夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「This is love comedy.4」ユノ×キュヒョン


はあ。疲れた。



チャンミンが出て行って、宿舎に一人になって、最近寂しいとか思ってたのに、今は有り難くて仕方がなかった。
大好きな風呂に浸かりながら、いったいこの世の中はどうなってしまったんだと考える。


玄関のブザーが鳴る。


はいはい。何だよ、マネージャー暗証番号忘れたのかよ。
慌てて、身体を拭いて、スウェットに着替える。まあもう上がるとこだったからいいけどさ。
ドアを開ける。



「ユノヒョン!」



ドアを閉める。
はあ、疲れすぎだよ。しっかりしろ俺、こんなんじゃ、この世界でやっていけないぞ。
こんなんで可笑しくなってちゃだめだろう。今日は寝るか。


バンバン!バンバン!


扉を叩く音と共にブザーが連打される。目を瞑る。


「ユノヒョン!ユノヒョン!」


扉の向こうから声も聞こえる。このマンションセキュリティーチェックしなきゃだめだ。
溜息をつきながら、扉を開けて、すぐ閉めようとしたら、出された足がはさまって閉まらない!


「ユノヒョン!俺ですよ!キュヒョンですよ!あなたの恋人ですよ!」


だからそこは俺の話聞けよ!


「キュヒョン」


「はい」


まず、ご飯を買ってきたのは礼を言うよ。でも家事担当の人間は来てくれるんだ。あと、マネージャーが最近は飯の用意をしてくれるんだけど。
いや、違うぞ、まず言うところを間違えている。


「どうやって入った?」


言っとくけど、このマンションはキュヒョンのマンション同様、指紋認証で入る使用になっている。
指紋登録しているか、非常用の鍵を持っている人間でないと入れない。


「さっき出口でマネージャーに入れてもらいました」


えー。そんなんありー。
ってかマネージャー何考えてんだよ。


「ユノ、チャンミンがいなくなって寂しそうにしていたお前には丁度いいよ。事情はキュヒョンから聞いた。たまにはこんなのもいいだろう」


「なに?それがマネージャーの伝言?」


「いえ、俺が今勝手に考えました。マネージャーはただ笑ってました。さあ、早く食べましょう」


目を瞑る。俺はこの試練をどう乗り越えていけばいいんだ。


キュヒョンは買って来た惣菜を机に並べだす。弁当箱に入っているのもあった。


「……それは、お前が作ったの?んなわけないよな」


「お母さんが作ってくれました」


「お前、男を好きになったとか言ったわけじゃないよな?」


「ユノヒョンと付き合うことになったって言っただけですよ?」


「うおおおおお」


「ユノヒョン、冷めますから、早く食べましょう」


いや、レンジがあるからそれは大丈夫なんだけど、俺が全然大丈夫じゃない!
清廉潔白に過ごしてきた俺の人生になぜか、とんでもないスキャンダルを巻き起こされてる!


そうか!まず言うところをまた間違ってたんだな!


「キュヒョン!」


「はい」


「俺達は付き合ってない」


「いえ、付き合ってます」


あれ?付き合ってたっけ?


「いやいや!付き合ってないから!ってだから話聞けよ!」


冷蔵庫を覗いていたキュヒョンが目を輝かせて俺を見る。


「これ!日本のプリンですか!」


「食っていいから、話を聞け」


「プリンだけは日本の方が美味しいですよね!あとはあ、ビールとカップ麺も結構」


それだと「だけ」じゃないだろ。


「じゃあ先にご飯食べましょう!」


はあ……。


「俺の好物ばかりです!」


蓋を開けて並べられた食べ物の前でキュヒョンが笑った。だろうな、お前はそうだろう。
俺も向かい側に座って、それを見る。


「……うまそうだな」


目の前で蓋を開いたパックの中身は確かにどれもとても美味しそうだった。
勿論皿に出すとか、そんな事こいつはしない。


「いっぱい食べて下さい!あと俺、野菜はそこまでなんで、野菜は全部食べて下さい!」


新しいな!野菜嫌いの彼氏に、健康にいいから野菜食べさせる彼女がいるけど、その押し付け方、ってか押し付けなんだけど、新しいね!
俺も野菜そんなになんだけどね!
でも食べ物に罪はないし、有り難くいただく。でもこれを一緒に食べたせいでカップル認定になったら洒落にならない、てかそれ怖い!
青ざめた俺をよそに、どこからか箸を持ってきたキュヒョンが食べ始める。


