ミノ子の憂鬱46 ユノ×ミノ
「ごめん、うちの社の人なのかな?」
分かってたけど、あなたの視力が私は心配!
それとも私だけ見えないようになってたの?それどういう構造?
聞きたいけど、そんなことできないわ。倒れそう。
私、ダメなのよ。高校の時も好きな男の子に、「あれ?同じクラスだっけ?」って聞かれた時も、「あ、うん」しか言えなかった。
三年間で会話はそれだけ。
でももう良い年してんだから、しっかりしなきゃダメ!
「……はい」
「そうなんだ。今日の飲み会のメンバー?」
今、私、ユノ課長と喋ってる。
これ多分私史に残るわ。会社入って一番の出来事よ。
「……はい」
「そう。二次会もう移動した?」
暗闇なのに、格好良いわ。
せめて今だけ、そこら辺のおじいさんとかにならないかしら。
話したいのに話せないのよ!
いえ、こんな暗い中でおじいさんになったら怖いわよ。
何で暗いところで老人を見ると怖いの?
ああ、もう何も分かんない!
「……はい」
「君帰るんだ?」
行きたい。
けど、行けないわよ。戻ったらあからさますぎるし。
それに、この人の前なんかで歌えない。
……。
ユノ課長、浜省好きかしら?
って、なに考えてんのよ!行かないって言って来たんでしょ。
「帰ります」
十分よ。
もう十分。良い思い出になったわ。
「じゃあ。失礼します」
色々聞きたいことはあるけど。さっきの電話とか。
でも、良い。思い残すことはありません。
平凡な女にもミラクルは起きたわね。
「ああ、駅まで送るよ。暗いから」
どこまでいっても格好良い人!
つづく
*画像は勝手にお借りしておりますもので、ご指定があればいつでも削除致します。画像今回に移動致しました。