夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Moon stories 1」チャンミン×ユノ


「疲れたなあ」



クレーターの淵に、白い毛で覆われた柔らかい尻をぺったりとつけて、ユノが溜息をついた。


「今日はもういいんじゃないですか?」


その隣に立って、チャンミンはこちらも白い毛で覆われた自分の肩をとんとんと自分で叩いた。


「いや、それはだめだよ」


「冗談ですよ」


本気に見せかけた冗談を言うとすぐ言った通りに捉えてしまうユノの癖にチャンミンは溜息を吐いた。こういう融通の利かないところはもうずっと一緒にいるけれど、未だに慣れないし、悲しくもなる。キュヒョンはこういうところがなくて良い。最近はお互い忙しくて会えないけれど、チャンミンは同じ種族である友人のことを思った。
ユノはそんなチャンミンの気持ちだけはすぐに読んで、気落ちした顔をした。自分が瞬時に理解できなかったのが悲しいらしい。
最近の彼は変わった。以前はそんなこと気にしなかったし、気付かなかったのに。


「ユノ、水飲みますか?」


気を利かせて、チャンミンは石で作ったお手製の水筒をユノに見せた。にこっと笑って頷いた相棒にチャンミンもほっとした表情を見せる。その隣に腰を掛けた。
目の前に拡がるクレーターを眺めながら水を飲んだ。


「まだ三箱もあるなあ」


今日のユノは本当に疲れてるな。チャンミンはぽっかりと空いた穴の底を眺めながら横から聞こえて来る声と台詞だけで思った。穴は浅いがとても大きい。


「今度は俺がつきますから」


「ううん、俺がつくから大丈夫」


いつもユノはつく方を選択して、最後に少し餅を掻き回す方に交代するぐらいで、労力をチャンミンよりも使っている。疲れるのは嫌だけれど、別にチャンミンはつく方も言われれば出来るのに、ユノは断るのだ。キュヒョンにこれを言うと羨ましがられる。キュヒョンは餅ではなく薬草をコンビで挽いているのだけれど、餅より力が必要なくても羨ましがられた。ダイナミックな動きはないが、その分細かな動きは要するので労力で言えば彼等と自分達に大差はないのだけれど。


「チャンミン」


チャンミンはユノの方を向いた。


「俺とコンビで楽しい?」


上体を前屈みにして穴の底を眺めている。ユノは何を気にしているのだろう。


「ユノ、何かあった?」


ユノが首を横に振った。長い耳が揺れる。
そう言えば、昨日も少しおかしかった。自分の方をあまり見なかったような気がする。
チャンミンはユノを眺めながら、ふと、薄いけれど長く大きな耳を触ってみた。
びっくりした顔で、赤い目を見開いてユノが向いた。そんな驚いた顔をされるとは思わずチャンミンは目を瞬かせる。ユノは驚いてしまったのを隠すように何でもない風にまた正面を向いた。


「何なんですか?ユノ」


顔をしかめながら、またその柔らかい耳を揺らすように触った。


「もう」


ユノが嫌がって耳を抑える。嫌がる様子が面白くて、白い毛で覆われた手だけでは隠れない部分をまた触った。


「もう」


ユノは腕も使って頭を抱え込むように隠したから、チャンミンは諦めてその顔を覗き込んだ。ユノは目だけでなく毛の間から覗く肌全体を赤くしている感じだった。
覗き込んだチャンミンとは目を合わせない。


「変だよ、ユノ」


「変じゃないよ」


「変でしょ」


口をつぐんでしまったから仕方なくチャンミンはまた水を飲んだ。頭を抑えてユノは俯いたままじっとしている。
そして呟いた。


「俺、変?」


チャンミンは片手で水を飲んで、地面の向こうに見える、黒い空に浮かぶ大きな青い球体を眺めながら「ええ」と応えた。
また少しの沈黙のあと、ユノが、


「気になるから」


と、ぽそっと呟いた。


「何が?」


聞くと、黙ってしまったから、もしかしてとチャンミンは隣を見た。


「なに?俺のこと意識してるんですか?」


ユノがますます頭を抱え込んだ。
いつかはそうなると考えてはいた。
同じ種族は自分達を含めなければもう2コンビしかいないし、彼等とはそんなに頻繁に会えないのだから。相棒は決まった時から、色んな意味でも相棒になると言う話は違う種族からも聞いてきた。けれどユノは何にでも疎くて、チャンミンは別にそういうことがなければないでも構わなかった。でもとうとう時期が来たらしい。悠長に構えていた分、チャンミンも少なからず動揺した。
自分もユノから顔をそらせて前を向いて言葉を失った。そこから伸びをしてみたり、水に口付けてみたりして、恐る恐る隣を見るとお互いに同じタイミングで見合わせてしまって、また前を向いたりした。
困ったなと背後に置かれている臼と杵を気にしながらチャンミンは思った。餅つきは息が合わないと面倒なのだ。ユノも自分もかなりの熟練度に達しているとはいえ、これは未知の、不測の事態だった。
けれどどうせ乗り越えなければいけない山なのだから。チャンミンも高鳴る胸を自覚しつつ、向こうに浮かぶ巨大な青い球体を眺めて、自分に納得させるように頷いた。



チャンミンの長い耳も揺れた。











To be continued.


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全て繋がった一つの話です。全三話。

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