夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「密葬 6」ユノ×チャンミンの短編


「歩いてて、夜道で。横を走っていた車が歩道に乗り上げてきた」


スピードは落としてなかった。痛みは覚えてないけど、体から音がした。
ユノが呟いているのを聞きながら、夜が明けた。
その体からした音は、どんな音だったか、俺は聞かなかった。少しだけ眠っていた。でも目を開けたら、そのままの顔があって、嬉しかった。


「今日はずっとこうしてませんか」


朝の光が届いているベッドの上で言ったら、「チャンミンの日常を見たいよ」と、上手い言われ方をされて起きざるをえなくなった。俺に生活を変えさせない気遣いだった。
やっぱり大人になっている。この十年、自分の恋人を見て来た人間全員をねたんだ。
過去の恋愛なんかは聞きたくなかったけれど、今までどんな生活を営んでいたかは少し聞いて、俺だけが食べる朝食の間、口数少なく見つめ合っていた。まだ実感が伴っていない。それは色んなことにだった。けれど目の前にいる姿に見とれていた。ユノもそうで、自分達は好きなように相手の姿を目に収められることに夢中になっていた。


食べ終わって朝のシャワーをするのが怖くて、している間にいなくならないかと思って、それを言うと、「俺はもうチャンミンといることを決めてるし、そういう時が分かれば、なるべく伝えると思う」と落ち着いて言われて、だけど浴びながら、「そういう時」と「分かれば」と言う言葉を何度も再生して、手早く出て、ユノのいるリビングに向かった。ソファーに腰かけていた青いシャツの背中に小さく安堵を抱いた。髪も乾かさず、上半身裸で息を切らせて入って来た俺を、ユノはちょっと笑った。その足元に膝まづいて見上げる。


「ユノ。これからシャワーの時も一緒にいて。見られるの恥ずかしいけど、離れてる時が恐い」


ユノは腰かけたまま、見下ろした。
俺の上半身を眺めて、目をそらせた。


「こんな格好いいチャンミンの裸見れるんだ」


青白い顔が赤くなった気がした。俺はその隣に上がり込んだ。


「今も見れるよ」


履いていた長い綿のパンツを中の下着ごと下げた。ユノに興奮している。境遇が恥を鈍らせていた。でも、それよりも儚い恋人に早く何もかも見せたかったのかもしれない。実際ユノは凝視していた。それからその日はやっぱりずっとベッドで過ごした。


何も触ることが出来ない、自分自身もすり抜けて行く。恋人はその辛さを口に出さなかった。ただ、自分から言おうとしない相手の望むことを出来るだけ感じて、俺はその通りにした。


二日後、段ボールに入った食料品が届いた。


「チャンミン。外に出ないつもり?」


冷蔵庫に生鮮品を詰めている俺の後ろから、心配気な声をかけられた。


「今抱えてる仕事は雑誌の特集一本だけで、外でする打ち合わせは殆どないんです。出なくていいなら、わざわざこの暑い夏に外出する必要ないでしょ」


でもこんなことしたのは初めてだった。
振り返って、困惑顔のユノに微笑みかける。戸惑っている体に素早く歩み寄って、唇を重ねるくらい顔を寄せたら、何度もしているのに、はにかんで目を伏せられた。


「そんなに出たいなら、一緒に出てあげるけど」


俺が呟くと、ユノがふと笑う。
じゃあ出たいと言われたら、俺は焦るだろう。何が引き金になるか分からないから。だけどユノは言わない。


「どんなの買ったの?」


許すように俺を見た。信じているのかもしれない、立ち直れなくなるほど、自分の生活を壊してしまう人間ではないと。


「ユノはえっちですね」


「何でだよ」


声を出して笑うユノを置いて冷蔵庫に戻った。それを開ける。
クーラーの効いた夏の部屋に、また冷気が流れ出た。


「来て。全部見せるから」


苦笑したユノが、届いたばかりの野菜と果物と、全部を見た。


幽霊が、足がないなんて嘘だろう。


夜にしか現れないなんて言うのも。


朝、俺の後ろを歩いてユノがソファーに座る。自分達の幼少時に放映していたアニメが夏の間だけ再放送されていて、一緒に見たりした。


「これ、倒されるんだっけ?」


「俺、覚えてますけど言っていいの?」


隣同士に座って、テレビ番組以外にも映画や音楽映像を見て、お互いの趣味や思い出話に花を咲かせる。


「ユノの家で、一緒に映画見たでしょ。あれDVD化されてなくて、探しても見つからない」


「どっかで見れるよ」


「見つけたらまた一緒に見たいな」


「分かったから寝ろよ、チャンミン」


ベッドの中でもずっとその姿を確認する。でも夜明け前には、うとうととしてきてしまう。すると一日の終わりのキスがされて、俺の目蓋は閉じられる。少し眠って、でも目が覚めたらユノがいる。


「これ、倒されるんだっけ?」


「だからそれは俺が言ってもいいんですか?」


二人で笑いながら、数日が過ぎて、同じ日を繰り返しているみたいな日々でも、十分だった。


「チャンミン、これ、倒されるんだっけ?」


「だから俺が」


朝の陽気の中、また呆れたように隣を見る。でも俺はそのまま、笑みを消した。


ユノがこちらを見ていた。


俺の顔とは少しずれた位置を焦点にしている黒い瞳を見つめる。














つづく

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