夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「グラウンドゼロレクイエム2」ユノ×チャンミン EXO

11月6日
A.M.0:25



『震源地 東京湾 震度5弱 北緯35.2度 東経139.7度 マグニチュード5.2』



同じテロップが繰り返し流されている。
日本語は習っているし、漢字は学校でも習っていた。
でも逸る気持ちのせいで、そのテロップでは数字しか目に入っていない。
スホは穴があくほど画面を見つめていた。
他のメンバー達は、地震の起きた直後は騒いだものの、マネージャーになだめられ、
もう慣れているのか動じていない周辺の日本人の対応に、落ち着きを取り戻し、
眠りについたようだった。


携帯電話を見る。
交信の途絶えたメンバー達のそれとは別に、
何度も開いたメッセージをもう一度読み返してから、
そっと胸に手を置いた。
仲が良いとは言え大先輩からの、
この国をとても良く知っている先輩からの、助言だ。
寝よう。
疲労が溜まっている体が常になっている。
スホはテレビを切って、腰掛けていたベッドの中に潜り込んだ。
大体がツインルームで眠っている中、自分だけがシングルで一人だった。
でも、今日はそれで良かったと思った。
どんな心細さも不安も、誰にも見せずに出すことが出来た。
アジアを股にかけている自分達だけれど、
今回が日本初デビューだ。


リハーサルは問題なかった。


明日のチケットは完売している。
そして、東京ドームは三日間で終わる。


早く寝なくては。
明日はこの助言をくれた大先輩も自分達を見に来るのだ。



このデビューが、


このドームツアーが、


無事に全て終わるといい。



そう思いながら、今も揺れている地上に、スホはまだ眠るのは難しいと、溜息をもらした。










11月6日
P.M.16:15



時刻通りに成田に着いたものの、ユメコは滅茶苦茶に苛立っていた。
スーツケースを引きながら、久しぶりの日本に感慨を覚える間もなく、
空港地下の鉄道改札口で特急の時刻表を見る。


全く間に合わない。


本当は昨日到着予定だったのが、仕事が押して急遽チケットを買い直したのだった。
安堵したのも束の間、ここに来るまですっかり忘れていた。
成田からドームまで移動しないといけないのだ。
その所要時間は、最短距離で二時間弱。


18時開演に間に合わない。


けれど、彼女は自己嫌悪にも陥らないくらい図太い神経をしていた。
自分以外の何もかもが悪いと周りにあたっているのだ。
でもユメコの苛立ちはそこから来ているだけではない。
これだけ奔走するにも関わらず、


「レイ」が来ない。


これから行く、久しぶりの帰国の目的であるはずのアイドルグループのライブに、
お目当ての「彼」が来ない。
グループの唯一の中国人である彼は、このツアーは欠席、
ツアー中、自国で活動することを、ユメコはついさっき知ったのだった。
いつもなら彼の動向は欠かさずチェックしていた。
それがここ一週間、あまりにも忙しくて、全く追いかけていなかった。
それもこれも全てユメコの自業自得といえるかもしれない。
なのに、彼女はさっきから周りにも聞こえる声で愚痴をこぼしている。


それにこの寒さ、7時間前にいたクアラルンプールと打って変わって、こちらはもう冬が近づいている。
なのに、彼女はノースリーブのワンピースにエアコンよけの薄手の上着一着しか着てこなかった。
明日トンボ返りするためにスーツケースの中はもう一着のワンピースとTシャツにハーフパンツだけだ。
でも彼女はやはり自分以外の全てが悪いと苛立つのだ。



「もう、むかつく!!」



またこぼされた愚痴が駅のホームにこだました。


彼女の怒りは増すばかりだった。









11月6日
P.M.16:15



「みなさん素敵、可愛い、愛してる」


ソファーに腰掛けて、首を振りつつ呟くベッキョンを横目に、カイは立って、手を動かしていた。
その日本語は覚える為に呟かれているのではない。
まるで歌っているように、面白そうに口ずさんでいるのだ。
カイも何フレーズかは覚えたけれど、長い文章を唯一話すことの出来るこの彼に、
その役は任せた。
とは思うものの、
やはり気になっている。
もう確認しなくても覚えているダンスの振付が、体に自然に出ているのに任せながら、
あとでもう一度、大まかに作成された台本に自分で書き加えた日本語を読もうと思っていると、後ろから声をかけられた。


