「君の瞳に恋してる」ユノ×チャンミンの短編 ヒチョル イトゥク
「あ、お帰り」
「おー」
「今俺しかいないよ」
「あ、そう」
ダイニングに入って来たヒチョルを、イトゥクはテーブルで迎えた。
「どこ行ってたの?」
「ああ、買い物?そっちは今日、何してたの?」
「なんか昨日の疲れでさ」
深夜までしていた仕事のせいで、今日が休みにも関わらず、
メンバーが午前中みんな部屋から出てこなかったのを、ヒチョルは思い出していた。
「は?一日中宿舎?」
「だって疲れてたんだもん」
ヒチョルはこのリーダーの仕事と性格が、誰よりも疲れを負わせることを知っている。だからそんなに疲れさせた仕事に対し、少し苛立ちを覚えたのだ。
「なんか食った?出前でも頼もうか」
ヒチョルは時計を見た。まだ夕方六時前でイトゥクは食べてないだろうと思った。
「そうだな。あと一時間くらいしたらでいいけど。それより何買ったの?」
イトゥクは見ていた番組が終わってしまい、テレビを消した。
「あ、これ」
ヒチョルが紙袋から、ケースを取り出して開けた。
「あ、恰好いいじゃん。かけてみてよ」
「ああ、うん」
その時。
ユノとチャンミンは出会った。
第一印象は、
恰好いいな。
ユノは、チャンミンを見て思った。
なんてフレームの小さい人なんだろう、
チャンミンはユノを見て思った。
それからは、イトゥクとヒチョルが会うたびに、ユノとチャンミンもお互いを意識するようになった。
声かけてみたい。
二つとも、そう思っていた。
「あ、おはよー。昨日さ、あのアニメあったろ?」
「ああ、見たよ。良かったよ」
「パン食う?」
「食う」
二人が会話するたびに、ユノとチャンミンはドキドキした。
そして、イトゥクとヒチョルが羨ましくもなった。
でもある日、とうとう、話しかけようと二つは決心した。
「シンドン痩せたかなあ」
「どうだろうなあ。まあ元気でやってくれればいいよ」
「それよりさ、昨日見たアニメなんだけどさ」
「ああ、またあのアニメ?」
「あっ、あのっ!!」
「はっ、はいっ!!」
自分の方が年上であると自覚していたユノが勇気を出した。
チャンミンは先に声をかけてもらえるとは思わなくて一層レンズを震わせた。
「なっ、名前はっ?」
「あ、ちゃ、チャンミンですっ!」
「いっ、良い名前だねっ」
ユノは、心臓がレンズを突き破ると思った。
「あっ、あなたはっ??」
「ゆっ、ユノ」
「あの女子高生役の声優がすごいイイ声でさあ」
「ふーん。でも声優ってやっぱり大事だよね。音楽に通じるものがあるっていうかさ」
そうして、二つの交流は始まった。
「チャンミンお帰り!今日はどうだった?」
「うん。なんか休憩中ずっとアマゾンでアニメのDVD検索してた」
「あ、そうなんだ。楽しかった?」
「あんまり、かな」
ユノもチャンミンも、一緒にいる時が嬉しくてたまらなかった。
早く会いたい、といつも思っていた。
そして、三か月が過ぎた頃、出会った時から消えないときめきを、打ち明けようと思った。
お互いに恋をしていた。
今度は同時に言った。
「あっ、あのっ!!」
ユノとチャンミンはフレームを見合わせた。
イトゥクとヒチョルは宿舎のテーブルについて、他のメンバーと一緒にカルビクッパを食べていた。
「すっ、好きっ!!!」
ユノとチャンミンは、また同時に声を出して、フレームを見合わせた。
「あれ?そのフレームそんな色だっけ?」
「いや、そっちのフレームこそ、なんか赤いと思ってたんだよね」
「まあいいや、キムチとってよ」
やっと同じ気持ちだったことが分かった。
それからもっと仲良くなったユノとチャンミンは、
日に日に素敵に見える相手に、
一層レンズをきらめかせながら、
毎日を送っていった。
『君の瞳に恋してる』おしまい