夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「黄色い桜」D.O チャニョル


擦られたような銀の中から届いてきたものが、取り換えられていた。知覚はしなかったけれど、身を任せている。音から音へ、なので容易い。けれど、それがどれだけ重大か。
メンバーで背の低いと言われる体で、ギョンスは心臓が、壊れそうなほど自覚している。
彼の白く柔らかい耳を覆うヘッドフォンから曲は、リピートされていた。その春の歌は重大だった。プロデューサーの力だけでのしあがったような、物言いをされる全米ヒットチャートでお馴染みの人の新曲。出だしがそうだ。
1秒の何分の1。
それを聞いて、複雑な気持ちを抱いた。曲も確かだったし、その入りが――真似できないかもしれない――不安は、当然と言う謙遜に変わり、それは別に良かった。他も、彼の一言で、また一つ加わる。
「あ、いいじゃん」
リビングのテレビから流れるプロモーションビデオに、丁度そこにいた同居している何人かのメンバーの中で、呟いた唇を頭上に眺めた。
力を入れているみたいに端が引っ込む口を見たら、切れ長の大きな目が見下ろして来た。宇宙人的な目だ。
何度も何度も。
初めはもう覚えていない。
それより前は、小説のようなものだったと思う。短い言葉にさえも。
「ダサいな」
意味合いとは逆の、輝いた響きを持って、それが何度も何度も。
エレベーターの前で、立ち止まっているギョンスは、ボタンも押せずに聞いて、白目の眩しい強い双眸で、見ていた。
あ、いいじゃん。と、見下ろして来た、同意。
メンバーの中で一番高い身長の男が、耳と目に、何度も何度も。
その存在に、どれだけ救われたか。
理解が欲しいと思ったことはないが、価値観と言うものをどれほど大切に思っていたかを知ることがある。きっと、それを体験できる人間は少ないと言うことも。
ギョンスは、知ってしまったと思った。
いなくなったら――。
立ちすくんだまま、ふと視線を下げた。
滅多に履かないストレッチパンツの色は、意外に好きだった。
それから昨晩、海外にいる先輩から来たメッセージの内容を思い出した。日本の桜が満開だと。ツアー中の先輩たちの一人からだった。
目の奥に拡がった満開の花をギョンスは眺めて、また想った。もし、己がマイノリティになってしまったとしても、それをクオリティの高さだと共感する人間。
自分が、きっとこんな色の桜も良いと言えば、あの人間だけはそれに賛同してくれるだろう。
そう思うと、何度味わったか思い出せないほどの絶望を抱いて、ギョンスはまた心臓を狂わせた。
「押せよ」
耳の奥の声と同じ声がして、顔の横を指が過ぎた。
ギョンスはそちらに向かずに、一緒に乗り込んで並んだ。
「何聞いてんの?」
言われて、音楽がなくなると同時に顔を上げた。あ、と声には出さなかったけれど、失敗したかもしれないと一瞬反省した。一瞬で済んだのは、それを耳にあてて無表情に見下ろす顔が、何も言わなかったからだった。
少しだけ温かくなったエレベーターの内部で、宇宙人が春の歌を聞きながら、自分を見ている。
――いなくなったらと、思うと。
切れ長の目が、足元に向いた。
「その色、良いな」
ギョンスの脳裏に、檸檬色の雲海が拡がった。
きっと、死にたくなる。










『黄色い桜』おわり







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