「チャンミンくんの恋人35」ユノ×チャンミン
「仕事始まるみたいです」
ユノは何も言わず、言った俺を眺めながら、段々とその目が意志を持ったしっかりしたものになって、眺めると言うより見つめた。
摘まんだ掌が、俺の指の腹を掴んだ。これから、これが自分達の手の繋ぎ方になるのかもしれないと思った。
見つめて、小さな顔がふわりと笑った。
「大丈夫かなあ」
そう言って、また俺に微笑みかけた。
この体で、やっぱりユノは、リーダーだ。
心もとなさは、生死に直結しているくらいなのに。
でも支えは勿論必要としていて、それは今のユノには、精神的にも、物理的にも、俺なんだ。
摘まむ指に力を込めた。折れない程度に。
「俺はもっと休んでも良かったんですけどね」
ユノが噴き出すように笑ってから見据えた。
「チャンミン」
俺が力を込めたのを分かっているという風に指を掴み返された。
「ありがと」
見つめ合った。その視線は俺の両眼を行き来することで、なされている。
この礼は色んなものを含み過ぎているのと、面と向かって言われた気恥ずかしさから、俺は視線をそらせて泳がせた。
そんな俺を見ながら、
「チャンミンがいるから大丈夫だな」
と納得したように頷いて、ユノは冗談ぽく言った。視線を泳がせたまま
「それ丸投げだから」
と俺は呟いた。
夕飯と共に詳しく話を聞いて、冷やしたケーキを食べる頃には、自分達はいつもの調子に戻っていた。
ケーキは、これを似た状態に作り直すのは難しいと言うことで、手にラップを巻いたコックに苺やラズベリーの「種のところは食べて」という難しい要求をされつつ、大きめに切った一つを、一緒に食べた。
齧った果物ばかりになっていくそれを、同じものに手を伸ばした時は顔を見合わせて、クリームまみれでケーキの一部みたいになったユノと競い合うように食べていると、どっちが沢山食べたのか分からない位だった。
でもおかわりをしても、想像より美味しかったケーキは、なくならなかった。
まだ九時過ぎで、一人で酒盛りを続けるマネージャーを残して、ユノと風呂に入る。
「チャンミン」
洗面器の中のユノと見つめ合っていた。
「あのさ、頼みがあるんだけど」
つづく