夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「聖なる夜に二人だけ(前編)」チャンミン×ヒチョル(クリスマス企画短編)


「いやー綺麗な海ですねえ」



「まあな」



「この季節にこんな温かい海に来れるとは思いませんでしたよ!」



「それだけが救いって感じだよな」



「本当に綺麗ですねえ」



「おう」



俺達は、漂流していた。


隣にいるのは、同じ事務所のシム・チャンミン。同じ事務所だけれど、グループは別の、アイドルだ。



「しかし、まさか俺達だけがこんな目に遭うとは思いませんでしたねえ!」



これは12月に起こった悲劇だった。


自分達は初の合同写真集の撮影に、大西洋に浮かぶある島に極秘で向かっていた。二つのグループのメンバーを載せた小型ジェット機だった。


すると、高度五千メートルから恐らくエンジン不良のために下降。


大西洋のどこかに不時着すると言う奇跡を成しえた。喜んだのも束の間、突如襲った小さな竜巻に飲まれて、俺とこのシム・チャンミンだけが、みんなとはぐれるのをぐるぐると回る空中から見ていた。



というわけだ。



「しかし、こんなことあるんですねえ」



「ねえよ」



どんだけ物理の法則舐めてんだ。



と思ったけれど、あった、というわけだ。



「でも、運が良いですねえ」



「……ギリギリな」



「だって生きてるし、竜巻で着てた服がボロボロになってもここ暖かいから寒くなかったし、一緒に飛んできた荷物の中にお菓子と水もあったし。それにこんな島も」



「まあな」



俺達は、漂流だと言えるし、漂流じゃないとも言えた。
放り出された海面に、この島を見つけて泳ぎつくことが出来た。


ーーしかし、この島の直径はおよそ2mだった。



「だって足伸ばして眠れるし。ヤシの木も変な草も生えてるから木陰にもなるし」



お前昨日、寝ながら海に落ちたろうが。



「でも、水だよな」



一緒に幾つも飛んできた機内食のカップに入った水が残り二つとなった。



「それは何とかなりそうです、ヒチョリヒョン」



俺の名前はキム・ヒチョル。こいつより結構年上だから「ヒョン」だった。兄さんという意味。


少し日焼けした、髪の毛も茶色いシム・チャンミンが、昨日飲んだコーラの空き缶を俺に見せた。



「まだジュースあったか?」



ジュースも飲んでしまったと思っていた。



「いえ。これで海水を蒸発させます」



「……火は?」



「これで」



チャンミンが片一方レンズが取れた眼鏡を出した。



「あ、それキュヒョンのじゃん」



「彼が眼鏡飛ばしてくれて良かったです」



ちなみに服も一緒に飛んできた誰かの物に着替えた。チャンミンのアドバイスで俺は長袖のパジャマを。チャンミンも長袖のシャツとスウェットを着ていた。日焼け防止と半袖よりも気候の変化に適応できた。



一緒に飛んできた雑誌類と乾かした木屑にチャンミンがレンズをかざした。



5分後。



「すっげ。火だ」



「この上の空き缶に入った水滴は蒸留水です」



入口を少し合わせて火にかけた二つの空き缶の、傾けていた上側の方を、濡らした布を巻いた手で掴んでいたチャンミンが取った。



「舐めて見て下さい、ヒチョリヒョン」



渡された缶を冷まして、恐る恐る入口を舐める。中から出て来た水滴は真水だった。



「お前すごいな!一緒に来たのがドンへとかじゃなくて良かった!」



俺はチャンミンの肩を抱いた。俺よりデカい。



「とりあえず、目ぼしいものは引き上げられたんで、残りはこの袋にいれて海につけときましょう、場所ないし。釣りもしないといけなくなるかもしれません」



「そうか。俺の髪、糸にしろよ」



俺は前髪の分かれた黒髪を触った。こいつの髪より長い。チャンミンがこっちを見た。


各パーツが大きな、整った顔の中で大きな目が向いた。



「……俺のでするつもりでした」



「あ、お前の方が髪多いな。ああ、いいや。俺、髪切りたかったから。小さなハサミあったよな」



一緒に引き上げられた荷物に誰かの化粧ポーチがあった。その他にも色々。何でも必要になるものだなと思った。


太陽が沈んで来て、気持ち悪かったけど誰かの歯ブラシも荷物に紛れていたから簡単に磨いて、俺は横になる。ここがホテルなら言うことないオーシャンビューだった。


しかし、実際は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。でも俺が一番運が良かったのは、一緒に飛んできたのがチャンミンだったということ。きっと俺一人なら、早い段階で諦めなければならない状況に陥っているだろう。