「食べないんですか?」


なら、俺の箸も持って来いよ。
腹の虫が鳴ったので仕方なく、俺も食べ始めた。自分で箸を持ってきて。



「……うまいよ」



キュヒョンがにこりと笑う。


「お母さんに伝えときます」


「それはいい」


確定されるからいい。


それから、なぜか俺達は、日本のドラマの話とかして、最後のシーンのあそこがいいとか、そんな話をして時間が過ぎた。


「本当は泊まりたいんですけど、ミュージカルの練習しなきゃいけないから」


玄関でキュヒョンが俯く。いや、むしろここに来ないで練習していいんだよ、ってか俺、
付き合ってない話するの忘れてたな!


「じゃあ、ユノヒョン。おやすみなさい」


「キュヒョン、あのさあ、俺達付き合ってないから……って出て行くの早いんだよ!」


閉められたドアに、溜息をつく。
まあ、次があるか。いや、次はなくていい。とにかく今日は疲れた。
明日だ明日。












つづく

「グラウンドゼロレクイエム2」ユノ×チャンミン EXO

11月6日
A.M.0:25



『震源地 東京湾 震度5弱 北緯35.2度 東経139.7度 マグニチュード5.2』



同じテロップが繰り返し流されている。
日本語は習っているし、漢字は学校でも習っていた。
でも逸る気持ちのせいで、そのテロップでは数字しか目に入っていない。
スホは穴があくほど画面を見つめていた。
他のメンバー達は、地震の起きた直後は騒いだものの、マネージャーになだめられ、
もう慣れているのか動じていない周辺の日本人の対応に、落ち着きを取り戻し、
眠りについたようだった。


携帯電話を見る。
交信の途絶えたメンバー達のそれとは別に、
何度も開いたメッセージをもう一度読み返してから、
そっと胸に手を置いた。
仲が良いとは言え大先輩からの、
この国をとても良く知っている先輩からの、助言だ。
寝よう。
疲労が溜まっている体が常になっている。
スホはテレビを切って、腰掛けていたベッドの中に潜り込んだ。
大体がツインルームで眠っている中、自分だけがシングルで一人だった。
でも、今日はそれで良かったと思った。
どんな心細さも不安も、誰にも見せずに出すことが出来た。
アジアを股にかけている自分達だけれど、
今回が日本初デビューだ。


リハーサルは問題なかった。


明日のチケットは完売している。
そして、東京ドームは三日間で終わる。


早く寝なくては。
明日はこの助言をくれた大先輩も自分達を見に来るのだ。



このデビューが、


このドームツアーが、


無事に全て終わるといい。



そう思いながら、今も揺れている地上に、スホはまだ眠るのは難しいと、溜息をもらした。










11月6日
P.M.16:15



時刻通りに成田に着いたものの、ユメコは滅茶苦茶に苛立っていた。
スーツケースを引きながら、久しぶりの日本に感慨を覚える間もなく、
空港地下の鉄道改札口で特急の時刻表を見る。


全く間に合わない。


本当は昨日到着予定だったのが、仕事が押して急遽チケットを買い直したのだった。
安堵したのも束の間、ここに来るまですっかり忘れていた。
成田からドームまで移動しないといけないのだ。
その所要時間は、最短距離で二時間弱。


18時開演に間に合わない。


けれど、彼女は自己嫌悪にも陥らないくらい図太い神経をしていた。
自分以外の何もかもが悪いと周りにあたっているのだ。
でもユメコの苛立ちはそこから来ているだけではない。
これだけ奔走するにも関わらず、


「レイ」が来ない。


これから行く、久しぶりの帰国の目的であるはずのアイドルグループのライブに、
お目当ての「彼」が来ない。
グループの唯一の中国人である彼は、このツアーは欠席、
ツアー中、自国で活動することを、ユメコはついさっき知ったのだった。
いつもなら彼の動向は欠かさずチェックしていた。
それがここ一週間、あまりにも忙しくて、全く追いかけていなかった。
それもこれも全てユメコの自業自得といえるかもしれない。
なのに、彼女はさっきから周りにも聞こえる声で愚痴をこぼしている。


