「DOKI☆DOKI☆らぶ♡9~雨の中のブロークンハート~」シウォン ユノ チャンミン キュヒョン ミノ ヒチョル
~~~~前回までのあらすじ~~~~
男子校に通っているシウォンはなんと女の子!文化祭で「桃太郎」を公演することになったシウォンのクラス!☆ユノ先生が好きなこと、おばあさん役の「殺しのバンビ」にバレちゃった!?☆桃太郎役で友人のミノも番長と戦う宣言っ!おじいさん役で学級委員のライバル、キュヒョンも交えたシウォンのDOKI☆DOKI☆学園生活はどうなるのっ!?☆
あれから、シム・チャンミンは全然、俺に話しかけて来ない。
それにこの一週間、練習に出たのは、始まった日に一度ダケっ!
学校には毎日来るし、遅刻もない。
何となく俺だけ避けられている様な気がする……あの日から。
だから毎日、渡しそびれてる。
もう勝手に机の中入れちゃった方がいいのカナ……これ。
「シウォン、おい」
「え?」
ミノが口角を上げたまま眉をひそめる。
「お前また考え事か?」
キュヒョンも俺の事をちらっと見た。
教室で昼休み。
アイツは今日も授業中早弁して、どっかで寝ているみたいで、ここにはいない。
「キュヒョン、お前の弁当美味そうだな」
ミノがキュヒョンのお弁当を覗き込む。
キュヒョンはまだ俺たちと食べるのに慣れないみたいで、困ったように視線を泳がせた。
俺は今日は購買のメロンパン。
「あ、あれ」
クラス中がざわざわして窓の外を見出した。
「なんだ?」
ミノが立ち上がって、俺とキュヒョンもつられて、窓際に向かった。
「あっ、またっ!」
俺たちは目を丸くする。
今度は、十人じゃない。二十人近くいる!
それから、立ち向かう……アイツ!!
自分達は顔を見合わせて、校庭へ向かった!
「よおよお、この前はやってくれたなあ」
下駄箱から出ると、リーダーっぽいモヒカンのヤツが、一歩前へ出たところだった。
後ろ髪をワサワサかきながら、アイツがその前に歩いて行く。
「懲りねえヤツだな。しつこい男は嫌われるぜ」
「お前に会いたくて来てやったんだ、有り難く思えよ!」
へっと笑ってアイツが言う。
「気持ちわりいんだよ」
「しるかっ!!今日こそボコボコにしてやるよっ!!おいっやっちまえ!!」
その掛け声にシム・チャンミンがだるそうに首を回した。
「だっ、ダメっ!!!」
思わず声が出ちゃう!けど全く誰も聞いていない!
「大人しく見てろよ。可愛い子ちゃん」
俺とミノとキュヒョンが後ろを振り返る。
校舎に入る階段の横で、腰くらいの高さの塀に両肘をついて、もたれている奴がいた。
そんな……あんな人数に、勝てるの?
「あれに勝てなきゃ俺には無理だ」
にやりと笑って眺めてる。
この前は、一瞬だった。
でも今回は明らかに手こずってるのが分かる。
当たり前だよ!20人だモンっ!
何発も打撃を与えられて、切れた口元から血が出てるし、くらっとしてるのも分かる。
倒れそうっ!
