夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「今日の料理 最終回」チャンミン シウミン 東方神起の短編 EXOの短編


驚きのあまり声を失っているシウミンの前で、ごろごろと投入された。
「唐揚げを入れ続けることが重要なんです。ちなみにこの唐揚げも、そうやって作ってますよ」
下味をつけた鶏肉ともう出来上がった唐揚げを彼はビニール手袋でよく混ぜて行く。
しばらく放心していたが我に返り、
「え、でも。レシピにはそんな……」
シウミンはディレクターの方へ目を向け、同時に顔を青ざめさせた。
そうだ。シム・チャンミンに渡されたレシピを見た時、確かに、材料の一番初めに「唐揚げ」と書いてあった。
書かれている場所が変だとは思ったが、単にレシピの名前だと思っていた。
まさか本当に唐揚げが入るとは。
口を開いて、呆然としているディレクターと見つめ合ったまま、石のようにシウミンも形の良い口を開けて固まっていた。
「ちなみに最初の唐揚げは、十年前に亡くなった俺の母が作ったものですっ!」
反射的に全員が小さく悲鳴を上げ、目を見開いたが、混ぜ続ける伝説の料理人シム・チャンミンの気迫に圧倒されただけだった。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
アナウンサーの意地とばかりにシウミンが食らい付いた。
「じゃあそのお母さんの唐揚げがないと」
「母の唐揚げは、お祖母ちゃんの唐揚げを入れていますっ!」
シウミン含め、もう一度小さく悲鳴を上げて、全員が目を見開いた。
誰もが口を閉じられず、立ち尽くしている中、小麦粉と片栗粉もつけられ、じゅうーと軽快な音を出し、唐揚げが揚げられていく。
「火が通っているものは時間短めで問題ないですよ」
そう言う意味だったか。呆然としたまま、またシウミンは、ディレクターと目を合わせた。
奇妙な書き方だと思っていたが、そのワンポイントアドバイスを見た時二人は、にわとりが先か卵が先かと言う話に白熱してしまい、うやむやになっていた。
そうして時間通りに唐揚げは出来上がり、最後のテーブル席に移動した。
「食べてみて下さい。シウミンさん」
向かいで両肱つけた手を顔の前で組むシム・チャンミンに、横長の大きな口で言われ、箸を伸ばした。
息を潜めたスタッフに見守られながら、皿に盛られた揚げたてを火傷しないようゆっくり一口食べ、シウミンは切れ長の目を丸くした。
「こんな唐揚げ……食べたことない」
えも言えぬ味わいに仰天し、そう呟くと、横長の唇ににっこり微笑まれながら、彼は夢中で残りを頬張った。
「それでは、今日の料理です」
いつもの台詞を、これは次の為にと取り分けられた物以外、全て平らげて脂で光らせた口が言った。材料のテロップに口頭で、「唐揚げ」を追加させ、「でもこれ、作れるかなあ」と思わず呟いてしまったシウミンの声で番組は無事終了した。
唐揚げに唐揚げを投入させた瞬間最高視聴率は未だ破られることはなく、今日の料理の「唐揚げの回」は伝説となった。
それから一切、シム・チャンミンはお茶の間に姿を見せることなく、どこかの高級ホテルの衛生観念を徹底させ、総料理長になったとかならないとかのニュースは、一時ワイドショーを賑わせたが、その姿を誰も追えず、伝説の料理人は幻の料理人と呼ばれるようになった。
しかし、時々こっそりシウミンの家に来て、今でも美味しい唐揚げを作ってくれている。






『今日の料理』おわり

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