「聞いて下さいチャンミンさんっ!最後まで聞けばチャンミンさんが考えてるような役じゃないかもしれません!」
おめでたい恰好をした後輩が必死になって言って来る。
キュヒョンもその必死さに、カレーを口に入れながらにやけ顔をやめた。
俺も鬼じゃない。そこまで言うなら聞いてやる。
「よし、言ってみろ」
「えっとですね。ゲイの友達にせまられて、初めて男と付き合うことになった男の役です!」
「よし、表へ出ろ」
「ええっ!!」
キュヒョンが噴き出している前で俺は立ち上がった。
「まんまじゃねーか!」
馬鹿かっ!
「まんまって何ですか!」
「いや、まんまじゃない!まんまになるわけがないんだ!」
あれはまだゲイだと決まったわけじゃない!
「大体それどうやって一日で撮るんだよ!」
どれだけ人間の気持ちを簡単に考えてるんだ!
「いや、それは俺も分からないですけど!でもぴったりだと思うんです!」
「お前なあっ!それ以上言うと、その白いパンツも赤く染まるぞ!」
「じゃあチャンミンさんの連絡先だけでも教えて下さい!」
と言われて、それは教えた。
「俺はいいと思うよ、うん」
紅白男が去って、キュヒョンはごま油のいれすぎたカレーを食べながら言う。
「適当言うな。お前はじゃあ、できるわけ?」
食べ終えた俺は水を飲んでいる。
キュヒョンが鼻で笑う。
「誰に向かってものを言っているんだ」
俺はじいっと見ている。
「俺ができるわけないだろ!ふざけるのもいい加減にしろチャンミン!」
「……今日はすごい疲れたんです」
ユノの作ったインスタントラーメンを食べながら、俺は溜息をついた。
目の前には切ったトマトがあったけれど、ユノは手をつけていない。
「そ、そうなんだ。あ、あのさチャンミン」
ラーメンを頬張ったユノが俺を見る。
「なんですか?」
「あの……さっきから携帯ふるえっぱなしだけど」
BGMかと思うくらい今も俺の携帯の振動音がしている。
「ああ、気にしないでください。大した用件じゃないので。あとで電源切っときます。それより、トマト食べて下さい。体にいいでしょ」
「う、うん」
複雑な顔でトマトを食べているユノを見て、なぜか和んだ。
俺、大丈夫かな、本当に。
只今18時49分(ユノの退役まであと453日)