こんなことをしている間にも客は来る。
「今、このコンビニ内で一番商品価値が低いのは俺らしい」
と続けてキュヒョンが言った。
「いや、いいキュヒョン。どっちにしろ雇われてない人間を店に立たせるなんてやっぱりできないよ」
「……大丈夫……ユノが……働く」
もうユノが自分のことをユノとしか言わなくなってしまった。
「……分かった。店長に電話する」
奥に置いた自分のリュックから、携帯電話を取り出す。
レジに戻りながら、店長の番号にかけた。
「だめだ。運転中だ」
聞こえるのは発信音だけだ。
キュヒョンが小さく溜息を吐く。
「奥さんの方は?」
「番号知らない」
「自宅は?」
「知らないし、もう出てるだろ」
「いや、分からないよ。どっか書いてないか?店長さんの名刺とかないのかよ」
ないよ、と言いながらレジ内を見回す。
そんなもの見当たらない。
「待て。ここになんか番号が書いてある」
キュヒョンが後ろのコルクボードに貼り付けられていたメモを見つけた。
キュヒョンが伺うように俺を見る。
確かにその番号はどこかで見たことがある。
キュヒョンに頷いて、俺は躊躇いながらも、その番号にかけた。
唾を飲み込む。
その瞬間、ユノの後ろに置かれてあった、店の電話が鳴った!
うなだれたままのユノがそれを取った。
「……もしもし?」
サラウンドでユノの声が聞こえた。
「……もしもし……?」
ユノはまだしゃべっていたけれど、
俺はゆっくり自分の携帯電話を切った。
只今17時42分(ユノの退役まで494日)