から向かう東京に、
浮足立ったチエコの心に少しばかりの陰を落とした。



『只今小田原駅を時刻通りに通過しました。あと14分で新横浜駅です』










11月6日
A.M.0:14



身体が強張った。
心蔵がどくんと波打つ。
ベッドの上で、シム・チャンミンはそれを感じていた。
もう最初の揺れで分かるようになっている。
日本滞在歴の多さはアイドルの中では伊達じゃない。
しかもここ東京は、日本でも有数の活断層の集合地帯だ。
今の揺れは大きかった。
余震もきている。


でも大丈夫だ。
まだ速い鼓動をおさめるようにそっと息を吐いた。
携帯電話が点滅している。
起き上がって、ベッド脇に手を伸ばした。
充電器を外すと、暗い画面に光がともった。
メッセージが入っている。
後輩からだった。


『今地震がありましたが、大丈夫でしょうか?」


後輩のアイドルグループのリーダーからだった。
普段から、仲良くしているのに加え、
明日、自分は彼らのライブに行く。


「大丈夫でしょうか?」と言うのはチャンミンだけのことじゃない。


チャンミンも含め、自分達は、
この都市は、
大丈夫でしょうか?


という意味だ。


まだ日本に来る機会が少ない彼らは、地震に慣れていない。
チャンミンは、自分の心臓の音もまだおさまっていないのもさておき、


『大丈夫だから早く寝ろ』


と打って、送った。


伸ばしている前髪を掻き上げて、そこで手を止めた。


もう一人、メッセージを送りたい人間が頭中をかすめた。
でも、その人間はもう寝ているだろう。
今から、約半年前は、この部屋の隣、ここ東京の宿舎にいた。


けれど今はいない。


普段は考えないようにしている。
でも夜中にこうやって起きると、思い出して時々息が出来なくなる時がある。
自分達の国の法律に基づいて行ってしまった、二人だけの自分達のグループの、たった一人のパートナーだ。
自分ももうすぐだった。
その前にチャンミンは、まだ一人で活動を続けなければいけない。
およそ二年の活動休止期間に陥る前に、
少しでも名前を残さなければいけなかった。
明日、後輩のライブを見に行くのもそれが大きい。



――東京ドーム。



半年前は自分達がそこでしていた。



考えるな。



チャンミンは携帯電話をまた充電器に接続して、横になった。




彼が、
自分達が、
また再開した時、




俺は彼に、伝えたいことがある。






だから地震は、今、チャンミンにとってはとても怖かった。










つづく