「眠れない夜のエンジェル9」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、カリフォルニア州はロサンゼルスで、子孫であるチャンミンのナビを務めてはいるものの、なかなかミッションがインポッシブルなのです!ちなみに後部座席では、二人の男が苦しんでいるところなのです!
「ご先祖様!あとどのくらいですか!」
「距離は大体最初の位置から変わってませんよ!!」
「そんなはずないっ!」
どうやら遠回りがきいています。
チャンミンがバックミラーで後ろの二人を見ました。
「ご先祖様、ちょっと後ろの人達に水をあげてもらえませんか?脱水症状にならないようにしないと」
「分かりました」
僕は後部座席へ移動します。
二人の席の横にペットボトルが一本ずつ置いてあります。
「どうぞ。飲んで下さい」
口開けてウトウトしている人を起こします。
「ありがと……チャンミン……」
「もっと、飲んで下さい」
「ちゃ、チャンミン……羽が……羽があたる……」
厚手のセーターを着たユノ氏に飲ませてから、隣の席のマネージャーさんにも飲ませて戻ります。
「飲ませました……って、え?ここどこ?」
僕が助手席に戻ると、なぜかナビの地図と逆方向を走っています。
「俺にも分かりません!」
チャンミンがハンドルを掴んでイライラしています。
「チャンミン!分かりました!変わりましょう!!」
僕はもう見てられません。このままでは犠牲者が出るか警察の御用になってしまいます!
「え、運転できるんですか!ご先祖様」
バックミラー越しに目を丸くしたチャンミンに頷きます。
「マニュアルでもできますから」
僕とチャンミンは運転を交代しました。
「チャンミン、後ろの二人に付き添ってあげて下さい。僕は大丈夫ですから」
「はい!」
もう一度ナビを見ます。電波障害が起きて見れない場所があったようです。
正規のルートとは外れますが、念には念を入れて大丈夫そうな道からめざします。
順調に目的地に向かっています。
「……チャンミン……?チャンミン?」
「はい。チャンミンですよ」
ユノ氏とチャンミンの声が後ろからします。
バックミラーで見ると、チャンミンが優しい顔で苦しそうなユノ氏を見ています。
「チャンミン……がいる」
「ええ、います」
「……じゃあ……誰が……運転してるの……?」
「……」
チャンミンが微笑んでいます。
「……チャンミンが、運転していますよ」
優しく言ったチャンミンに、ユノ氏はちょっと納得いかない顔で唸っています。
病院が見えてきました!
「チャンミン!病院です!!」
チャンミンが助手席に来ました。
「本当ですね!」
ほっとした顔のチャンミンとバックミラー越しに頷きます。
そろそろ外が白んできました。
病院に到着です!
「俺行って来ます!ご先祖様ちょっと二人をお願いします!」
チャンミンが走ります。すぐに救急隊員と一緒に戻ってきました。
二人が担架に乗せられて行きます。
「ご先祖様、ありがとうございます」
車をおりた僕に、涙ぐんだチャンミンがそっとハグをしました。
チャンミンに車のキーを渡します。
「では、チャンミン。また眠れない時は呼んで下さい」
「はい、ご先祖様」
「グッバイ!」
「グッバイ!」
もう夜は終わりです。
真黒だった空がコバルトブルーに変わって行きます。
あと少しすれば、ここカリフォルニアに、きらめく朝日が昇るに違いありません。
天使チャンミンは、白い羽をぱさぱさと動かすと、夜空に飛び立ちました。
子孫チャンミンと、呆然として足を止めた救急隊員がその後ろ姿を見送ります。
そしてこの二人のチャンミンは、近いうちに再び会うことを、
まだ知らないのです。
つづく
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管理人が寝てしまい、更新が遅れて申し訳ありませんでした。