「チャンミンくんの恋人30」ユノ×チャンミン
また朝が来て、見上げながら「なるほど」と思った。
チューリップの下に立っていた王子が、俺が起きたのを覗き込んで確認すると、
ガラスコップに手をついてちょっとすましたポーズをとった。
「掃除しようと思うんだよ」
朝食中にマネージャーが言った。
それは俺も思っていた。
ユノがこうなってからはこの家には自分達以外誰も入れていなくて、
部屋の埃も気になっていた。
「俺もします」
言いながら、肉団子ばかり取ろうとする王子から皿を離す。
「ユノ、洗濯物くれ」
ドアを開け放して部屋の掃除をしているとマネージャーが入って来た。
デスクの上で自分の部屋に敷いている布類を剥がしていたユノが、一室に重ねてあった自分の服から着たものをマネージャーに渡していく。
「これ縮みませんかね」
デスクの前でマネージャーからユノの服を借りて見ながら言う。
「大丈夫そうなのはパジャマだけか」
「それ元から小さいです」
王子が言った。
「この制服のシャツは大丈夫そうですよ」
「まあ、縮んだらまた買えばいい」
「すいません」
「いやいや、それよりこれ着ないのか?」
マネージャーが着ていない服の一着をとった。
俺とユノがそれを眺める。
「それは、着ないです」
見上げながらユノが言った。
「そうか。じゃあまあこれだけ洗おう」
マネージャーが出て行った。
ナースを拒否した王子と一緒に掃除を済ませて昼食をとる。
「もっと辛くしていいですか?」
「食えなくなるからやめてくれ」
「俺も飲みたい、チャンミン」
昼から鍋をして、真ん中にいるのが危ないから俺の手元で食べるユノが俺の飲んでいたグラスのビールを見上げて来る。
テーブルから下げて、少し傾けてグラスをユノに向けた。
「飲める?」
髭と顔半分を泡まみれにして、ユノが「飲めなかった」と言って俺とマネージャーを笑わせた。
ユノの水泳を眺めながら、好きな漫画の話になった。
調べてみるともう新刊が出ていて、マネージャーにまた事務所に行くついでに買って来てもらう。
「日本語忘れたかな?」
「大丈夫でしょ」
夕飯前に、自分の部屋でベッドの頭に背を凭れながら、漫画を開く。
俺の腹の上で、開かれるページを、頭の被り物はしていない忍者姿のユノが足を伸ばしてワクワクした顔で座って見る。興奮すると立ち上がって俺を見上げるから、顔を見合わせて、ページを引き続きめくった。
半分ほど読んだ辺りで、
「やっぱり縮んだー」
と、廊下からマネージャーの声が聞こえて来て、また立ち上がったユノと顔を見合わせた。
つづく