「も、もうダメっ!やめさせなきゃっ!」
「お、おい!シウォン!!」
ミノとキュヒョンがぎょっとしたのも構わずに、走る。
「だっ、ダメっ!!ヤメロっ!!!」
目を丸くしたシム・チャンミンが俺に振り返る。
その瞬間っ☆☆
アイツの後ろから攻撃してきたモヒカン男を、後ろ蹴りをくらわせて、シム・チャンミンが倒した。
「あ……」
最後の一人だった。
俺はその場に立ち尽くした。
土埃だらけの学ランでシム・チャンミンが気まずそうに視線を泳がせる。
「あ、これ……」
アイツのハンカチと絆創膏を出そうとした俺の横を通り過ぎる。
「余計なことすんな」
そう呟いて、口元の血を拭いながら、校舎に向かって行った。
俺はちょっと走って追いかけたけど、来るなってその背中が言っているような気がして、追いつく前に立ち止まる。
「おい、シウォン!びっくりさせるなよ!」
ミノと、キュヒョンが俺のそばに来る。
「あ……ごめん」
何となく、俺は稲妻シンデレラを見た。
俺と目が合うとにっこり笑った。
「いいね、可愛い子ちゃん。気に入った」
俺は眉を寄せる。
「だから、いいこと教えてやるよ」
もたれていた塀から体を起こして稲妻シンデレラがまた俺を見る。
「殺しのバンビは俺には勝てない」
目を見開いた俺に、投げキッスを送って、校舎に向かう。
その時っ☆☆
「大丈夫ですよ。先輩」
俺は声を出した隣のミノを、目を見開いたまま見る。
足を止めて番長がこちらを見た。
「俺が頑張ります」
にこっと笑って、ミノが言った。
小さく鼻で笑って、番長は何も言わず校舎の中に入って行く。
俺とキュヒョンは唖然と二人を眺めていた。
「お、おい!ミノっ!」
俺はミノに詰め寄る。
「もうやめろってっ!あの人多分本当に強いんだヨっ!」
「そうです!あんな喧嘩、誰の得にもならない」
キュヒョンも眼鏡を触りながら言った。
「ま、なんとかなるよ。さ、飯食おうぜっ」
ミノが煙に巻くように俺たちに笑うから、俺とキュヒョンは顔を見合わせながらも、何も言えずに一緒に校舎に入った。
きーんこーんかーんこーんきーんこーんかーんこーん
「おい……シム・チャンミン。なんだその顔」
アイツは埃まみれの学ランを脱いでカッターシャツで、殆どまともに授業を受けずに机に突っ伏したまま、教室にいた。
絆創膏……机に置いたけど。
貼らないまま、ポケットにしまわれた。
俺は心配でちらちらと見ていた。
「元からこういう顔なんだよ」
放課後、教室に来たユノ先生が、伏せた体を起き上がらせたアイツを見て、驚いてこっちに来た。
「なんで保健室行かなかったんだ」
「終わったから帰る」
椅子から立って、鞄を持って出て行く。
「おい、体調はどうなんだ?」
「超元気」
呟いたシム・チャンミンが行ってしまって、今日も恰好がアレだけど素敵なユノ先生が、眉間に皺を寄せた。
「シウォン、お前が一番仲良いだろ?相手知ってるか?」
俺が……一番仲良く見えたんだ……
でもそうだよね。アイツ殆ど誰とも喋ってなかったモン。
「多分、前の学校の人、です」
「そうか。あいつの前の学校、タチ悪いのがいるんだよ」
ユノ先生が、深刻そうに顎をさすりながら、小さく溜息を吐いた。
アイツ……大丈夫かな……
やっぱり、このハンカチ、早く返したいヨ。
シム・チャンミンに……会って、渡したい。
俺はガタンと、椅子から立ち上がった。
「シウォン?」
ユノ先生と、目を瞬かせたミノを置いて、俺は走り出した。
「おいっ!どこ行くんだよ!シウォン!」
ミノの声がしたけど、俺は走った。
下駄箱に靴がない。
でもそんなに離れていないはずっ!
「っもう、足早いヨっ!!」
夕焼けの校庭にも、もういない。
ドコ?アイツの家はどっちなのっ?
そうだ!
あそこは通るはず!
走っていたら、さっきまで晴れていたのに、なぜか雨が降り出したっ!!
ナンデ雨が降り出しちゃうのっ!天気予報も晴れだったジャンっ!
降水確率は無視されているのっ?
ああん、学ランがびちょびちょっ!
その時っ☆☆
あの俺たちがぶつかった角で!背中を向けて立っている、シム・チャンミンがいた。
雨に濡れながら、何かを片手で持って見ている。
「お前も一人か?俺も一人だぜ」
抱き上げられて、にゃあと鳴いた子猫に、微笑んで話しかけている。
そんなっ……猫の繁殖時期は今じゃないのに!
ああんっ、そうじゃなくてっ!
「シム・チャンミンっ!」
大きな目を更に大きくして、髪までびしょ濡れのアイツが、同じくびしょ濡れの俺に振り返る。
「ウソだろ……」
「さっ、探したんだカラっ!!」
俺は肩で息をしながら、その正面に立った。雨が俺たちに降り注ぐ。
「なんで、お前……」
「こ、子猫、温めてあげないと……」
はあはあ、と息をしながら俺は言う。
「うち、近いから……」
☆つづく☆