しばし眺めたあと、小さく息を吐いた。
この人、良く今まで俺を普通に学校に送り出したな。
水とみかんと着替えを用意する。
「起きて。薬です」
汗凄いな。とけたような目蓋が開く。
ベッドの淵に座って覗き込む俺を見上げて、力なく笑った。
「チャンミン……」
さっきまでシーツの上で、誰かを探していた手が俺に伸ばされる。
俺は、
自分の外見を自覚して、もう長いこと経つ。
身長は特に。
それに不釣り合いな幼さの残る顔立ちも。
大きな二重の目に、長めの鼻筋、そのせいで距離のなくなった唇との間隔、高さのない顎、
それが自分の外見を良く見せている事も。
町を歩いていて見られることも良くあるし、自分で言うのもなんだけど女子に人気があるのも知っている。あと一年半で帰国する自分にはあまり関係ないけど。
でも俺は、ここまで自分を見て、欲してくる人間を知らない。
本当にこの人は変質者でストーカーなんて思われても仕方がない。
同性なのが一層そう思わせる。
まるで、これじゃあ俺はアイドルだ。
「……チャンミン?」
虚ろな意識で俺の表情を読み取ったのか、顔まで伸ばそうとした指先が、やめて俺の腕を撫でた。
「起き上がれますか?」
ゆるく頷いて、だんだんと上半身を起こす。額に貼り付けているのを取り換えて、みかんを食べさせて、薬を飲ませた。
正体不明のこの人の処遇を俺は早く決めなければいけない。
「じゃあ俺、シャワー浴びてくるんで、着替えてて下さい」
「……ユノも行く」
しかも「ユノ」続行中。
只今11時11分(ユノの退役まで487日)