「チャンミンくんの恋人32」ユノ×チャンミン
冷やすものを冷蔵庫に入れ直して、コックが机の上をうろうろする朝食をとり終わる。
マネージャーの携帯電話をテーブルに置いて見ながら、みんなで作り方を確認した。
「ハンドミキサーありましたっけ?」
「書いてあるのは全部買っといたよ」
「朝早くからありがとうございます」
こちらを見上げたユノを見下ろして、マネージャーが笑った。
「ケーキ作りなんて殆ど手伝えないからな」
「俺も殆ど手伝えないです」
殆ど手伝えない二人と共に制作を開始した。
ユノ以外エプロンをして、俺もTシャツの上からした。
ボウルに目の細かいざるで粉を振るおうとする二人を見ながら、テーブルの上でバターと牛乳を湯煎にかける。
「こんなことしたことないよ」
マネージャーが皿に移した小麦粉をボウルの上のざるに入れると、見上げていたユノがくしゃみをした。
「ユノ、こっち」
粉を払いながら咳をしてやってくる。鼻で笑って帽子に息をふきかけると、またその小さな頭にのせた。
「これ少し混ぜといてください」
ユノ用の椅子を持って来てスプーンを渡す。
「すごいな。そんなになるのか」
ハンドミキサーで卵と砂糖を混ぜていると、マネージャーが隣に来た。ユノは手で耳を抑えながら椅子に上がって眺めている。ボウルの中は真っ白なきめ細かい泡の塊になった。
「その中飛び込んでみたい」
手を下ろしたユノがこっちを見ながら呟いた。
「ケーキが汚くなるからやめて下さい」
小麦粉もバターも牛乳も全てさっくり混ぜ合わせて型に入れる。
「これで終わりか。結構すぐ出来るんだな」
「三人いますから」
型を覗き込んでいたユノが、そう言った俺を見上げて嬉しそうに笑ったから、俺もにやりと笑いかけた。
「ゲームでもしますか」
「25分しかないぞ」
レシピの画面を見ながらマネージャーに言われる。
「冷まさないといけないんで」
「じゃあ、飲みながら付き合うか」
三人でほろ酔い気分でゲームをする中、スポンジケーキが焼き上がって、目を輝かせたユノと、同じくらい期待した顔のマネージャーの前に型のまま出す。
「売ってるのみたいじゃないか」
「いい匂い!食べたい」
「このまま冷ましましょう」
想像以上にうまく出来ていたのを冷ます。
昼食は出前の寿司で、俺がユノ用に作り直したのが皿にあるにも関わらず、ローテーブルの上で寿司桶を覗き込むコックに、「何が食べたいんですか」と聞くと、「トロ」と言ったから、醤油をつけたのを箸で摘まんで顔の前に持って行くと、首を延ばしてネタだけ一口食べて、満足したらしく自分のを食べだした。
結構大きな一口だな、と思いながら残りを食べた。
「チャンミンはどの果物乗せたいんだ」
「俺は色んなの乗せたいですよ」
「ユノは?」
「全部乗せたいです」
「買って来た甲斐があるなあ」
ケーキはとっくに冷めたけれど、食後の運動にユノの水泳もする。ダイニングテーブルはまだこれから使う調理器具など色々と置いてあるから、テレビの前のローテーブルでユノは泳いだ。
「チャンミン!回復剤使えよ!」
「うるさいな!泳いでろよ!」
「ユノ、テレビばっかり見るな」
つづく