それにこの寒さ、7時間前にいたクアラルンプールと打って変わって、こちらはもう冬が近づいている。
なのに、彼女はノースリーブのワンピースにエアコンよけの薄手の上着一着しか着てこなかった。
明日トンボ返りするためにスーツケースの中はもう一着のワンピースとTシャツにハーフパンツだけだ。
でも彼女はやはり自分以外の全てが悪いと苛立つのだ。



「もう、むかつく!!」



またこぼされた愚痴が駅のホームにこだました。


彼女の怒りは増すばかりだった。









11月6日
P.M.16:15



「みなさん素敵、可愛い、愛してる」


ソファーに腰掛けて、首を振りつつ呟くベッキョンを横目に、カイは立って、手を動かしていた。
その日本語は覚える為に呟かれているのではない。
まるで歌っているように、面白そうに口ずさんでいるのだ。
カイも何フレーズかは覚えたけれど、長い文章を唯一話すことの出来るこの彼に、
その役は任せた。
とは思うものの、
やはり気になっている。
もう確認しなくても覚えているダンスの振付が、体に自然に出ているのに任せながら、
あとでもう一度、大まかに作成された台本に自分で書き加えた日本語を読もうと思っていると、後ろから声をかけられた。


「カイ、汗かくほど今やらなくてもいいだろ」


リーダーだった。
別に怒られたわけではない。
苦笑されながら言われたのには、仕方ないな、と言う諦めと、少しの心配が混ざっていた。
でも大して動いたわけではない。


「ちょっと暖房きついよな」


ベッキョンの隣で、台本を見る長兄のシウミンがこちらに向かって言っている。


「喉乾いた」


ベッキョンも口を開けて舌を出しながら片手で、口元を仰いだ。


「ほら」


と、声がした。
ちょうど、軽食や飲料が置かれている隅のテーブルの前に立っていたチェンからベッキョンへ、ミネラルウォーターのペットボトルが投げられたのだ。


首を左右に振って、投げられた彼は、仲の良いチェンに「ありがとう」の意思表示をする。
その姿は尻尾を振る小型犬のようだった。


蓋が開かれ、もともと会話を得意とする話術の長けた彼の喉に、入っていく。


なんとなく眺めていたメンバーは、自分も自分も、と机の前のチェンにおねだりをし始めた。
八の字眉にして、チェンは500mlのペットボトルを投げていく。
その彼の元に、一番末っ子のセフンが、2リットルのペットボトルに入った飲み物の方を、飲みたいと言ったメンバーの為に、紙コップでそれを分けに来た。


昨日、地震があった。


この部屋にいる全員があんなに大きな揺れを体験したことはなかった。
驚いた自分達を他所に、この国の人達は冷静だった。
それに信じられない気持ちになりながらも、彼らに習うように、いつの間にか平静は取り戻され、今はいつもと変わらないメンバー達の光景がある。


カイはそれを眺めながら、自分にも渡されたミネラルウォーターで、


先程出て行った水分を補給していた。










11月6日
P.M.13:15



チエコは携帯電話を眺めていた。
画面の時計を見ると、あと五時間だった。
チャンミンに会うまで。
そして、その手元の横には、白い鉢に、まだ食べきれないラーメンが置かれていた。
でもチエコは食べきるつもりだった。
彼女は特に小食と言うわけではない。
これはとても辛いのだ。
いつもそれに苦戦をしてしまう。
でもチエコは東京に来ると大抵はこの店にやってくる。
そして、チャンミンが好きなこのラーメンを、頼んでみるのだ。
プラスチックのコップを見ると、もう水はない。


「はあ……」


この溜息はセルフサービスの水を取るのが面倒くさいと言うものではなかった。
彼女が、携帯電話を眺めていたのは、お気に入りのアイドルと会うまでの時間を計るためではなかった。


付き合っている恋人から、連絡がないからだった。


予感が的中したように、昨晩地震があった。
確かに何も問題はなかった。
とても慌てたけれど、恋人には連絡はしなかった。
相手は仕事が忙しすぎるのだ。
過去に一度浮気かと思って押しかけたことがあった。
けれどそこでは、一心不乱に家に持って帰った仕事をこなしている、彼の姿があった。
チエコは休みも多く、好きなアイドルのライブに行くのは、毎回だ。
そんなお互いを全て受け入れた上で二人の交際は続いてきている。
チエコは何となく忙しい恋人に罪悪感を持つこともある。
でも受け入れてくれているのなら、自分の趣味でもあるものを放棄する必要はないと思っている。
それにその寂しさが、また彼女をチャンミンに向けさせているのもあった。


