「チャンミン。もう我慢できなくなった」
と言われて、俺は、
「はあ」
と、声を出した。
久しぶりにプライベートで飲んでいた。
芸能人御用達の個室の焼肉屋で、
サムギョプサルに、韓牛、
今メニューを見たらポッサムもあったので、これはいいな。と注文したばかりだった。
二人だけのアイドルグループになって長い自分達は、宿舎も別々、
こうやって仕事以外で会うのなんて久しぶりなんじゃないかな。
「でも俺が抑えきれなくなっただけだから、チャンミンはいつも通りにしてていいから」
中まで凍ってそうな生ビールのジョッキの取っ手を持って、
片割れ、というか二人しかいないけどグループのリーダーが言う。
「はあ」
また俺は声を出しながら、自分のジョッキを見ると空だったので、店員を呼んだ。
「すいません。これおかわり」
と言って顔を上げると、正面で、リーダー、ユノが少し唖然とした顔をした。
「あの、どうでもいいんですけど、早く本題に入ってくれませんか?」
「好きだ」
俺に向かって呟いた顔を見る。
店員がすぐに持ってきたジョッキを受け取った。
また個室には二人だけになった。
「好きだチャンミン」
こちらを見つめて今度はしっかりと言ったユノを眺めながら、俺はそのジョッキを口に近づけて、中のビールを飲んだ。
それから、目の前にあった辛味噌で和えられたねぎを食べた。
それからもう一度、
「はあ」
と、言った。
軽く要約すると、
一年位前からずっと好きだったけど、チャンミンは普通に女の子が好きだし、自分のことをなんとも思ってないのは分かってる。なんたってアイドルなんだから、スキャンダルはだめだし、付き合いたいとかはないし、むしろ俺の気持ちに応えられるのは困るんだけど、俺はチャンミンに気持ちを言いたかった。
とのこと。
おったまげた。
あの人、そうだったのか。
朝、歯磨きしながら、鏡に映っている自分を見る。
イケメンだよな。
イケメンな……男だよな、俺。
まあ、ユノもイケメンだとは思うけど。
いや、イケメンはどうでもいいんだけど。
とにかく、男なんだよ。俺も……ユノも。
そんなこと思ってたら、久しぶりにマネージャーが来る時間までに用意が出来ずに、
集合時間に遅れた。
とは言ってもその時間も余裕を持った設定だったし、仕事には支障がない。
でも、移動車で隣の席に座ったユノが俺にこそっと言った。
「次、遅刻したらキスするから」
もう一昨日までのユノじゃなかった。
一瞬、気が遠くなりかけながら、
ぎょっとしてその顔を見た。
「ヒョン。冗談でしょ?」
「ううん」
「ヒョンは今まで俺の嫌がることは言わなかったでしょ?」
苦笑される。
「嫌なんだ」
そりゃそうでしょ。
「でも俺、今恋してるから」
「勝手にしといて下さい」
「遅刻はだめだろ」
「もうしません」
「それならいいじゃん」
「よく……ない」
と言って、その顔を見た。
「ううん、だめ。絶対にするから」
そう言って微笑んだユノは、
完全に恋してる目だった。
つづく