夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Rabbit's Adventures in Wonderland 2」ユノ×キュヒョン


俺の親友は、知る限り、近場でたった一人、向けられていたその好意に気付かなかった。
けど、仕方ないだろう。
相手は同性で、まさか二十年近く一緒に連れ添った仕事上の相方が、自分のことを好きだなんて思いもしないだろう。
でも、誰も気づかなかった。親友だけじゃない。きっと世界中で誰も気付かなかった。
俺以外は。
いつか言うだろうと思っていたし、言えないかもしれないとも思っていた、可能性は半々くらいと。
親友には会うが、パートナーのあの人には最近殆ど会わなかったから、分からなかった。が、式場で分かった。
何も知らない満面の笑みと、まるで今にも死にそうなその表情を見て。
言わなかったなと。
言えば良かったのに。
チャンミンは、潔癖な女好きだから、きっとその気持ちには応えられない。でもそれを突き付けられることで、あの人は次のステップに進めただろう。
だけど、その辛さは想像を絶するだろうから、俺が無責任に言うことじゃないし、結果的には言わなかった。
本当に、何でこんな一生知らなくてもいいことに気付かないといけないのか。
事務所の先輩だし、親友のパートナーだから、赤の他人ではないが、そんな男の恋路なんて正直俺には関係ない。
なのに、俺だけ。
式が始まって、久しぶりに見た人は、黒髪が少し長いなと思ったのと、老けたけれど相変わらず涼し気な、女が好きそうな顔立ちをしていると思ったのと、誰よりも悲しそうだと、思った。
俺はノーマルな趣味だから、その気持ちは分からない。
男が男を好きになるなんて。
あの人だって、俺が気付く前までは、女と付き合っていた。
だから、チャンミンなんか早く忘れて、また女と付き合えばいいのにと思ったのは、何年前だろうか。
その間、浮いた噂一つ出なかった。
つまり、乗り換えなかった。
容量の悪い人だと思った。
最も仲の良い、親友の結婚式だったのに、何よりも気にかかったのが、あの悲惨な表情だったなんて、自分もついていない。
まあ、彼はもっとついていないだろうが。
あれに気づいてからも、彼らと一緒に行動する機会があった俺は、諦めていながら尚、気持ちを消すことができない強い恋慕の表情を、視界に入れ続けなければならなかった。
良く周りの人間は気づかなかったと思う、あんなの。
とうとう親友の結婚が決まって、嬉しそうに報告してくる彼と対になって、あの顔を思い出した。
当日は、想像よりずっと酷い表情で、最中に一人抜け出した姿を見て、最悪のことを考えて思わず後を追いかけた。
でもそれは俺の考えすぎで、当の昔に、いや始まった瞬間から諦めたような表情は更に加速して、無我の境地とまではいかないが、どことなく現実にいないような、まるで花嫁のヴェールにでも神経を包んだような現実逃避を、この人は本当にここにいるのだろうかと思わせた。
その空気には、悲しみが滲んでいただけだ。
これからどうするのだろう。
そもそも、両刀なのか、もう男しか好きになれないのか。
俺がどうにかできるわけではないし、関係ないけれど。
窓の景色はいつの間にか、宿舎に近づいていた。
「キュヒョン」
助手席のマネージャーがフロントミラーでこっちを見ていた。
「はい」
「物思いにふけってるな」
俺は顔をしかめた。
可笑しそうにマネージャーが笑う。
「チャンミンが結婚したからって、結婚はまだ勘弁してくれよ」
「相手がいないです」
まだと言われるのか。
この年齢でアイドルをさせて貰えるのは有り難いことだが、足枷はいつまで続くのか。
「なんだ。珍しいな」
「最近ずっといないですよ」
「そうかそうか」
信じていないように笑われた。スキャンダルにはずっと気を使っていたから、できた時は事務所に伝えることもあったし、伝えないこともあったけれど、兎に角、俺はうまくやると思われていた。だからいない時もいると思われる傾向にあった。
確かに、ほぼいたよ。
でも今は本当にいない。あの人間に比べたらその期間も微々たるものだけど。
宿舎に到着する。
自分達のアイドルグループは、数人が結婚したが、元々長く宿舎で生活していた面々は独身だった。
一度、本気で結婚を考えた時は、俺も宿舎を出ることもしてみたが戻った。
そろそろ居残り組は、独り暮らしをまた考え出している。でも俺はやはりこの生活は好きで慣れていて、そう思うと結婚はまだ先で良い。
「また式だよ」
偶然一緒に夕飯を取っていた、こちらも出戻りのメンバー、ドンへが言った。
「そうなんだ。誰?」
「俺は二次会しか行かないけど。練習生だった今はもうサラリーマンのやつ」
「仲良いの?」
このチゲ美味いな。また同じとこで頼もう。
「今はあんまり。でも同年代の飲み会では良く来るし、当時は仲良かったからな」
「ふーん」
「ユノも来るよ」
思わず手を止めた。
悲しげな顔を思い出した。当分会わなくなるだろうと思っていたから、こんなにすぐ名前を聞くとは思わなかった。
「そう。楽しいといいね」
「楽しくない結婚式ってあるかよ」
笑いながら言われる。
俺たちにはないかもね、と心の中で返した。







つづく

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