手に持っていた携帯電話を横にずらした。
で、考えて何かが変わることはない。


気を取り直すように、チエコはカウンターに置かれたピッチャーの水を取った。



とにかく、今はこのラーメンを食べきる。



チエコはまるでそれが使命であるかのように、また麺を口に含んだ。








つづく







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昨晩寝ぼけて書いて設定間違えました。ついでに日付やらなんやら変えまくっております。

「夜光虫2」ユノ×チャンミン

声を出す間もなく、俺より先に反応した隣が、手を伸ばして従った。



「ありがと、高野」



言いながら、「いえ」と答えた彼も見ず、正面の直方体から離れて、窓際の水道に向かう。洗った手が、部屋の大半を占める大きなテーブルの上に雑然と置かれたタオルで拭かれた。
反射神経が鈍くなっている自分が発した「すいません」と言う呟きと同時に、長い指にまとわりついた布が同じ位置に投げられる。
見たことのない実験器具を後ろにして、手をついてその背後の台にもたれかかる。



「で?」



酸素注入のそれと、全く違う、二つの音域の違う音。この空間にはそれしかない。
顎を少し上げて、無感情な目で怠慢に見くだされる。
夜間になって薄暗い室内でも直方体の中の照明がその顔を照らしている。色温度の高い光線に関わらず、その顔に当たると摂氏より低く見えた。
なにか恐ろしい夢のようだった。


「明後日からの白石島に彼も参加するんですよ」


「二年で?」


その返事に言葉をつまらせた眼鏡の彼の心境と同様に、自分も今一度目の前の人間を見直した。


「来年からここに来ることは決定みたいで、もう研究内容も決まってるんだよね?」


少し間があいた後、気を取り直すように言われて、急に自分に向けられた二組の目に、視線を彷徨わせる。「はい」と、一言を出して、前を向くと、表情のない顔が自分を見ていた。


心拍数が上昇していく。


見つめる先の口が、開いた。



「生体発光、その目的の構想」



ゆっくりと出された、その一切感情の籠らない声を聞いて、俺はやはりと小さく嘆息した。
誰かから聞いたわけではない、この人は自分が二歳下だと、元から知っている。
自分の書いた論文の題名を、その口から聞くとは思わずに、俺は顔が熱くなるのを感じた。


肩を揉むように、首に長い指が充てられて、



「ノクチルカにするとはな」



と、面倒くさげにその冷たい目をそらされながら、誰に言うでもない、独り言のように呟かれて鼻で笑われた。


それから、「じゃあ……」と、怠慢に首を左右に動かしてから、この先にもきっと俺を今みたく、小気味に挑発することが予測できる物言いで始められる。



「原生動物が意志を持ったことになる」



その通りに、口の端に笑みを浮かべて、はっきりと俺に向けられた言葉で、自分がこの人に何かしたのだろうか、と思わされた。
唾を飲み込んで、なぜか震えそうになった声をなだめるように、声を出す。



「……意志と言うより、それが進化だと思うので」



「生物の進化は適応だろ?シム・チャンミン」



瞬時に返された口調から、これは元の性質によって、逆らうことは出来ない常識を盾に相手に白旗を降らせるのが好きなわけではない、と再確認した。
これは明らかに俺だからだ。
その含み笑いは、微々すぎて見落としそうなぐらい度合の低い面白さを感じている。
俺の呼び名が、決定づけている。小馬鹿にしたい何かを自分に見出している。


そんなものに、自分は初対面で勝てる神経を持ち合わせていない。


でも、それは察知されたように助け舟が出された。



「あの……とりあえず、そういうことで。他の人間には月曜の学会終わりの打ち上げで伝えてあります。残るは先輩だけだったので」



「そう」



口の端を上げたまま、三人の思惑を全て理解したように、自分から目が背かれた。



「先輩は……参加なんですよね?」



「まあ、殆ど俺が使うものだし。拒否したいけど」



そう言って腕を組んで、先程と同様に顎を少し上げて呟く。何となく体温がそこにはあって、俺の緊張は解けた。



「じゃあ、行こうか、シム君」



「あ、はい」



踵を返す前に、もう一度俺は彼の顔を伺い見た。




でも、もう彼の目は、こちらには向けられなかった。













続く