「カイ、汗かくほど今やらなくてもいいだろ」


リーダーだった。
別に怒られたわけではない。
苦笑されながら言われたのには、仕方ないな、と言う諦めと、少しの心配が混ざっていた。
でも大して動いたわけではない。


「ちょっと暖房きついよな」


ベッキョンの隣で、台本を見る長兄のシウミンがこちらに向かって言っている。


「喉乾いた」


ベッキョンも口を開けて舌を出しながら片手で、口元を仰いだ。


「ほら」


と、声がした。
ちょうど、軽食や飲料が置かれている隅のテーブルの前に立っていたチェンからベッキョンへ、ミネラルウォーターのペットボトルが投げられたのだ。


首を左右に振って、投げられた彼は、仲の良いチェンに「ありがとう」の意思表示をする。
その姿は尻尾を振る小型犬のようだった。


蓋が開かれ、もともと会話を得意とする話術の長けた彼の喉に、入っていく。


なんとなく眺めていたメンバーは、自分も自分も、と机の前のチェンにおねだりをし始めた。
八の字眉にして、チェンは500mlのペットボトルを投げていく。
その彼の元に、一番末っ子のセフンが、2リットルのペットボトルに入った飲み物の方を、飲みたいと言ったメンバーの為に、紙コップでそれを分けに来た。


昨日、地震があった。


この部屋にいる全員があんなに大きな揺れを体験したことはなかった。
驚いた自分達を他所に、この国の人達は冷静だった。
それに信じられない気持ちになりながらも、彼らに習うように、いつの間にか平静は取り戻され、今はいつもと変わらないメンバー達の光景がある。


カイはそれを眺めながら、自分にも渡されたミネラルウォーターで、


先程出て行った水分を補給していた。










11月6日
P.M.13:15



チエコは携帯電話を眺めていた。
画面の時計を見ると、あと五時間だった。
チャンミンに会うまで。
そして、その手元の横には、白い鉢に、まだ食べきれないラーメンが置かれていた。
でもチエコは食べきるつもりだった。
彼女は特に小食と言うわけではない。
これはとても辛いのだ。
いつもそれに苦戦をしてしまう。
でもチエコは東京に来ると大抵はこの店にやってくる。
そして、チャンミンが好きなこのラーメンを、頼んでみるのだ。
プラスチックのコップを見ると、もう水はない。


「はあ……」


この溜息はセルフサービスの水を取るのが面倒くさいと言うものではなかった。
彼女が、携帯電話を眺めていたのは、お気に入りのアイドルと会うまでの時間を計るためではなかった。


付き合っている恋人から、連絡がないからだった。


予感が的中したように、昨晩地震があった。
確かに何も問題はなかった。
とても慌てたけれど、恋人には連絡はしなかった。
相手は仕事が忙しすぎるのだ。
過去に一度浮気かと思って押しかけたことがあった。
けれどそこでは、一心不乱に家に持って帰った仕事をこなしている、彼の姿があった。
チエコは休みも多く、好きなアイドルのライブに行くのは、毎回だ。
そんなお互いを全て受け入れた上で二人の交際は続いてきている。
チエコは何となく忙しい恋人に罪悪感を持つこともある。
でも受け入れてくれているのなら、自分の趣味でもあるものを放棄する必要はないと思っている。
それにその寂しさが、また彼女をチャンミンに向けさせているのもあった。


手に持っていた携帯電話を横にずらした。
で、考えて何かが変わることはない。


気を取り直すように、チエコはカウンターに置かれたピッチャーの水を取った。



とにかく、今はこのラーメンを食べきる。



チエコはまるでそれが使命であるかのように、また麺を口に含んだ。








つづく







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昨晩寝ぼけて書いて設定間違えました。ついでに日付やらなんやら変えまくっております。

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