夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「バースデイ」ユノ チャンミン 誕生日記念短編


頭が可笑しくなった。


原因が分からない。最初に「何で?」と聞いた俺に、馬鹿にしたように浮かべた笑みが、お互いの、どちらに向けられていたのかも分からない。
チャンミンは確かに可笑しくなって、その日からずっと隙あらば可笑しくなる。


正常と異常のはざま。同性と異性のあいだ。


最近はそうして真ん中にいる。


嫌で仕方ない。から、とどまりたくない。でも俺の仕事上のパートナーが、そこから動いてくれないから、俺は合わせるしかなかった。
ツアー中にだけ、それは行われる。宿舎は別々だし、俺のマンションにまで踏み込まないのは、チャンミンのかすかに残っている正常がさせているのかもしれない。線引きは確かにあった。


だけど、部屋が別々でもホテルでは、チャンミンは来た。



「ヒョン。酒が足りないんじゃない?」



スタッフ達と別れて、一緒に飲もうと誘われて、最初から断れなかった。最初は断る理由がないし、チャンミンが、俺の心臓が止まるほどの露見をしてからはもっと、これで関係が崩れたら、この「二人だけのアイドル」のどこかのバランスが崩れたら、とここしかない俺は、保つことだけを考えて無下に出来なかった。けれど、いつでも、チャンミンに諭した。


ベッドの頭に背をつけて俯いて座る俺を、長い年月を経ても昔から変わらない巨大な目で覗き込む。


可愛いとか思っていたのが、すごく遠く感じた。



「ヒョン。まだそんな顔してる」



このツアー前に整えられた茶色の短い直毛。正反対にしてある俺の、黒く、伸ばした髪に、兄と言う「ヒョン」と呼びながら俺よりも高い背で、女とは到底思えない手が、引っ張るようにきつくその指に絡められる。
少し痛みを覚えても我慢できないほどじゃない。その強さが、想いの強さを物語っている。
正面の、腰で縛った同じ白のバスローブから、鍛え上げている筋肉がのぞく。これも同じ、白くはなれないけれど、付き方が俺より黄色がかった肌の色、盛り上がった胸の筋肉から視線を逸らせた。

巨大な目が、俺の顔に近づいてくる。合わせたような、存在感のある鼻と唇、上手く整いながら愛嬌のあるのは、口が大きく横に開くのと、輝くようなその目からかもしれない、でもそれも今は何の手助けにもならない。自分より広い顔の面積も全部、どこをどう見ても男そのものだった。でも顔は、自分が身長に対して小さいと言う自覚はあった。それに見合った小作りなパーツも。
耳まで近づけられて囁かれる。



「やっぱり痩せましたね。薄い」



ドラマとプロモーション活動のために体を絞る前は、同じくらいだった、いや、俺の方があった筋肉の厚い腕が、腰に巻かれて、横に避けるよう両膝を立てて座り直した。
そのまま耳たぶに、ちゅっと音を立てた口づけがされてきつく目を閉じる。



「やめ……ろ」



苛々と声にした自分を嘲笑うように出された息がかかった。



「好き」



その言葉にますます目蓋に力を入れる。次にされることも分かっている。もっと近づいて来るのが分かる。
唇に柔らかく、あてられる。



「目、開けて?ヒョン」



口にチャンミンの息がかかる。俺は眉を寄せてぴくぴくと顔をしかめながら、ゆっくり目蓋を開いた。
橙色の暗い、ベッドサイドの照明で照らされた顔がすぐそこにある。大きな目が見開いて見て来る。



「好き」


また唇が重ねられる。

チャンミンは、可笑しくなった。これが始まった時に、俺が聞いても、「多分、ヒョンにはまだ分かりませんよ」と寂しげな笑みを浮かべられたまま。彼女を作れと何度言っても鼻で笑われる。
いつの間にか伸ばした俺の脚の間に入られて、更に密着して、口づけられる。目を閉じると、「開けて」と言われて、開かされる。
最初は力づくで抵抗したけれど、本気で傷ついた顔されて出来なくなった。
チャンミンは本当に俺を好きになっていた。
自分よりも大きな唇に覆われて、唇を舐められる。女じゃないのが分かる。



「口、開いて下さい」



近距離の眼差しから目を離すこともできずに、うんざりしながら、



「もうやめろ」



と呟いた口に、チャンミンの舌が入ってきた。両手で、後ろ頭を掴まれて、口内をいっぱいにその舌が暴れまわる。大きな口に飲み込まれそうになりながら、「んっ、んっ」と時々自分の喉から声が出て、苦しさと、痺れて来る感覚に、後ろに逃れようとする俺の頭を掴まえられる。舌が絡んだ何かの拍子に体が震えると、手が離れてより強く抱きしめられながらされた。



「はあ、はあ」



チャンミンのキスは回を重ねるごとに長くなる。やっと距離があいて、息を整える俺の前で、腰ひもを解く。 
この最終段階を見たくなくて、また顔を背けた。



「見て下さい」



「嫌なんだよ」



「お願い、ヒョン」



顔を歪めながら、渋々正面を向く。



「これは現実ですから」



必ず口にされる言葉だった。
開いたバスローブの下には下着が履かれていない。酒を飲んで、ベッドに上がる前、チャンミンだけが歯を磨きに行く時、脱がれるからだ。
白いタオル生地と両脚が更に開かれて、腰を突き出すように座られる。
割れた腹筋の下で、筋をつけて生えた黒い毛が、一気に濃くなった間から、硬度を持った俺にもあるものが、赤くたちあがっている。無音の部屋の中、己のその赤くくすんだ色をした先端に、チャンミンがごつりとした人差し指で、涙のように膨れ出た液体を触った。


糸を引いた。



「俺、すごいたってるね」



背を逸らした状態で、俺を熱っぽく見て呟いた。



「チャンミン、本当に……もうやめてくれよ」



泣き言みたいに響いた俺の言葉を無視して、その手が最初はゆっくりと、身長のせいか、そこも量感のあるもの掴んで、上下していく。
俯こうとした顎を、相手の片手が伸びて、止める。



「すぐいくからお願い」



近付かれて、その手を腰に回されて再び密着される。唇の横にキスされたり、唇にキスされたりしながら、手を動かす、チャンミンの切羽詰まった息遣いを感じる。 



「好きです。好き、ユノ」



促されるまま、呆然とそこを見る俺の顔を確認しながら、チャンミンの体に力が入って行く。
でもその手が止まった。
肩で息をしながら上気した顔で、俺を見つめる巨大な目に視線を移す。その吐息はまだ口元にかかっている。


「キスして下さい」



「できるわけないだろ」



「もういいじゃん」



チャンミンが俺の肩に顔を押し付けた。



「そっちだってすごい、たってんじゃん」



また俺はきつく目を閉じた。



「そっちの方が可笑しいよ」



繰り出される温かさを肩で受ける。目蓋を開きながら、俺とは違う撫で肩を掴んで引きはがす。
見開いた巨大な目を見つめて、



「全部脱げよ」



と呟いて、自分の着ていたのを肩から一気に脱いだ。
動かないチャンミンの顔を両手で掴んでキスをすると、やっと我に返ったように口づけながら、相手もばさりと白いのを脱いだ。



その音と一緒に、どこかで上がる。




真ん中の世界の産声。













『バースデイ』END






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