夕暮れを見ながら、チャンミンも隣で横になった。


この島は水面から出ている部分は半球型だから、俺達はちょっと伸びをしている形になっている。


夕日が落ちて、満点の星空に変わった。今が12月なんて思えない気温だった。自分達は星空を見ていた。まるで夜空に浮かんでいるようだった。



「クリスマスお前仕事?」



あと数日のはずだ。



「はい。その後、彼女と過ごす予定でした」



「まだ、過ごせるかもしれないだろ?過去形使うなよ」



俺は笑いながら応える。



「……ヒョンは?」



「仕事だったよ。彼女はいない」



「じゃあ次の流れ星にヒョンに彼女が出来るようにお願いします」



「それより帰れるように願えよ」



でも多分、さっきから幾つも線をつけて横切る星にもうその願いはお互い十分すぎるほどしているだろう。


こんな小さい島でも、ヤシの木の上に鳥でも止まっているのか、ばさっと羽を広げる音が聞こえたり、海には時々光る何かが見えたりして、動きはあった。



「おやすみなさい、ヒョン」



「おう、おやすみ」



肌寒くて重ね着をしたり、日が出て来て脱いだりして、昼になった。



「雨降ったら嫌だな」



「このビニール袋でしのぎましょう」



「あ、雨降ったら飲める」



「ええ。飲み放題です」



チャンミンは地道に火をくべて、水を作っていた。俺も流れて来たものを拾ったり、草を取って乾かした。



「お菓子極力食べない方が良いです。喉乾くから」



「分かった」



スナック菓子がまだ何袋かあったけれど、自分達は少しだけ摘まんだ。普段は偉そうにしているけれど、こういう時は素直なもんだなと、自分を思った。二人のために黙々と頑張ってくれるチャンミンは、昔面倒見たりしていたのが嘘のように頼もしかった。
お互い大人になったんだな。


カップの水はいざという時のために飲まずに、チャンミンの作ってくれた水をお互いの空き缶で舐め続けながら、今日も一日を終えた。


明日は朝露がつくかもしれないと、頭上の草にチャンミンが縛ったビニール袋が揺れている。



「なんかアイドルとか嘘みたいですね」



「死ぬときは似たような気持ちになるんだろうな」



隣の人間が黙った。



「今は違うからな。お前がいるから俺達は助かるし、俺も頑張るから」



「……はい」



何となく声が震えていて俺はふと笑った。



「チャンミン、来い」



やはり声を出さず泣いていたチャンミンに腕を伸ばして、その頭を抱いた。俺の腕の中でそのまま泣いている。



「お前にはここにいたのがユノなら良かったな。心細くさせて悪い」



チャンミンが首を横に振った。ユノはチャンミンのグループのメンバーだ。二人だけだから相方とでも言おうか。俺とこいつの間の年齢だった。こいつにとっては良い兄貴分で頼れるリーダーだ。
図体はでかくてしっかりしてても年下なんだよな。俺は小さく溜息をついて微笑む。



「大丈夫。戻れるぞ。みんな俺達を必ず探してる」



「はい」



「さあ、寝るか」



またごろりと仰向けになった。



「帰ったら何しようかな。俺、とりあえずシャワー浴びたい」



「そうですか」



「お前は?」



俺はチャンミンに向いた。
図体のでかいチャンミンは濡れた大きな目で俺をずっと見ていたみたいで、少しだけ驚いた。



「なんだよ?お前は何がしたい?」



「……俺、えっちしたいです」



少しの間、俺達はそのまま見つめ合って黙った。


それから、「そうか」と言いながら、何となく、俺は少し距離を開けた。


また上を向いた。綺麗な星空がある。













つづく

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